ジョクラトル

関谷俊博

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メンバーは又、俺のうちに集まっていた。俺たちはHALレーベルとの契約書を、隅々まで舐めるように読み込んだ。
「二年契約になってるな。売れなきゃクビってことか」と倉田。
「それは普通ですよ。僕らは商品なんですから」
杉浦が使った「商品」という言葉が気に食わなかったが、まあ、いい。
俺たちは戸惑っていた。CDプレスや流通にかかる費用、プロモーションにかかる費用は、HALレーベルが負担するが、レコーディング費用は自分達持ちだったからだ。
「費用を全部負担してくれる訳じゃないんですね。 そこ、大丈夫でしょうか?」と、杉浦が今度は不安を口にした。
「レーベルを名乗る悪徳業者もいるな。金だけ巻き上げられる」と、倉田。
「大体CDをプレスするだけなら、数十万でできる時代なんだよ。俺たちがデモテープを作った時だって、スタジオ代払っただけだろ。一万円もかからなかった」
「じゃあ、レーベルに所属するメリットなんか無いじゃないか」と俺。
「いや。そうでもないよ。僕は悪くない条件だと思う」
白井が口をはさんだ。
「HALレーベルは、かなりプロモーションに力を入れている。そういう意味では良心的だよ。しっかりとしたプロモーションをすれば、メディアに露出する機会が増える」
「いいアルバムを制作してもプロモーションが悪ければ売れないってことか」 
俺が言うと、白井は頷いた。
「そうだよ。インディーズには、CDショップに資料を送って、はい、プロモーションしましたよって所も少なくないんだ。その点、HALレーベルはメディアとのパイプが太い。しっかりとしたプロモーションをしてくれると思う。全国のショップにCDを置いて貰える。自主制作じゃ、限界があるんだ」 
「今回のレコーディング費用は、自分が出しましょう」
杉浦が切りだした。
「曲がりなりにもデビューしてましたから、それ位の貯えはあるんです。それに今の観客の動員数を考えれば、ライブ収入で十分賄える筈です」
こうして俺たちは、HALレーベルとの契約を決めた。
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