そのステップは必要ですか?  ~精霊の愛し子は歌を歌って溺愛される~

一 ことり

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第4部

可愛いのは誰?(決着)

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 「アシェルナオが可愛いのは知ってるから、精霊の泉がどうだったのかを教えてくれないか?」

 トシュテンに訊かれて、アシェルナオは一瞬きょとんとした顔をした。

 そんなアシェルナオを、スヴェン、クラースのみならず、ドレイシュとブロームも興味深くアシェルナオの発言を待っている。

 この状況になって、ハルネスが『どうだった?』と聞いたのは、ヴァレリラルドとのデートのことではなくて精霊の泉の様子だと言うことに気づいた。

 「ハルルぅ」

 顔を赤くして再びハルネスに抱きつくアシェルナオに、

 「ほらね、アシェルナオのほうが可愛いでしょ?」

 ハルネスはアシェルナオを受け止めながらにっこり笑う。

 「今のは内緒だよ?」

 「そのかわり、さっきの話を詳しく、ね?」

 「うぅぅぅぅ……んんぅ」

 アシェルナオは苦渋の決断で頷く。

 ハルネスは可愛い顔をしているが経験が豊富なようで、軽くキスしただけという話をしてもきっと笑われてしまうだろうと思うと心が悶絶してしまうアシェルナオだった。

 なんとか気を鎮めようとアイナが淹れてくれたお茶を飲み、アシェルナオは気を取り直して人々と向き合った。

 「精霊の泉は浄化できていたよ。精霊たちがたくさんいて、オーブがキラキラですっごく綺麗だった。ふよりんも、そこにいたんだ」

 「キュー」

 アシェルナオの言葉に、ふよりんは頷くかわりに可愛い鳴き声で応える。

 「よかった」

 精霊の加護の恩恵で豊かな国を成しているシルヴマルク王国にとって、精霊の泉はまさしく国の要所なのだ。

 その精霊の泉が清浄であることに、一同は安堵した。

 「でも、精霊の泉は各地の水源と地下水脈で繋がっていて、精霊の泉は清浄に戻ったけど各地の水源に瘴気の影響が出てるらしいんだ」

 「そうなのか?」

 「うん。だから学園長先生、ブローム先生、僕、浄化に行ってきます。浄化に行くときは学園をお休みします」

 アシェルナオは、ぺこりと頭を下げる。

 「学業をおろそかにするのは感心しないが、各地を回って浄化をする奉仕の心は立派だ。気を付けて行っておいで」

 「はーい」

 ドレイシュの後押しに勇気づけられて、アシェルナオは元気に返事をした。

 「スヴェン、トシュテン、クラース、ハルネス。ナオ様は君たちを信じて精霊の泉に関すること、地下水脈のこと、各地の水源が瘴気で汚染されていることを話しています。その信用をたがえてはいけませんよ」

 ブロームはスヴェンたちを見回す。

 「えぇぇ、僕何も考えずに言っちゃってました。ごめんなさい。そんなに重いことだとは思わなくて」

 ブロームの思ってもいなかった発言に、アシェルナオはおろおろと周囲を見渡す。

 「わかっています」

 「僕たちはアシェルナオの学友になった時から弁えてます」

 「今さらです、先生」

 「すべてを踏まえた上で、友達なんです」

 だが学友たちは、うろたえるアシェルナオをよそに、しっかりと答えていた。

 「すごい、みんな大人……」

 アシェルナオは動揺してテュコを見る。

 「ナオ様はそのままのナオ様でいいんですよ」

 幾度も能天気のとばっちりを受けてきたテュコは、菩薩のような笑みを浮かべる。

 「うむ。純粋で素直な心根が精霊の愛し子たるゆえんだよ」

 ドレイシュは太鼓判を押すが、

 「なんだか、ごめんなさい……もう少ししっかりします……」

 あまり褒められていないと感じたアシェルナオは申し訳なさそうに身を小さくする。

 『ナオはそのままでいいよー』

 『ナオはナオだよー』

 『気にしなくていいんだよー』

 『そのままのナオがすきー』

 『ナオ、ドンマーイ』

 「キューイ」

 最後はぴかとふよりんに慰められた気がするが、しっかりしようとしてしっかりできるものなら、きっともうしっかりしてるはずだと思うアシェルナオだった。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※

 いつも、いいね、エール、ありがとうございます。
 前回の続きです。どっちが可愛いかに決着がつきました。短めですが、ここがきりがよかったのでここで切りました(。uωu))ペコリ
 
 いまは状況が落ち着いています。が、またもや相方の再任用の方(69歳だと判明!)が休みを取った(来週も取る)ので、あんまり楽にはなっていません。今週は400件と200件の発送を1人で封入し、大雨の中レインコートを着て1人で台車を押して郵便局に運びました。
 ていうか、ハードだし、覚えることもたくさんあるし、電話応対も個別対応も多い仕事内容なので、今までのところと同じ感覚かそれ以上に休みを取って、マイペースで仕事されると私が死にます。もう何人もの私が死にました。なぜうちの島に異動させたの……(´;ω;`)ウゥゥ
 
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