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真犯人、発覚
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次の日、また同じメンバーで集合する。皆が到着する前にアズサに一つのお願いをしておいた。最後の詰めである。戸惑いつつも彼女は了承してくれた。よし、犯人逮捕だ。
「カミト、調査結果はどうだった?」
ライエルが期待に満ちた目で俺を見てくる。
「調査結果だが…… 残念ならが危害を与えるような魔道具を販売した魔道具屋は見つからなかった」
「そうなんですね……捜査は振り出しですか……」
メアリーが悲しそうな顔で呟く。
「いや、そうでもない。その事実を踏まえて俺なりに調査して、推理し直したんだ。聞いてくれるか?」
「そうなんですね、わかりました」
頷く皆に、俺は新しい考えを提示する。
「まず、今回の件に盗賊から持ち込まれた魔道具が関係あることは間違いないだろう。シールズオブワールドの調査結果でも、血を生贄にゴーストを召喚するという怪しげな魔道具が多数盗賊達によって持ち込まれたことが確認されている。しかし、その後の推理は見直した」
「どう見直したの?」
ナタリーが楽しげな目で見つめてくる。
「魔道具好きのヴェラから聞いたんだが、極めて珍しい魔道具はコレクターと買い手が直接やりとりすることが多いんだよな?」
「うん…… その通り。だから探すのが手間……」
「シールズオブワールドの調査によると「違法な」魔道具は魔道具屋に持ち込まれていないらしい。だが、薬物を売り捌くような集団が違法な魔道具を持っていないなんて有り得るか? 俺は本当に問題のある魔道具は直接売買したのではないかと考えた」
「なるほど。妥当だね」
マイクが呟く。俺は推理を続ける。
「直接取引はリスクが大きい。よってそれなりに信頼関係が築かれているのではないかという推測を立てた。つまり、お互いに問題ないことを確認した上で取引をしたのではないか、と。で、買い手が提示した信頼の印が左腕だったんだろう。「私はこれだけ本気ですよ」とアピールすることで魔道具の売買を成立させたんだ」
ここからは慎重に話す必要がある。
「犯人は誰か? 今のままだとサクラの住民全員が候補になるように思えるが、俺は調査の結果、被害者に共通点を見出した。それは「イオン・ワールド」との接点だ。身元が判明している6名全員がイオン・ワールドの3人と会ったことがあることがチームメンバーへの聞き込みで判明した」
「へえ、私達の知り合いばかりだったんだ。それで?」
ナタリーの目つきが厳しくなる。
「3人の中に犯人がいるのではないか、と考えた俺は怪しい奴を特定するためにこれまでの発言や行動を振り返っていた。そこで気になるセリフがあったんだ。「左手はどれも傷跡があったらしいよ。小さな傷だけど、殺される前についた傷っぽい。それが共通点だって」この情報がある人によって提供されていたんだが、よく考えてくれ。「被害者の共通点」という重要な情報を警察が一般人に話すと思うか? 俺らは警備をしていたので左腕を見る機会はなかった。警察以外見ていない左腕の共通点の情報がなぜ分かった? 怪しいと考えた俺は昨日の夜そいつを尾行したんだ」
尾行したのはアンだが、流石に隠さないとな。手柄を横取りしたようですまないアン。
「案の定、盗賊らしき怪しい男と会話し、何かを受け取っているシーンを目撃したよ」
「何を受け取ったんだ、メアリー?」
「メアリーなの!?」
メアリーが何を考えているかわからない顔で黙っている。
「お前達がいたという村の場所を調べたよ。チーム名から推測した通り、「イーオン」という村がここから馬で6時間の距離にあった。今日のクエスト中に行方をくらまし向かうつもりだったんだろ?」
「全部推測じゃん。証拠はあるの?」
「証拠か……。 アズサ、アイテムボックスを貸してくれ」
「アイテムボックス…… それは私の!」
「はい、こっそり取っておいたけど、このためだったんだね」
俺はアズサに事前に、推理中にメアリーのアイテムボックスを回収するよう伝えていた。
「このアイテムボックスは中々高性能なやつだな。小さい物であれば数十個は入りそうだな。さて開いてみると……」
中からは誰かの中指や薬指がいくつも落ちてきた。
「やはり、クエスト中に抜け出すつもりなら持ってきてるだろうという読み通りだったな。これは右手の中指だろ?お前はバラバラにした左手以外を森に埋めたが、その際に右手の指を全員分奪ったんだろう。魔道具に必要なのは恐らく血液ではなくて体の一部、そして心臓から遠い位置の部位の方が力を発揮できるという一般論からして手のパーツだろうと推測していた」
「まだ言い逃れするか、メアリー?」
メアリーは黙ったままだ。無言のまま立ち上がるとこちらへ向かってくる。
「どうした、何か言わないか?」
メアリーの行動が読めずに戸惑う。すると…… ぱっ。アイテムボックスと指を回収し、メアリーは走って銀の雫を飛び出す。
「まずい、とりあえずメアリーを追うぞ!」
俺たちも外に出るが、どこにもメアリーの姿はない。
「手分けして探そう」
ライエルの一言で各々が散る。
「マスターの予測、お見事です。予想通り飛び出してきたメアリーを追跡しています」
念の為に待機させていたアリエッサから年話が届く。
「アリエッサ、助かるよ。そのまま尾行を頼む」
「承知しました。現在は中央通りを抜けて西の出口に向かっています」
「分かった、俺もそっちへ向かう」
俺は走って西の出口を目指した。
「カミト、調査結果はどうだった?」
ライエルが期待に満ちた目で俺を見てくる。
「調査結果だが…… 残念ならが危害を与えるような魔道具を販売した魔道具屋は見つからなかった」
「そうなんですね……捜査は振り出しですか……」
メアリーが悲しそうな顔で呟く。
「いや、そうでもない。その事実を踏まえて俺なりに調査して、推理し直したんだ。聞いてくれるか?」
「そうなんですね、わかりました」
頷く皆に、俺は新しい考えを提示する。
「まず、今回の件に盗賊から持ち込まれた魔道具が関係あることは間違いないだろう。シールズオブワールドの調査結果でも、血を生贄にゴーストを召喚するという怪しげな魔道具が多数盗賊達によって持ち込まれたことが確認されている。しかし、その後の推理は見直した」
「どう見直したの?」
ナタリーが楽しげな目で見つめてくる。
「魔道具好きのヴェラから聞いたんだが、極めて珍しい魔道具はコレクターと買い手が直接やりとりすることが多いんだよな?」
「うん…… その通り。だから探すのが手間……」
「シールズオブワールドの調査によると「違法な」魔道具は魔道具屋に持ち込まれていないらしい。だが、薬物を売り捌くような集団が違法な魔道具を持っていないなんて有り得るか? 俺は本当に問題のある魔道具は直接売買したのではないかと考えた」
「なるほど。妥当だね」
マイクが呟く。俺は推理を続ける。
「直接取引はリスクが大きい。よってそれなりに信頼関係が築かれているのではないかという推測を立てた。つまり、お互いに問題ないことを確認した上で取引をしたのではないか、と。で、買い手が提示した信頼の印が左腕だったんだろう。「私はこれだけ本気ですよ」とアピールすることで魔道具の売買を成立させたんだ」
ここからは慎重に話す必要がある。
「犯人は誰か? 今のままだとサクラの住民全員が候補になるように思えるが、俺は調査の結果、被害者に共通点を見出した。それは「イオン・ワールド」との接点だ。身元が判明している6名全員がイオン・ワールドの3人と会ったことがあることがチームメンバーへの聞き込みで判明した」
「へえ、私達の知り合いばかりだったんだ。それで?」
ナタリーの目つきが厳しくなる。
「3人の中に犯人がいるのではないか、と考えた俺は怪しい奴を特定するためにこれまでの発言や行動を振り返っていた。そこで気になるセリフがあったんだ。「左手はどれも傷跡があったらしいよ。小さな傷だけど、殺される前についた傷っぽい。それが共通点だって」この情報がある人によって提供されていたんだが、よく考えてくれ。「被害者の共通点」という重要な情報を警察が一般人に話すと思うか? 俺らは警備をしていたので左腕を見る機会はなかった。警察以外見ていない左腕の共通点の情報がなぜ分かった? 怪しいと考えた俺は昨日の夜そいつを尾行したんだ」
尾行したのはアンだが、流石に隠さないとな。手柄を横取りしたようですまないアン。
「案の定、盗賊らしき怪しい男と会話し、何かを受け取っているシーンを目撃したよ」
「何を受け取ったんだ、メアリー?」
「メアリーなの!?」
メアリーが何を考えているかわからない顔で黙っている。
「お前達がいたという村の場所を調べたよ。チーム名から推測した通り、「イーオン」という村がここから馬で6時間の距離にあった。今日のクエスト中に行方をくらまし向かうつもりだったんだろ?」
「全部推測じゃん。証拠はあるの?」
「証拠か……。 アズサ、アイテムボックスを貸してくれ」
「アイテムボックス…… それは私の!」
「はい、こっそり取っておいたけど、このためだったんだね」
俺はアズサに事前に、推理中にメアリーのアイテムボックスを回収するよう伝えていた。
「このアイテムボックスは中々高性能なやつだな。小さい物であれば数十個は入りそうだな。さて開いてみると……」
中からは誰かの中指や薬指がいくつも落ちてきた。
「やはり、クエスト中に抜け出すつもりなら持ってきてるだろうという読み通りだったな。これは右手の中指だろ?お前はバラバラにした左手以外を森に埋めたが、その際に右手の指を全員分奪ったんだろう。魔道具に必要なのは恐らく血液ではなくて体の一部、そして心臓から遠い位置の部位の方が力を発揮できるという一般論からして手のパーツだろうと推測していた」
「まだ言い逃れするか、メアリー?」
メアリーは黙ったままだ。無言のまま立ち上がるとこちらへ向かってくる。
「どうした、何か言わないか?」
メアリーの行動が読めずに戸惑う。すると…… ぱっ。アイテムボックスと指を回収し、メアリーは走って銀の雫を飛び出す。
「まずい、とりあえずメアリーを追うぞ!」
俺たちも外に出るが、どこにもメアリーの姿はない。
「手分けして探そう」
ライエルの一言で各々が散る。
「マスターの予測、お見事です。予想通り飛び出してきたメアリーを追跡しています」
念の為に待機させていたアリエッサから年話が届く。
「アリエッサ、助かるよ。そのまま尾行を頼む」
「承知しました。現在は中央通りを抜けて西の出口に向かっています」
「分かった、俺もそっちへ向かう」
俺は走って西の出口を目指した。
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