二重生活を楽しむ最強の冒険者 ~英雄+新人として活躍します~

だいのすけ

文字の大きさ
21 / 57

真犯人、発覚

しおりを挟む
 次の日、また同じメンバーで集合する。皆が到着する前にアズサに一つのお願いをしておいた。最後の詰めである。戸惑いつつも彼女は了承してくれた。よし、犯人逮捕だ。

「カミト、調査結果はどうだった?」
 ライエルが期待に満ちた目で俺を見てくる。
「調査結果だが…… 残念ならが危害を与えるような魔道具を販売した魔道具屋は見つからなかった」
「そうなんですね……捜査は振り出しですか……」
 メアリーが悲しそうな顔で呟く。
「いや、そうでもない。その事実を踏まえて俺なりに調査して、推理し直したんだ。聞いてくれるか?」
「そうなんですね、わかりました」
 頷く皆に、俺は新しい考えを提示する。

「まず、今回の件に盗賊から持ち込まれた魔道具が関係あることは間違いないだろう。シールズオブワールドの調査結果でも、血を生贄にゴーストを召喚するという怪しげな魔道具が多数盗賊達によって持ち込まれたことが確認されている。しかし、その後の推理は見直した」
「どう見直したの?」
 ナタリーが楽しげな目で見つめてくる。

「魔道具好きのヴェラから聞いたんだが、極めて珍しい魔道具はコレクターと買い手が直接やりとりすることが多いんだよな?」
「うん…… その通り。だから探すのが手間……」
「シールズオブワールドの調査によると「違法な」魔道具は魔道具屋に持ち込まれていないらしい。だが、薬物を売り捌くような集団が違法な魔道具を持っていないなんて有り得るか? 俺は本当に問題のある魔道具は直接売買したのではないかと考えた」
「なるほど。妥当だね」
 マイクが呟く。俺は推理を続ける。

「直接取引はリスクが大きい。よってそれなりに信頼関係が築かれているのではないかという推測を立てた。つまり、お互いに問題ないことを確認した上で取引をしたのではないか、と。で、買い手が提示した信頼の印が左腕だったんだろう。「私はこれだけ本気ですよ」とアピールすることで魔道具の売買を成立させたんだ」
 ここからは慎重に話す必要がある。

「犯人は誰か? 今のままだとサクラの住民全員が候補になるように思えるが、俺は調査の結果、被害者に共通点を見出した。それは「イオン・ワールド」との接点だ。身元が判明している6名全員がイオン・ワールドの3人と会ったことがあることがチームメンバーへの聞き込みで判明した」
「へえ、私達の知り合いばかりだったんだ。それで?」
 ナタリーの目つきが厳しくなる。

「3人の中に犯人がいるのではないか、と考えた俺は怪しい奴を特定するためにこれまでの発言や行動を振り返っていた。そこで気になるセリフがあったんだ。「左手はどれも傷跡があったらしいよ。小さな傷だけど、殺される前についた傷っぽい。それが共通点だって」この情報がある人によって提供されていたんだが、よく考えてくれ。「被害者の共通点」という重要な情報を警察が一般人に話すと思うか? 俺らは警備をしていたので左腕を見る機会はなかった。警察以外見ていない左腕の共通点の情報がなぜ分かった? 怪しいと考えた俺は昨日の夜そいつを尾行したんだ」
 尾行したのはアンだが、流石に隠さないとな。手柄を横取りしたようですまないアン。 

「案の定、盗賊らしき怪しい男と会話し、何かを受け取っているシーンを目撃したよ」
「何を受け取ったんだ、メアリー?」
「メアリーなの!?」
 メアリーが何を考えているかわからない顔で黙っている。

「お前達がいたという村の場所を調べたよ。チーム名から推測した通り、「イーオン」という村がここから馬で6時間の距離にあった。今日のクエスト中に行方をくらまし向かうつもりだったんだろ?」
「全部推測じゃん。証拠はあるの?」
「証拠か……。 アズサ、アイテムボックスを貸してくれ」
「アイテムボックス…… それは私の!」
「はい、こっそり取っておいたけど、このためだったんだね」
 俺はアズサに事前に、推理中にメアリーのアイテムボックスを回収するよう伝えていた。

「このアイテムボックスは中々高性能なやつだな。小さい物であれば数十個は入りそうだな。さて開いてみると……」
 中からは誰かの中指や薬指がいくつも落ちてきた。

「やはり、クエスト中に抜け出すつもりなら持ってきてるだろうという読み通りだったな。これは右手の中指だろ?お前はバラバラにした左手以外を森に埋めたが、その際に右手の指を全員分奪ったんだろう。魔道具に必要なのは恐らく血液ではなくて体の一部、そして心臓から遠い位置の部位の方が力を発揮できるという一般論からして手のパーツだろうと推測していた」
「まだ言い逃れするか、メアリー?」
 メアリーは黙ったままだ。無言のまま立ち上がるとこちらへ向かってくる。
「どうした、何か言わないか?」
 メアリーの行動が読めずに戸惑う。すると…… ぱっ。アイテムボックスと指を回収し、メアリーは走って銀の雫を飛び出す。

「まずい、とりあえずメアリーを追うぞ!」
 俺たちも外に出るが、どこにもメアリーの姿はない。
「手分けして探そう」
 ライエルの一言で各々が散る。

「マスターの予測、お見事です。予想通り飛び出してきたメアリーを追跡しています」
 念の為に待機させていたアリエッサから年話が届く。
「アリエッサ、助かるよ。そのまま尾行を頼む」
「承知しました。現在は中央通りを抜けて西の出口に向かっています」
「分かった、俺もそっちへ向かう」
 俺は走って西の出口を目指した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

処理中です...