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カミラ姫の使者
しおりを挟むある日の夜。昼のクエストを終え、俺はヘッズオブドラゴンの拠点に戻る。いつも通り今、新しい依頼が来ていないかを確認する必要がある。ここ最近はギルド長も気を遣ってくれているのか、運がいいのか重要度の高い依頼は来ていない。時々とりあえず聞いてみた、というような依頼が来るだけだ。そして一応持ち帰って検討するが全て拒否するというのがお約束になっている。
「アリエッサ、何か新しい依頼は来ていたか?」
「はい、いくつか来ていました。ただ特筆すべきものはなく、別のチームで対応することが可能だと思います。赤い棘あたりに投げておけば良いではと考えています。」
「まあ最近移動ばかりで疲れたからな。少し休憩しよう。ギルド長も無理は言わないだろう。それでいいぞ。何か面白そうな依頼があったら受けるということでいいだろう」
「はい、ただこちらが本題なのですが…… 実は、カミラ姫の使者を名乗る騎士が今日の昼に来ました。全員揃ったら話したいことがあるのでホテルで待機していると言われております」
「姫様の使者か…… わかった、呼んでくれ。エッジ、連れて来てきてくれるか?」
「了解、行ってきます」
「早速依頼か。面倒な話でないといいが」
「まあ、面倒な話であれば断れば良いでしょう。その権限はあると理解していますが?」
「まあ、そうだがあの姫様がそんな無茶な依頼をしてくるとは思えないんだよな。程よいラインの依頼が飛んでくる予感しかしないよ。情報収集ならアンに任せるし、戦闘ならエリスに任せるが」
「はあ、いつもの通りのやつですね。私はいいですけど」
「強い敵なら戦うけど……、弱いならやりたくないよ?」
「只今、戻りました! 使者を連れてきました!」
エッジが戻ってきた。隣には見目麗しい女性が立っている。カミラ姫の使者がこの人か。
「ありがとう。じゃあ早速こっちに座ってくれるか?」
「いえ、私は立ったままで。お気遣いありがとうございます。私はコードネーム「使者」と申します。姫様のメッセンジャーとして活動させていただいております」
「そうか…… わかった。じゃあまず確認させてくれ。君が姫様の使者であるという証拠はあるか?」
カミラ姫の王になりたいという野望は下手すると反逆罪に問われかねないものである。スパイが紛れ込んでいる可能性もある。情報の扱いには細心の注意を払う必要があるだろう。
「直接姫からの伝言を見ていただいた方が早いと思いますのでこちらをご覧ください」
そういうと、使者は鞄から魔道具と思われる筒を取り出した。そして何かの魔法を発動したようだ。魔道具が光出した。すると、カミラ姫が立体形式で浮かび上がってきた。
「ヘッズオブドラゴンの皆様、お久しぶりです。カミラです。今回はお願いしたい依頼がございましてこうして使者と共に参らせていただいています。残念ながらこちらは録画されたものとなっており、私は皆様と会話はすることはできないのですが…… 不明点は使者にお伝えください。使者を通じてであれば私はすぐに会話をすることができますので」
これは何かを記録しておくことができる魔道具のようだ。そんなものがあるのだと驚く。周りの皆も驚いているようだ。やはり珍しい魔道具のようだな。想像だが、特定の魔力を込めないと発動しないような形式になっているのだろう。手紙のような誰が書いたかわからない、筆跡を真似することが容易なものと比べるとはるかに信頼性が高いな。それに本人が移動しなくてもメッセージを届けることが可能なのも良い。信頼性が重要で、移動が難しい王家にぴったりの魔道具だ。
「あまり長時間録画できるものでもないので、早速ですが本題に入らせていただきます。今回皆様にお願いしたいことは、大泥棒「偉大なる怪盗」と接触し、その者を親衛隊に加えることです。ここからは怪盗と呼びましょう。先日、犯行予告がサクラの領主の元に届きました。怪盗が近日「サクラの秘宝」と呼ばれる宝石を盗むと宣言しています。皆様はその犯行を阻止、もしくは阻止せず怪盗と接触していただきたいのです」
えーっと、「偉大なる怪盗」とは誰だ……? 周りを見ても皆、首を傾げている。このチームの弱点として、一般常識に疎いという点がある。新聞を読むような習慣はないからな。唯一、使者と名乗る女性だけが驚いた顔をしている。もしくは王家では有名人なのかもしれない。
「すいません、怪盗とは誰だ? と思われているかもしれませんね。説明を補足します」
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