第四王子の運命の相手は私です

光城 朱純

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第四王子、ライナルト

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「またか……」
 
 王城の隅、他の王族達とは隔離された部屋でカイート王国第四王子ライナルトは、空に立ち込める暗雲を見てため息を吐いた。
 扉の外ではライナルトの独り言を聞いて、ビクつく護衛騎士の姿が目に浮かぶ。

 暖炉に火を入れてもらうにはまだ早い季節ではあるが、ついこの間侍女が掃除をしていったことを思えば、望めばいつだって暖かな炎が灯されるはずだ。
 閉じ込められているとはいえ、第四王子という身分柄、邪険に扱うこともできない、といったところだろう。室内に置かれた魔道具を鳴らせば、そのうち誰かが用聞きにやって来て、すぐさまその姿を消す。
 ライナルトの側には、誰も長居をしようとはしない。

 窓ガラスの先、北の外れの方に浮かぶ暗雲。その下では雨が降っているのだろうか。いつだってあの場所に雲が生まれるのだから、雨の降りやすい場所なのだろう。
 触ることもできない雲に向かって左手を伸ばせば、めくり上がった袖の下に浮かぶ紋様。見た目だけは美しい闇魔法の使い手の証が目に入る。
 少しでも目に入れたくはないと、ライナルトが袖を引っ張り、左手を床に向けて垂れ下げた。

(この紋様さえなければ)

 目に入れたくもなかった紋様が見えてしまったことで、ライナルトの思考は紋様のことへと向かう。
 憎んでも憎んでも消えることはない紋様。
 誰もが怯え、嫌悪する紋様。
 それを持って生まれたライナルトが、独り離れて暮らすのも仕方ない。
 ライナルト自身も、そう思って生きていた。

 百年前、国の危機を救った賢者が言った『闇の魔法に身を呑まれた者が、再び国に災いを招く』その言葉に怯える人々の手によって、闇魔法の使い手は迫害され続けている。
 それは第四王子として生まれたライナルトも同様だ。
 命の心配がない分、王子であって良かったのかもしれないが、こんな生活を送り続けるだけならば生きていても仕方ないと、そう考えるのも無理はない。

 誰かに近寄られることもなく、何を為すこともなく、ただ命の明かりが消えゆくのを待つだけ。
 きっと最期の日も、この部屋でこうして空見上げているのだと、ライナルト自身も信じて止まない。
 その日が一刻も早く来ることだけが、ライナルトの望みだった。

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