正義は社会の秩序なり〜裏組織は暗躍する〜

だいのすけ

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ラッキーガール

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「ランスは私のこと信じられる? 裏切りそうとか思わない?」
「意味のない質問だな。そんな言葉は縁がない」
「あら、鉄の掟でもあるの?」
「そんなやつは寝返る前に死ぬからな。厳密な意味で裏切られたことはない」
「……そう。すごい組織なのね。詳しく知りたくなってきたかも」
「もっと知りたいなら話すが、後戻りできなくなるぞ? いいのか?」
「……今はやめておくわ。まだ、貴方達のことを知っているわけではないから」
「賢明だ。俺も一夜限りのメンバーに全てを話す気はしないからな。シンリーアはどうでもいいが、裏の社会にもルールがあるのは知ってるだろう」
「そうね。ところで……」
「どうした?」
「私は今日ここで寝るの?床に転がるジョンと一緒に?」
「……シェリー、ナオミの世話は任せた。善きに計らってくれ」
「……ローラ、いい感じのホテルに連れて行ってあげてくれない? 後、集合場所まで連れてきて」
「……いい感じ、ですね。了解です。では、いきましょうか」
「……わかったわ。一緒に寝るの?」
「部下に任せます」
「なるほど、2人部屋ね」
「いえ、3人です」
「了解、しっかりと朝起こしてくれるってわけね」


 王宮では今日もエックスの蔓延が話題になっていた。
「中毒者が溢れ、病院がパンクしそうです。とはいえ治療法もないため、病院としても打つ手がないと悲鳴が上がっています」
「エックス中毒者同士、中毒者と売人による紛争が多発しています。薬を求めてトラブルになる事例が多いです。拘置所の半分はエックス中毒者という事態です」
 公衆衛生を担当する大臣、治安維持を担当する大臣が悲惨な現状を報告する。
「大袈裟ではないか?今はスラム街の住人や犯罪者が主な中毒者と聞いているが? ならそのままでいいのではないか。むしろいなくなって街が綺麗になるだろう」
 とんでもない発言に全員がギョッとするが、顔を見て何も言えなくなる。発言主はフールー家の当主、ゾフである。経済大臣として腕をふるい、貴族としても格式高いゾフに反論できる者はいない。王でさえ、険しい顔をして黙っているままだ。

「もちろんエックスは違法薬物ですから利用者は逮捕して刑務所にぶち込んでおけば良いと思いますが。それ以上でも以下でもないかと思います」
 ゾフの発言により、エックスに関する議論は終了する。

「良いのですか? 経済にも影響が出る可能性がありますが」
 ゾフは会議からの帰り道、秘書兼護衛に話しかけられる。
「大丈夫だろう。アレは流通量がコントロールされている。大衆に影響が出るほどの量は出回らない」
「なるほど。そこはしっかりと考えられているのですね」
「あたりまえだ、本業に影響が出たら意味がないからな。あくまで問題ない範囲で、だ」

「姫様、何も発言しなくて良かったのでしょうか?」
グレース王女も会議に参加していたが、何も発言することはなかった。エックスに関して対応を進めていることを知っている次女は心配している。
「ええ、あの場で私が何を言っても意味がないでしょう。それにゾフのあの自信に満ち溢れた顔を見ましたか? 全てが自分の思い通りという顔。男の人のああいう顔は大好きです。もうすぐあの顔が崩れると思うと…… 怒るタイプなのか、動揺するタイプなのか、震えるタイプなのか、どう思います?」
「……震えるタイプではないでしょうか? 意外と小心者な気がします」
「なるほど、一理ありますね。私は怒るタイプだと思いますよ。顔を真っ赤にして怒鳴り散らす姿が目に浮かびます。ああ、早く報告が聞きたいです。私から直接彼に伝えてあげたいなあ」

 ローラとナオミは新しいホテルを探すために大通りを歩く。
「しかし私にもツキがある様ね」
「我々のような素晴らしいチームに出会えた幸運ですか?」
「…… すぐに殺されなかったという幸運よ。変なギャングに連れ去られて、死ぬまで拷問を受けて終わるような人生じゃなくて良かった」
「そうですね、裏社会で生きる者はやはりそういう運命を迎えることが多いですからね。抗争か薬物中毒か、リンチか、それが宿命です」
「ええ、そんな人はいっぱい見てきたわ。私との違いはただ一つ、運が良かったかどうか」
「そう考えると貴方は幸運の人なのかもしれません。シェリー様がプランを変更するなんて、雪が降ってもおかしくないですからね」
「…… 元々はどういうプランだったの?」
「聞きたいですか?」
「辞めておくわ。せっかくの幸運がなくなりそう」

「そういえば戦闘はお得意ですか?」
「そこそこね。組織から色々技は仕込まれたから。自分の身を守るくらいは出来るかな」
「良かったです。何かあれば自分の身は守ってくださいね?」
「取引をするだけでしょ? この国では取引とは殴り合いのことを言うの?」
「いえ、まあ何かあった時のためです。念の為の確認でした。上にはそのように伝えておきます」
「待って。言い過ぎたかも。そこまで自信がないから、誰か助けを寄越してくれない……?」
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