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第4部
イチャイチャしよう。はーい。
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アシェルナオは瘴気に満ちた森と対峙するように立っていた。
背後の人々は固唾を呑んで美しい少年の華奢な背中を見守る。
『ナオ、森と泉をたすけて』
『ナオの歌できれいにして』
『ナオ、みんな困ってる』
『ナオ、おねがい』
『おねがいー』
精霊たちが瘴気を恐れてアシェルナオのローブの合わせ目から顔を出しいた。
「うん、いいよ」
アシェルナオは小さく呟くと、大きく息を吸う。そして桜色の唇を開いた。
玉樹の森のあちこちで
春の息吹が
新しい芽を目覚めさせる
五百枝から伸びる葉は青く
光を浴びる
鳥たちは歌い風がそよぐ
草木の香りが心を満たす
豊かな森で
精霊たちが生れている
小さな花々が緑を飾り
鮮やかな命に包まれる森よ
かつての姿を取り戻せ
純粋に、聖域の森がかつての姿を取り戻すことだけを願って歌うアシェルナオの歌は、清らかで穢れのない美しさに満ちていた。
その歌声はのびやかで、声量以上に空気に乗って辺りを包む。
「なんと美しく清らかな歌声だ・・・」
アシェルナオの歌を初めて耳にしたシアンハウス騎士団の騎士たちはジエルヴェを初めとして感動に打ち震えた。
「精霊たちが戻ってきました」
アシェルナオの歌声が広がるのと同時に、周囲からキラキラした光が集まってくる様子がフォルシウスだけに見えていた。
『みんな、帰ってこれるよ』
『みんな、元気になれるよ』
『黒いモヤモヤ、逃げて行くよ』
今までアシェルナオのローブに隠れていた精霊たちがふわりと飛び出す。
精霊たちの言葉通り、黒い瘴気は吸い込まれるように森の奥に後退していった。
何度見てもアシェルナオの浄化に圧倒されるヴァレリラルドは、瘴気の後退を確認すると美しい歌人に歩み寄る。
「ナオ、お疲れ。瘴気は後退したよ」
「ナオ様、お変わりはないですか?」
テュコはアシェルナオの体調を気遣う言葉をかける。
「大丈夫。すぐに精霊の泉を浄化できるよ」
楽観しているアシェルナオは笑顔で言った。
「ナオ様。無理はだめです。今日一日で終わらないことも視野に、慎重にいきましょう」
「はぁい」
フォルシウスに諭されて、早く泉を浄化したいアシェルナオは不服そうな声音で返事をした。
「瘴気の撤退したところまで行き、そこでナオに再度浄化してもらう。それを繰り返して泉まで行くんだ。用心にこしたことはない」
ヴァレリラルドが説明すると、アシェルナオも納得して頷く。
「我らが安全を確認します。その後から少し距離を空けてついてきてください」
言いながらジエルヴェが馬に乗ると、続いてシアンハウス騎士団も騎乗した。
「殿下、私とファルクがシアンハウス騎士団の後につきます。殿下はそれに続いてください。しんがりを頼むぞ、カレヴィ、フリッツ、リューク、ピエル」
「おう!」
「おまかせください!」
若手たちが声を張り、きびきびと騎乗する。
「ナオ、行こう」
ヴァレリラルドは先に愛馬に跨ると、馬上からアシェルナオに手を差し出す。
「うん」
アシェルナオはヴァレリラルドの手を借りてひらりとアロイスに跨った。
瘴気のなくなった森は、見た目は元の森だったが、いつもとは様相が違っていた。
アシェルナオはあちこちを見回しながら何が違うのかを考えていたが、クンクンと森の空気を嗅いで、
「まだ香りが戻ってないんだ」
と呟いた。
『瘴気の中にいたからねー』
『真っ黒だったからねー』
『間に合ってよかったねー』
『もうちょっと遅かったら』
『元気になるのに時間がかかってたねー』
「そうなんだ」
『精霊も戻ってきたから』
『前みたいに元気になるよ』
『だからナオ』
『森をぜんぶきれいにしてー』
『泉もきれいにしてー』
「うん、そうするつもりだよ」
アシェルナオが精霊たちと話していると、ヴァレリラルドは左手でアシェルナオを抱き寄せる。
「うん?」
見た目よりも逞しいヴァレリラルドの胸に背中が密着して、アシェルナオの鼓動が跳ねた。
「精霊と話をしているから、私のことを忘れているかと思った」
「忘れてないよ?」
「わかってる。妬けただけだ」
ヴァレリラルドは、チュッ、とアシェルナオの旋毛に唇を落とした。
ピッ。
後ろから笛が鳴った。
「テュコはこんなところまで笛を持ってきてるのか」
うんざりと呟くヴァレリラルドに、
「イチャイチャは浄化が終わってからだぞ」
ウルリクが近づいてきて笑った。
「ナオ、この件が落ち着いたらイチャイチャしよう」
「はーい」
ヴァレリラルドとイチャイチャしたいアシェルナオは元気に返事をする。
その返事ではまだ本当のイチャイチャの意味を知らないんだろうなぁ、と微笑ましく思いながら一行は慎重に馬を進ませる。
森の中心までの距離の半分ほどまで来たときに、
「そこで止まってください」
ジエルヴェから通信が入った。
ヴァレリラルドたちが馬から降りると、前方からシアンハウス騎士団とイクセル、ファルクが戻ってきた。
「この先は瘴気が覆っています。安全のため、ここから浄化をお願いします」
騎士たちは馬から降りてアシェルナオの横に並ぶ。
「ナオ、頼む」
「はーい」
アシェルナオはこの先にある瘴気に向けて歌い始めた。
風よ、きて
目の前の闇を吹き飛ばして
火よ、きて
闇を燃やしてあたためて
土よ、きて
生き物たちを抱きしめて
水よ、きて
凝ったものを溶かし流して
夜よ、きて
嘆くものに安らぎを与えて
風よ、火よ、土よ、水よ、光よ、夜よ
生命の源を守り抜くため、
穢れを払い、清浄を我らに届けてほしい
※※※※※※※※※※※※※※※※
サムネ詐欺、じゃなくてタイトル詐欺な気が若干しないではありません |_・)
名前が同じ人たちがいたので、メンバーチェンジしてる人がいますよ |_・)
頑張ることのむなしさを痛感中……・・・ε=(。_ _)。
背後の人々は固唾を呑んで美しい少年の華奢な背中を見守る。
『ナオ、森と泉をたすけて』
『ナオの歌できれいにして』
『ナオ、みんな困ってる』
『ナオ、おねがい』
『おねがいー』
精霊たちが瘴気を恐れてアシェルナオのローブの合わせ目から顔を出しいた。
「うん、いいよ」
アシェルナオは小さく呟くと、大きく息を吸う。そして桜色の唇を開いた。
玉樹の森のあちこちで
春の息吹が
新しい芽を目覚めさせる
五百枝から伸びる葉は青く
光を浴びる
鳥たちは歌い風がそよぐ
草木の香りが心を満たす
豊かな森で
精霊たちが生れている
小さな花々が緑を飾り
鮮やかな命に包まれる森よ
かつての姿を取り戻せ
純粋に、聖域の森がかつての姿を取り戻すことだけを願って歌うアシェルナオの歌は、清らかで穢れのない美しさに満ちていた。
その歌声はのびやかで、声量以上に空気に乗って辺りを包む。
「なんと美しく清らかな歌声だ・・・」
アシェルナオの歌を初めて耳にしたシアンハウス騎士団の騎士たちはジエルヴェを初めとして感動に打ち震えた。
「精霊たちが戻ってきました」
アシェルナオの歌声が広がるのと同時に、周囲からキラキラした光が集まってくる様子がフォルシウスだけに見えていた。
『みんな、帰ってこれるよ』
『みんな、元気になれるよ』
『黒いモヤモヤ、逃げて行くよ』
今までアシェルナオのローブに隠れていた精霊たちがふわりと飛び出す。
精霊たちの言葉通り、黒い瘴気は吸い込まれるように森の奥に後退していった。
何度見てもアシェルナオの浄化に圧倒されるヴァレリラルドは、瘴気の後退を確認すると美しい歌人に歩み寄る。
「ナオ、お疲れ。瘴気は後退したよ」
「ナオ様、お変わりはないですか?」
テュコはアシェルナオの体調を気遣う言葉をかける。
「大丈夫。すぐに精霊の泉を浄化できるよ」
楽観しているアシェルナオは笑顔で言った。
「ナオ様。無理はだめです。今日一日で終わらないことも視野に、慎重にいきましょう」
「はぁい」
フォルシウスに諭されて、早く泉を浄化したいアシェルナオは不服そうな声音で返事をした。
「瘴気の撤退したところまで行き、そこでナオに再度浄化してもらう。それを繰り返して泉まで行くんだ。用心にこしたことはない」
ヴァレリラルドが説明すると、アシェルナオも納得して頷く。
「我らが安全を確認します。その後から少し距離を空けてついてきてください」
言いながらジエルヴェが馬に乗ると、続いてシアンハウス騎士団も騎乗した。
「殿下、私とファルクがシアンハウス騎士団の後につきます。殿下はそれに続いてください。しんがりを頼むぞ、カレヴィ、フリッツ、リューク、ピエル」
「おう!」
「おまかせください!」
若手たちが声を張り、きびきびと騎乗する。
「ナオ、行こう」
ヴァレリラルドは先に愛馬に跨ると、馬上からアシェルナオに手を差し出す。
「うん」
アシェルナオはヴァレリラルドの手を借りてひらりとアロイスに跨った。
瘴気のなくなった森は、見た目は元の森だったが、いつもとは様相が違っていた。
アシェルナオはあちこちを見回しながら何が違うのかを考えていたが、クンクンと森の空気を嗅いで、
「まだ香りが戻ってないんだ」
と呟いた。
『瘴気の中にいたからねー』
『真っ黒だったからねー』
『間に合ってよかったねー』
『もうちょっと遅かったら』
『元気になるのに時間がかかってたねー』
「そうなんだ」
『精霊も戻ってきたから』
『前みたいに元気になるよ』
『だからナオ』
『森をぜんぶきれいにしてー』
『泉もきれいにしてー』
「うん、そうするつもりだよ」
アシェルナオが精霊たちと話していると、ヴァレリラルドは左手でアシェルナオを抱き寄せる。
「うん?」
見た目よりも逞しいヴァレリラルドの胸に背中が密着して、アシェルナオの鼓動が跳ねた。
「精霊と話をしているから、私のことを忘れているかと思った」
「忘れてないよ?」
「わかってる。妬けただけだ」
ヴァレリラルドは、チュッ、とアシェルナオの旋毛に唇を落とした。
ピッ。
後ろから笛が鳴った。
「テュコはこんなところまで笛を持ってきてるのか」
うんざりと呟くヴァレリラルドに、
「イチャイチャは浄化が終わってからだぞ」
ウルリクが近づいてきて笑った。
「ナオ、この件が落ち着いたらイチャイチャしよう」
「はーい」
ヴァレリラルドとイチャイチャしたいアシェルナオは元気に返事をする。
その返事ではまだ本当のイチャイチャの意味を知らないんだろうなぁ、と微笑ましく思いながら一行は慎重に馬を進ませる。
森の中心までの距離の半分ほどまで来たときに、
「そこで止まってください」
ジエルヴェから通信が入った。
ヴァレリラルドたちが馬から降りると、前方からシアンハウス騎士団とイクセル、ファルクが戻ってきた。
「この先は瘴気が覆っています。安全のため、ここから浄化をお願いします」
騎士たちは馬から降りてアシェルナオの横に並ぶ。
「ナオ、頼む」
「はーい」
アシェルナオはこの先にある瘴気に向けて歌い始めた。
風よ、きて
目の前の闇を吹き飛ばして
火よ、きて
闇を燃やしてあたためて
土よ、きて
生き物たちを抱きしめて
水よ、きて
凝ったものを溶かし流して
夜よ、きて
嘆くものに安らぎを与えて
風よ、火よ、土よ、水よ、光よ、夜よ
生命の源を守り抜くため、
穢れを払い、清浄を我らに届けてほしい
※※※※※※※※※※※※※※※※
サムネ詐欺、じゃなくてタイトル詐欺な気が若干しないではありません |_・)
名前が同じ人たちがいたので、メンバーチェンジしてる人がいますよ |_・)
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