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ナオミとの出会い
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ぱんっ。ナオミが走り出そうとした瞬間、破裂音と共に足元に穴が空く。
「動かないで。次は当てるから」
「……こんなところで騒動を起こす気? 警備員が押し寄せるわよ」
「さあ、どうかしら? 試してみる?」
ナオミはマリアと名乗る女を睨みつける。が、マリアは少しも焦った様子がない。完全に罠に嵌められたようだ、ナオミは逃走を諦めた。
「わかったわ。降参よ。で、どうしたいの?」
「貴方の部屋まで連れていってくれる? そこで話がしたいの」
「どういう話?」
「こんなところではできない話よ」
マリアは「貴方の部屋」と表現した。ジョンの存在に気づいていない可能性がある。ジョンは戦闘能力は高いと聞いている。アンナは一縷の望みにかけて、部屋へとマリアを連れていくことにした。隙を見て逃走することも一瞬頭をよぎるが、相手は先回りしてホテルで待っていた女だ。土地勘もなく、逃げ切れるとは思えない。
部屋に到着し、鍵を開ける。
「ここが、私の部屋……」
ドアを開けて中に入ると、男1人と女2人の姿が目に入る。ジョンは…… 床で縛られて転がっている。苦痛に顔を歪めており、こちらに気づく様子もない。
「さて、ゆっくり話をしましょう。ナオミさん?」
「…… 降参ね」
ナオミは空いている椅子に座る。ジョンも捕まった今、出来ることは何もない。
「で、どういう話をしたいの?」
「貴方について色々教えて欲しいの。それだけ」
「わかったわ。お好きにどうぞ。マリアさん?」
いつの間にか女が1人合流し、2人と向き合う形になっている。
「まず、シンリーアにおける貴方の立ち位置を教えてくれる?」
「下っ端よ。使いっ走り。今回はあそこの男が立ち会う取引を監視して本部に報告するのが仕事」
「何故あなたが選ばれたのでしょうか?」
「お金をもらえる限り裏切らないからじゃないかしら。気づけばこんなところまで来てしまったから、もう引き返せないの」
「どういう意味でしょう?」
「私は女優なの。聞いたことないと思うけど。生活のために色々な仕事をしていて、気づいたら裏の仕事に関わっていた。一度犯罪を犯すと組織から抜け出せなくなって、気づけばズッポリというわけよ」
「……どう?」
「嘘ではなさそうです」
「この仕事の最中に逃げ出すという選択肢はなかったのですか?」
「ないわ。ずっと組織の陰に怯えないといけないし、お金を稼ぐ手段もない。野垂れ死ぬのが関の山でしょ」
「なるほど……」
マリアは何かを考えている様子だ。突然歩いてジョンの元に向かうと何かの薬を飲ませた。すぐに意識がなくなったようでぐったりするジョン。
「殺したの?」
「いえ、気を失わせただけです。我々は無駄な殺人は行いませんので。彼の情報は我々の計画に必要だったので拘束させていただきましたが、命を奪うつもりはありません」
「そう…… で私はどうなるの?」
「そこです。貴方は我々に協力することはできますか? もちろん報酬は支払います」
「……どういった内容?」
「簡単です。明日の取引に、我々のリーダーと一緒に行ってください。それだけです」
「……何をするつもりなの?」
「我々は貴方達の取引相手、アルに用があります。その場で殺したりはしないのでご安心を。取引を代わりに行なって、接点を作るだけです」
「ジョンと私の似顔絵は既に先方に届いていると思うのだけど、ジョンはどうするの?」
「リーダーが変装します。繰り返しになりますが、我々は貴方達の取引を邪魔するつもりはないです。目的が違うのでご安心ください」
あまりにも得体のしれない依頼。ナオミはどうするべきか迷った。
「シェリー、どうしてこの女を使うの?」
「私はマリアです。貴方が変装して行くよりも確実だからですよ。組織の細かい話などまで全て覚え込むのは難しいです。なら、彼女に行ってもらった方がいい。金銭で話をつけることが出来るのではその方が確実でしょう?」
「報酬は?」
「金貨10枚をお支払いします。取引完了後は拘束されていたフリをしてシンリーアに戻っても良いですし、この国で暮らしたいというのであれば相談に乗ることもできます。いかがでしょう? 悪い話ではないと思いますが」
金貨10枚。ナオミにしてはかなりの大金だ。半年は暮らせるかもしれない。しかしナオミは迷った。
「シンリーアを裏切ることにはならない?」
「ならないです。繰り返しになりますが取引は無事終了します。」
「……そう、ならいいわ。協力しましょう」
「ありがとうございます。先ほど仲間がうっかり話しましたが、私の名前はシェリーです。どうぞよろしくお願いしますね」
シェリーはそういうと、袋から金貨を10枚取り出し、ナオミに渡す。初めて目にする大金に、ナオミは思わず動揺してしまい、金貨を落としてしまった。急いでかき集める。
「あら、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい、こんな大金見たことがなくて。動揺しちゃって」
「ああ、そうなんですね。シンリーアではそんなにお金はもらっていないのですか?」
「ええ、脅されて半ば無理やりだから、そこまでの報酬はもらってないわ。せいぜい銀貨10枚がいいところね。安い雑用係よ。で、リーダーはどなた?」
「俺だ、ランスという。よろしく頼む」
「ナオミよ、よろしくね」
「動かないで。次は当てるから」
「……こんなところで騒動を起こす気? 警備員が押し寄せるわよ」
「さあ、どうかしら? 試してみる?」
ナオミはマリアと名乗る女を睨みつける。が、マリアは少しも焦った様子がない。完全に罠に嵌められたようだ、ナオミは逃走を諦めた。
「わかったわ。降参よ。で、どうしたいの?」
「貴方の部屋まで連れていってくれる? そこで話がしたいの」
「どういう話?」
「こんなところではできない話よ」
マリアは「貴方の部屋」と表現した。ジョンの存在に気づいていない可能性がある。ジョンは戦闘能力は高いと聞いている。アンナは一縷の望みにかけて、部屋へとマリアを連れていくことにした。隙を見て逃走することも一瞬頭をよぎるが、相手は先回りしてホテルで待っていた女だ。土地勘もなく、逃げ切れるとは思えない。
部屋に到着し、鍵を開ける。
「ここが、私の部屋……」
ドアを開けて中に入ると、男1人と女2人の姿が目に入る。ジョンは…… 床で縛られて転がっている。苦痛に顔を歪めており、こちらに気づく様子もない。
「さて、ゆっくり話をしましょう。ナオミさん?」
「…… 降参ね」
ナオミは空いている椅子に座る。ジョンも捕まった今、出来ることは何もない。
「で、どういう話をしたいの?」
「貴方について色々教えて欲しいの。それだけ」
「わかったわ。お好きにどうぞ。マリアさん?」
いつの間にか女が1人合流し、2人と向き合う形になっている。
「まず、シンリーアにおける貴方の立ち位置を教えてくれる?」
「下っ端よ。使いっ走り。今回はあそこの男が立ち会う取引を監視して本部に報告するのが仕事」
「何故あなたが選ばれたのでしょうか?」
「お金をもらえる限り裏切らないからじゃないかしら。気づけばこんなところまで来てしまったから、もう引き返せないの」
「どういう意味でしょう?」
「私は女優なの。聞いたことないと思うけど。生活のために色々な仕事をしていて、気づいたら裏の仕事に関わっていた。一度犯罪を犯すと組織から抜け出せなくなって、気づけばズッポリというわけよ」
「……どう?」
「嘘ではなさそうです」
「この仕事の最中に逃げ出すという選択肢はなかったのですか?」
「ないわ。ずっと組織の陰に怯えないといけないし、お金を稼ぐ手段もない。野垂れ死ぬのが関の山でしょ」
「なるほど……」
マリアは何かを考えている様子だ。突然歩いてジョンの元に向かうと何かの薬を飲ませた。すぐに意識がなくなったようでぐったりするジョン。
「殺したの?」
「いえ、気を失わせただけです。我々は無駄な殺人は行いませんので。彼の情報は我々の計画に必要だったので拘束させていただきましたが、命を奪うつもりはありません」
「そう…… で私はどうなるの?」
「そこです。貴方は我々に協力することはできますか? もちろん報酬は支払います」
「……どういった内容?」
「簡単です。明日の取引に、我々のリーダーと一緒に行ってください。それだけです」
「……何をするつもりなの?」
「我々は貴方達の取引相手、アルに用があります。その場で殺したりはしないのでご安心を。取引を代わりに行なって、接点を作るだけです」
「ジョンと私の似顔絵は既に先方に届いていると思うのだけど、ジョンはどうするの?」
「リーダーが変装します。繰り返しになりますが、我々は貴方達の取引を邪魔するつもりはないです。目的が違うのでご安心ください」
あまりにも得体のしれない依頼。ナオミはどうするべきか迷った。
「シェリー、どうしてこの女を使うの?」
「私はマリアです。貴方が変装して行くよりも確実だからですよ。組織の細かい話などまで全て覚え込むのは難しいです。なら、彼女に行ってもらった方がいい。金銭で話をつけることが出来るのではその方が確実でしょう?」
「報酬は?」
「金貨10枚をお支払いします。取引完了後は拘束されていたフリをしてシンリーアに戻っても良いですし、この国で暮らしたいというのであれば相談に乗ることもできます。いかがでしょう? 悪い話ではないと思いますが」
金貨10枚。ナオミにしてはかなりの大金だ。半年は暮らせるかもしれない。しかしナオミは迷った。
「シンリーアを裏切ることにはならない?」
「ならないです。繰り返しになりますが取引は無事終了します。」
「……そう、ならいいわ。協力しましょう」
「ありがとうございます。先ほど仲間がうっかり話しましたが、私の名前はシェリーです。どうぞよろしくお願いしますね」
シェリーはそういうと、袋から金貨を10枚取り出し、ナオミに渡す。初めて目にする大金に、ナオミは思わず動揺してしまい、金貨を落としてしまった。急いでかき集める。
「あら、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい、こんな大金見たことがなくて。動揺しちゃって」
「ああ、そうなんですね。シンリーアではそんなにお金はもらっていないのですか?」
「ええ、脅されて半ば無理やりだから、そこまでの報酬はもらってないわ。せいぜい銀貨10枚がいいところね。安い雑用係よ。で、リーダーはどなた?」
「俺だ、ランスという。よろしく頼む」
「ナオミよ、よろしくね」
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