しき神つかい

関谷俊博

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そう思ったとき、ぼくの背中ごしに、白い竜が飛んできた。そして、ぼくの前に立ちふさがった。
黒鬼と白い竜がぶつかり合う。
竜は黒鬼にからみつき、ぎりぎりとしめあげた。
ぎゃーっという悲鳴。
黒鬼と白い竜は、一瞬にして消え去った。
「美波!」
振り返ると、気を失っていたはずの美波が立っていた。
ぼくは、ようやく事態をのみこめた。
美波が式神を使ったのだ。

「ノウマク サラバタッタ ギャテイビャク」
ぼくが呪をとなえると、美波も共にとなえ始めた。
「サラバボッケイビャク…」
「おのれ! 賀茂と安倍…」
 のどをかきむしり、景晴が苦しみ始めた。
「熱い…熱い…からだが燃える! 燃える!」
「それは憎しみの炎…戻ってもらおうか。鬼塚に」
ぼくは言った。
「憎い…憎い…」

ギャーという悲鳴があがり、母さんから、ひとすじの煙が立ち上った。
母さんは、ガクッと膝をついて、そのまま地面に倒れた。
そして黒い煙は、鬼塚に吸いこまれて、消えていった。
ぼくと美波の呪は、景晴を鬼塚に封じこめたのだ。
「オワッタ」
そのとき、ぼくの耳元で、またあの声がした。
「ワタシハオマエノナカデネムル」
こうして成平は、ぼくの中で、深い眠りについた。

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