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別れと再会
手柄はいらぬ
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「アイシュタルト!捕らえるだけにしてくれ!」
リーベガルドの命を終わらせようとしていた、私の耳にジュビエールの声が飛び込んできた。
その言葉に、手が硬直するのを感じる。
リーベガルド以外見えなくなっていた視界が広がった。何も聞こえなくなっていた耳に聴覚が戻る。冷え切った頭の芯に一気に熱が戻った。
私がリーベガルドとの決着をつけるよりも早く、側仕えを捕らえて縛り上げたジュビエールが、縄を持ってこちらに寄ってくる。
「止まってくれて、良かった。」
ジュビエールは私の肩を軽く叩くと、私の膝の下に押さえ込まれたままのリーベガルドを縄で縛った。
「このまま、葬ってやりたかった。」
「少し前まで興味もなかったのに、何があった?」
私が呟いた小さな声に、ジュビエールが疑問を返す。
「何でもない。其方には、関係のない話だ。」
「ここでやらなければならないことか?」
「ククッ。捕らえるのは、あと一人だ。」
私は顔色を真っ青にして立ちすくんでいた黒髪の姫の前へと歩み寄る。
「王妃様。最後は貴女だけです。このまま抵抗せずに捕らえられてはもらえないでしょうか?」
側仕えもリーベガルドも捕らわれた。ただの側室に何ができるか。
「わ、わたくしは王妃では、ございませんっ。本物の王妃は、き、客室におりますっ。」
黒髪の姫は少し怯えながらも、先程と変わらぬキンキンと耳の中に不快に響く声を上げた。
「客室、ですか?王妃がまさかそのような場所にいるはずがない。」
この期に及んで、今更姫のことを持ち出すとは、なんとも醜悪な女であろうか。
「ま、間違いなくそこにいますっ。と、捕らえるべきはそっちの女ですわ。」
「アイシュタルト、確認に行くべきか?」
ジュビエールはこの話の判断を私に任せてくれるようだ。
私の顔が不快感に歪んだのを見たのか。それとも、客室周辺をうろついていたのを知っていたのだろうか。
どちらにせよ、ありがたい。
「いや。王妃様の言う客室周辺は私が確認した。誰もいなかった。居もしない人間を作り上げて、逃げ出すつもりかもしれぬ。」
「そうだろうな。コーゼ国の王妃は黒髪が美しい方だと、誰もが口を揃えて言っていた。やはり、王妃はこの方か。」
私の話と視線に何かを感じ取ったジュビエールが、疑うこともなく話を合わせた。
「あぁ。間違いないだろう。」
王妃は、この女だ。
少しずつ王妃との間を詰めていく。にじり寄って行く私に、不快な声が言い訳を喚き散らした。
「わたくしはただの側室です!王に言われ、ここいるだけなのです!た、助けてくださいませっ。」
「先程、王妃様と呼びかけても否定もなさいませんでした。それに私が出会った下働きの者も、王妃様は黒髪だと。ただ、街で会った者達は王妃様の名前すら存じ上げませんでしたが……」
「それは!わ、わたくしの出自が貧しい田舎の村だからですわ。わたくしの正体を隠すためにと……」
「ですから、貴女が王妃様ですね。」
「えぇ!?あら?どうしてっ。」
醜悪なことに加えて、愚鈍であったか。何の取り柄もない様な女の、何が良いのか。
「ジュビエール、これで終わりだ。王族は全て捕らえた。もう、この戦も終わるな?」
「あぁ。この三人をカミュートの王の元へ連れて行く。」
私たちは三人連れ、隠し部屋から出た。早く他の兵士に引き渡し、一刻も早く姫の元へと戻らねばならぬ。
「それは、其方に任せる。」
「はぁ?!王を捕らえたのは其方だ!」
「確かに。ただ、もう興味はない。私には行くべきところが、守るべき約束がある。」
「其方にはこの者達と共にカミュートの城まで来てもらわねば困る。」
「何故だ?」
「何故って、王への報告や褒賞、全て城で行われる。」
「わかっておる。だから、其方に任せると申した。」
「コーゼの王を捕らえた手柄はどうなる?」
「そんなものいらぬ。其方に全てやる。」
だから、私はサポナ村へ戻らせてもらう。
リーベガルドの命を終わらせようとしていた、私の耳にジュビエールの声が飛び込んできた。
その言葉に、手が硬直するのを感じる。
リーベガルド以外見えなくなっていた視界が広がった。何も聞こえなくなっていた耳に聴覚が戻る。冷え切った頭の芯に一気に熱が戻った。
私がリーベガルドとの決着をつけるよりも早く、側仕えを捕らえて縛り上げたジュビエールが、縄を持ってこちらに寄ってくる。
「止まってくれて、良かった。」
ジュビエールは私の肩を軽く叩くと、私の膝の下に押さえ込まれたままのリーベガルドを縄で縛った。
「このまま、葬ってやりたかった。」
「少し前まで興味もなかったのに、何があった?」
私が呟いた小さな声に、ジュビエールが疑問を返す。
「何でもない。其方には、関係のない話だ。」
「ここでやらなければならないことか?」
「ククッ。捕らえるのは、あと一人だ。」
私は顔色を真っ青にして立ちすくんでいた黒髪の姫の前へと歩み寄る。
「王妃様。最後は貴女だけです。このまま抵抗せずに捕らえられてはもらえないでしょうか?」
側仕えもリーベガルドも捕らわれた。ただの側室に何ができるか。
「わ、わたくしは王妃では、ございませんっ。本物の王妃は、き、客室におりますっ。」
黒髪の姫は少し怯えながらも、先程と変わらぬキンキンと耳の中に不快に響く声を上げた。
「客室、ですか?王妃がまさかそのような場所にいるはずがない。」
この期に及んで、今更姫のことを持ち出すとは、なんとも醜悪な女であろうか。
「ま、間違いなくそこにいますっ。と、捕らえるべきはそっちの女ですわ。」
「アイシュタルト、確認に行くべきか?」
ジュビエールはこの話の判断を私に任せてくれるようだ。
私の顔が不快感に歪んだのを見たのか。それとも、客室周辺をうろついていたのを知っていたのだろうか。
どちらにせよ、ありがたい。
「いや。王妃様の言う客室周辺は私が確認した。誰もいなかった。居もしない人間を作り上げて、逃げ出すつもりかもしれぬ。」
「そうだろうな。コーゼ国の王妃は黒髪が美しい方だと、誰もが口を揃えて言っていた。やはり、王妃はこの方か。」
私の話と視線に何かを感じ取ったジュビエールが、疑うこともなく話を合わせた。
「あぁ。間違いないだろう。」
王妃は、この女だ。
少しずつ王妃との間を詰めていく。にじり寄って行く私に、不快な声が言い訳を喚き散らした。
「わたくしはただの側室です!王に言われ、ここいるだけなのです!た、助けてくださいませっ。」
「先程、王妃様と呼びかけても否定もなさいませんでした。それに私が出会った下働きの者も、王妃様は黒髪だと。ただ、街で会った者達は王妃様の名前すら存じ上げませんでしたが……」
「それは!わ、わたくしの出自が貧しい田舎の村だからですわ。わたくしの正体を隠すためにと……」
「ですから、貴女が王妃様ですね。」
「えぇ!?あら?どうしてっ。」
醜悪なことに加えて、愚鈍であったか。何の取り柄もない様な女の、何が良いのか。
「ジュビエール、これで終わりだ。王族は全て捕らえた。もう、この戦も終わるな?」
「あぁ。この三人をカミュートの王の元へ連れて行く。」
私たちは三人連れ、隠し部屋から出た。早く他の兵士に引き渡し、一刻も早く姫の元へと戻らねばならぬ。
「それは、其方に任せる。」
「はぁ?!王を捕らえたのは其方だ!」
「確かに。ただ、もう興味はない。私には行くべきところが、守るべき約束がある。」
「其方にはこの者達と共にカミュートの城まで来てもらわねば困る。」
「何故だ?」
「何故って、王への報告や褒賞、全て城で行われる。」
「わかっておる。だから、其方に任せると申した。」
「コーゼの王を捕らえた手柄はどうなる?」
「そんなものいらぬ。其方に全てやる。」
だから、私はサポナ村へ戻らせてもらう。
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