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姫! 黒姫、どうしてだ!」
黒い竜が、口を開けて、ぼくに迫ってくる。
「裏切ったのか! 黒姫!」
またしても同じ夢。ぼくは汗びっしょりで目を覚ました。
もう朝九時を過ぎていた。
うるさいほどにセミが鳴いている。
昨日の夜は、あれからまた話し込んで、寝たのは十二時近くだったのだ。
「おはよう。亮ちゃん」
階段を下りていくと、おばさんが台所で洗い物をしていた。
「朝ごはん、食べるでしょう?」
「うん。おじさんは?」
「町へ買い出しに行ったわ」
海苔と、出し巻き卵と味噌汁で朝食を済ませた。
「おじさんの仕事場を見せてもらってもいいかな?」
「もちろん、いいわよ。見ていらっしゃい」
おじさんの仕事場は別棟にある。
外へ出ると照りつけるような暑さだった。
そして、セミの鳴き声のシャワー。
おじさんの仕事場では、昨日の女の子が、素焼きの茶碗に上薬を塗っていた。
たしか、美波と言ったっけ。
「これ、きみが焼いたの?」
「ああ」
美波は茶碗から目を離さずにうなずいた。
「すごいなあ」
「こんなのはお遊びだ。満足なものができたことは、まだ一度もない」
美波は、ふうっと息をはいた。
「だけど焼き物はいい。上薬のかけ方や、焼き方一つでいろんな味わいがでる。だから、おもしろい」
美波は、くっつきそうになるほど、顔を近づけて言った。
「おまえ、名前なんていうんだっけ?」
顔立ちだけ見れば、美波は美人だと思う。スタイルもいい。しかし、この愛想のないしゃべり方。なんとかならないものか。
「亮太だよ。なんだよ。覚えてなかったの」
「じゃあ、亮太。今夜、この町で花火大会がある。いっしょに見に行こう」
美波は言った。
黒い竜が、口を開けて、ぼくに迫ってくる。
「裏切ったのか! 黒姫!」
またしても同じ夢。ぼくは汗びっしょりで目を覚ました。
もう朝九時を過ぎていた。
うるさいほどにセミが鳴いている。
昨日の夜は、あれからまた話し込んで、寝たのは十二時近くだったのだ。
「おはよう。亮ちゃん」
階段を下りていくと、おばさんが台所で洗い物をしていた。
「朝ごはん、食べるでしょう?」
「うん。おじさんは?」
「町へ買い出しに行ったわ」
海苔と、出し巻き卵と味噌汁で朝食を済ませた。
「おじさんの仕事場を見せてもらってもいいかな?」
「もちろん、いいわよ。見ていらっしゃい」
おじさんの仕事場は別棟にある。
外へ出ると照りつけるような暑さだった。
そして、セミの鳴き声のシャワー。
おじさんの仕事場では、昨日の女の子が、素焼きの茶碗に上薬を塗っていた。
たしか、美波と言ったっけ。
「これ、きみが焼いたの?」
「ああ」
美波は茶碗から目を離さずにうなずいた。
「すごいなあ」
「こんなのはお遊びだ。満足なものができたことは、まだ一度もない」
美波は、ふうっと息をはいた。
「だけど焼き物はいい。上薬のかけ方や、焼き方一つでいろんな味わいがでる。だから、おもしろい」
美波は、くっつきそうになるほど、顔を近づけて言った。
「おまえ、名前なんていうんだっけ?」
顔立ちだけ見れば、美波は美人だと思う。スタイルもいい。しかし、この愛想のないしゃべり方。なんとかならないものか。
「亮太だよ。なんだよ。覚えてなかったの」
「じゃあ、亮太。今夜、この町で花火大会がある。いっしょに見に行こう」
美波は言った。
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