闇のなかのジプシー

関谷俊博

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「確かに柊が言いそうなことですね…自分にとって必要だと感じなければ、柊さんは納得しないでしょうね」
  
「そうなんです。彼女は諦めているのかもしれません。あるいは、心のどこかで、自分が変わることを怖がっているのかもしれません。彼女は、これまでああして、ずっとやってきた訳ですから」
僕は黙っていた。
「もちろん彼女に恐怖という感情があったらの話ですが…」
柊は感情がないのではなく、感情を知らないのだ。

「ところが、あなたに出逢って、あの子は少し変わったのです
「変わった?」
「そうです。変わりたい。あなたに出逢って、あの子はそう思ったようです」
榊原さんは僕の顔をじっと見つめた。
「カウンセリングを受けたい。あの子はそう言ったのです。あの子が自分から何かをしたいと言ったのは初めてだったので、私は驚きました」
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