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LV10の本気
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俺は急いで西の出口に向かって走る。
「もうすぐ出口に到着しそうです。攻撃しますか?」
アリエッサが町の中で魔法を使おうものなら大惨事である。変身で多少レベルを下げたところでテロ行為になってしまう。
「話しかけて時間を稼げるか?」
「わかりました。やってみます」
西の出口に辿り着くと、出口の前でアリエッサと会話するメアリーを見つけた。メアリーの顔は引き攣っている。が、俺と目が合うと走って森の中へ逃げ出した。
「助かった。これなら追いつける」
俺はアリエッサに目線で感謝を伝え、メアリーを追いかける。森の中の移動速度は経験速度が物をいう。俺は10年冒険者をやっているんだ。メアリーとはレベルが違うさ。
「やっと追いついたぞ。いきなり逃げるなんて酷いじゃないか」
俺は軽口を叩く。まだまだ余裕であるアピールだ。
「いやー追いつかれちゃったか。アリエッサさんに目を付けられたのがね…… もうちょっとゆっくり走ればよかったかなあ」
苦笑するメアリー。
「で、どうなんだ?言い訳はあるか?」
「いや、ないよ。全部貴方の予想通り。思った以上に推理が的を得てて、焦って適当に左手の傷の話をしたのは失敗だったなあ。まあいいや。私は魔道具を使ってイーオンを滅ぼして、復讐をするだけ。貴方には関係ないから放っておいて欲しいけどね。」
「なぜ自分の故郷を滅ぼすんだ?」
「そうね……簡単にいうと、私たちにはノアという友達がいてね。もともと4人グループの友達だったの。でも村にアンデットが来た時、ノアが遭遇したの。ノアは助けを叫びながら戦ったけど、村の皆は怖がって家に閉じこもったの。で、ノアは殺されちゃった。村人みんなで力を合わせて戦えばきっと追い払えたのに、誰もやろうとしなかったんだ。私? 助けに行こうとしたら家族に止められて、無理やり物置に閉じ込められたの。あの時のノアの叫び声がいまだに聞こえるんだ。」
メアリーの淡々とした説明が続く。
「その後、保守的な村の風土に嫌気がさして冒険者になったんだけどね。村への憎しみはずっと残ってた。で、最近盗賊が来たでしょ? 偶然盗賊と話す機会があったの。その時にアンデットを生み出す魔道具の話を聞いてね。これだ! と思ったわけ。ということだから私のことは放っておいてくれない?」
「理由は理解したが、放っておくわけにはないな。当然止めるよ。諦めて大人しく投降してほしいな。LV3同士で戦うなんて不毛なことはしたくない」
「そうだよね……じゃあ貴方は殺すしかなさそうね。ここなら誰も来ないし、殺して埋めてあげるわ。」
そういうとメアリーはアイテムボックスから何かの液体を取り出し、飲んだ。
「冥土の土産に教えてあげる。これはLVを一時的に2あげる薬。当然非合法だし副作用もあるけど…… 今はそんなこと言ってられないからね」
そういうと、メアリーが剣を持って走ってきた。早い、これがレベル5か。そう考えている間にメアリーは肉薄し、俺の喉を切り裂く。
「グッ……」
「さよなら、カミト。また来世でね」
「!?なんで立ち上がってるの? というか、貴方は誰?」
ああ、これがアリエッサの言っていた「LV3状態で瀕死になると変身が強制的に解除される」というやつか。LV5の攻撃など、LV10からするとかすり傷に等しい。だから実質回復状態になるわけだな。
「……。 身代わりの魔道具か何か? まあいいわ、貴方も殺してあげる」
こちらに再度剣を振りかぶるメアリー。
LV3の時に使用している剣を拾い、メアリーの攻撃を受け止める。
「興味深い薬だな。どれくらい持続するんだ?」
「バカにして……」
メアリーは憤慨しているようだ。アドレナリンが出ているな。
カキン、カキン。メアリーの攻撃を全て受け止める。正直にいうと、LV10の目線ではLV3もLV5も誤差の範囲内である。俺の目的は薬の副作用を確認するために時間をかけることに移っている。
「サラマンドラ!」
剣に炎を灯したメアリーが攻撃してくる。少し熱いが…… ドラゴンのブレスと比べるとなあ。
「まだ薬の効果は切れないのか? 時間制限があるのかと思っていたぞ」
「はあ、はあ。そうよ。5分間しか持たないのがこの薬の問題点。5分経つと異様な疲労感が襲うらしいわ。命を削ってレベルアップしているのにね。そろそろ決着をつけましょう」
メアリーは苦しそうだ。そろそろ薬の効果が切れるか?
「スロウ!」
メアリーが奥の手?を繰り出したようだ。こちらのスピードを遅らせ、感覚を狂わせる狙いか。戦闘に置いて、スピード感覚が変化することはインパクトが極めて大きい。普通の戦いなら勝敗が付くだろう。普通であれば。
「ストップ」
俺は魔法を発動した。3つの固有魔法の一つだ。
メアリーは剣を振りかぶった状態で停止する。いや、全ての物が活動を停止した。これが俺の保有魔法の一つ、タイムストップだ。おそらく世界で唯一俺だけが使える魔法。スロウのように相手のスピードを下げる魔法や自身を加速させる魔法はあるが、完全に相手を停止する魔法の有効性は次元が違う。
この魔法の利点はもう一つあり、魔法の効果発動が阻害されない点だ。ターゲットを認識したり的中させたりする必要なく、半径100mの世界の時間を止めることができる。相手は何も認識できないし、対応することもできない。俺の保有魔法は「後2つ」が有名だが、完全なる必殺技はこのタイムストップである。
停止できる時間は約2秒。一見短いように見えるが、これだけの時間があれば戦闘ではあまりにも大きな差になる。遠距離魔法でも容易に回避できるし、剣先を躱すこともできる。唯一の欠点は連発できないことだろうか。1分に1回程度の使用が限界である。まあ一度の発動で決着をつけることができることが多いのであまり問題にはならないが。
さて、どうするか? とりあえずメアリーは法の裁きを受ける必要があるだろう。ここで殺すわけにはいかない。俺は剣の動線から回避すると、殴りつける事にした。
「え、避けた……ぐふっ」
急所を力任せに殴りつける。一撃だ。メアリーは気絶した。薬も時間切れだし、しばらくは動けまい。
俺はメアリーを背負って西の出口へ戻り、アリエッサの元へ向かう。
「お疲れ様でした。変身を解除したんですね」
「いや、解除させられたんだ。厄介なドーピングをしていたようだ。警察へ連れていって説明してくれるか? 警察関係はアリエッサの方が強いだろ?」
俺は聞いた薬の効果と副作用を説明し、薬の入っていた瓶を手渡す。
「わかりました」
頷くアリエッサ。
こうして、事件は一応の解決を見た。
「あ、クエスト忘れてた」
俺たちはクエストをすっぽかしてメアリーを探していたため、依頼主の警察から怒られるのだった。
「もうすぐ出口に到着しそうです。攻撃しますか?」
アリエッサが町の中で魔法を使おうものなら大惨事である。変身で多少レベルを下げたところでテロ行為になってしまう。
「話しかけて時間を稼げるか?」
「わかりました。やってみます」
西の出口に辿り着くと、出口の前でアリエッサと会話するメアリーを見つけた。メアリーの顔は引き攣っている。が、俺と目が合うと走って森の中へ逃げ出した。
「助かった。これなら追いつける」
俺はアリエッサに目線で感謝を伝え、メアリーを追いかける。森の中の移動速度は経験速度が物をいう。俺は10年冒険者をやっているんだ。メアリーとはレベルが違うさ。
「やっと追いついたぞ。いきなり逃げるなんて酷いじゃないか」
俺は軽口を叩く。まだまだ余裕であるアピールだ。
「いやー追いつかれちゃったか。アリエッサさんに目を付けられたのがね…… もうちょっとゆっくり走ればよかったかなあ」
苦笑するメアリー。
「で、どうなんだ?言い訳はあるか?」
「いや、ないよ。全部貴方の予想通り。思った以上に推理が的を得てて、焦って適当に左手の傷の話をしたのは失敗だったなあ。まあいいや。私は魔道具を使ってイーオンを滅ぼして、復讐をするだけ。貴方には関係ないから放っておいて欲しいけどね。」
「なぜ自分の故郷を滅ぼすんだ?」
「そうね……簡単にいうと、私たちにはノアという友達がいてね。もともと4人グループの友達だったの。でも村にアンデットが来た時、ノアが遭遇したの。ノアは助けを叫びながら戦ったけど、村の皆は怖がって家に閉じこもったの。で、ノアは殺されちゃった。村人みんなで力を合わせて戦えばきっと追い払えたのに、誰もやろうとしなかったんだ。私? 助けに行こうとしたら家族に止められて、無理やり物置に閉じ込められたの。あの時のノアの叫び声がいまだに聞こえるんだ。」
メアリーの淡々とした説明が続く。
「その後、保守的な村の風土に嫌気がさして冒険者になったんだけどね。村への憎しみはずっと残ってた。で、最近盗賊が来たでしょ? 偶然盗賊と話す機会があったの。その時にアンデットを生み出す魔道具の話を聞いてね。これだ! と思ったわけ。ということだから私のことは放っておいてくれない?」
「理由は理解したが、放っておくわけにはないな。当然止めるよ。諦めて大人しく投降してほしいな。LV3同士で戦うなんて不毛なことはしたくない」
「そうだよね……じゃあ貴方は殺すしかなさそうね。ここなら誰も来ないし、殺して埋めてあげるわ。」
そういうとメアリーはアイテムボックスから何かの液体を取り出し、飲んだ。
「冥土の土産に教えてあげる。これはLVを一時的に2あげる薬。当然非合法だし副作用もあるけど…… 今はそんなこと言ってられないからね」
そういうと、メアリーが剣を持って走ってきた。早い、これがレベル5か。そう考えている間にメアリーは肉薄し、俺の喉を切り裂く。
「グッ……」
「さよなら、カミト。また来世でね」
「!?なんで立ち上がってるの? というか、貴方は誰?」
ああ、これがアリエッサの言っていた「LV3状態で瀕死になると変身が強制的に解除される」というやつか。LV5の攻撃など、LV10からするとかすり傷に等しい。だから実質回復状態になるわけだな。
「……。 身代わりの魔道具か何か? まあいいわ、貴方も殺してあげる」
こちらに再度剣を振りかぶるメアリー。
LV3の時に使用している剣を拾い、メアリーの攻撃を受け止める。
「興味深い薬だな。どれくらい持続するんだ?」
「バカにして……」
メアリーは憤慨しているようだ。アドレナリンが出ているな。
カキン、カキン。メアリーの攻撃を全て受け止める。正直にいうと、LV10の目線ではLV3もLV5も誤差の範囲内である。俺の目的は薬の副作用を確認するために時間をかけることに移っている。
「サラマンドラ!」
剣に炎を灯したメアリーが攻撃してくる。少し熱いが…… ドラゴンのブレスと比べるとなあ。
「まだ薬の効果は切れないのか? 時間制限があるのかと思っていたぞ」
「はあ、はあ。そうよ。5分間しか持たないのがこの薬の問題点。5分経つと異様な疲労感が襲うらしいわ。命を削ってレベルアップしているのにね。そろそろ決着をつけましょう」
メアリーは苦しそうだ。そろそろ薬の効果が切れるか?
「スロウ!」
メアリーが奥の手?を繰り出したようだ。こちらのスピードを遅らせ、感覚を狂わせる狙いか。戦闘に置いて、スピード感覚が変化することはインパクトが極めて大きい。普通の戦いなら勝敗が付くだろう。普通であれば。
「ストップ」
俺は魔法を発動した。3つの固有魔法の一つだ。
メアリーは剣を振りかぶった状態で停止する。いや、全ての物が活動を停止した。これが俺の保有魔法の一つ、タイムストップだ。おそらく世界で唯一俺だけが使える魔法。スロウのように相手のスピードを下げる魔法や自身を加速させる魔法はあるが、完全に相手を停止する魔法の有効性は次元が違う。
この魔法の利点はもう一つあり、魔法の効果発動が阻害されない点だ。ターゲットを認識したり的中させたりする必要なく、半径100mの世界の時間を止めることができる。相手は何も認識できないし、対応することもできない。俺の保有魔法は「後2つ」が有名だが、完全なる必殺技はこのタイムストップである。
停止できる時間は約2秒。一見短いように見えるが、これだけの時間があれば戦闘ではあまりにも大きな差になる。遠距離魔法でも容易に回避できるし、剣先を躱すこともできる。唯一の欠点は連発できないことだろうか。1分に1回程度の使用が限界である。まあ一度の発動で決着をつけることができることが多いのであまり問題にはならないが。
さて、どうするか? とりあえずメアリーは法の裁きを受ける必要があるだろう。ここで殺すわけにはいかない。俺は剣の動線から回避すると、殴りつける事にした。
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俺はメアリーを背負って西の出口へ戻り、アリエッサの元へ向かう。
「お疲れ様でした。変身を解除したんですね」
「いや、解除させられたんだ。厄介なドーピングをしていたようだ。警察へ連れていって説明してくれるか? 警察関係はアリエッサの方が強いだろ?」
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