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43.面白い機能を持つ、磁石もどき
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「ハートシア様。防御壁を完璧にしておりますので、ご心配には及びませんが……。どうぞ、ご確認下さい」
ヒョロヒョロなお兄さんが、誇らしげに胸を張り。レイドに、明るい笑顔を向けているが――その目の下には、濃い隈があるので。なんだか、疲れた印象を受ける。
レイドは、その防御壁を確認し。どこにも綻びがないのを確認出来たのか、ヒョロ兄さんに労いの言葉を掛けているようだった。
「――何か、動きは無いか?」
「はい、特には変化はございません。ただの残骸のようですが……。この禁術機が消滅するまで、囲えばよろしいのですよね?」
「そうだ。それまで、防御壁の発動を宜しく頼む」
「はい、畏まりました。お任せ下さい!」
ビシ! とヒョロ兄さんが、レイドに向かって敬礼をした――。
このヒョロ兄さんは。見た目とは裏腹に、元気いっぱいにレイドと話をしていた。
だいぶ、寝てそうにはないけど……大丈夫かな?
言葉の調子だけ聞くと、疲れているようには感じないが……。禁術機を、防御壁でずっと囲っているらしいから。神経がすり減っているのかもしれない。
けど、ヒョロ兄さんは非常に優秀であり……。極級魔法を使える防御系の魔術師だと、レイドは言っていた。
だから、危険な物ならば尚のこと。この人に頼みたいのだろう。
レイドも、極・防御魔法を使用できるが。能力差は凄まじく開いているのだと、しみじみと言っていて。
魔法で、レイドより凄い人っているんだと……。俺は、それに驚いた。
――それから、その兄さんとレイドは、また難しい話を初め。その内容を、俺はもちろん理解出来なかった。
だから、部屋をじっくりと見渡して。暇潰しをすることにした。
そういえば、ここ。前の会議室みたいなところとは、また違う感じだな~?
なんだか、研究室のような感じに見える。
入るところは同じだったのに。部屋に入ったら、まったく違うところで俺は驚いた。
関係者のみに、各部屋の移動を行える権限が与えられているのかもしれないな。
流石は、魔術塔って言うだけあるか。
あんな一室だけの部屋じゃあ、普通のカフェと何にも変わらないもんな~。
――そう、俺達は今。魔術塔に来ていた。
レイドから聞いた話だと。禁術機は、破壊されても残留思念のようなものが、少しの間残っているらしい。
それが悪意を放ち、最後の足掻きをしたことが過去にあったという。
だから、それをさせないために。禁術機が完全に消滅するまで、強力な防御壁で囲う手段をとっているみたいだ。
レイドが言うには、3日くらいで跡形もなく消え失せるみたいだけど……。何だか、そこは輝石の取られたダンジョンと似ていると思った。
「ヤマダ、すまない。待たせてしまって」
おっ! やっと、終わったか~!!
自分が分からない内容の話とかを、周りがポンポンと会話していると、虚しくなったりするよな?
何だか、仲間外れ……みたいなさ~。
まあ、これは大事なことだし、仕方がないんだけどな。
「おう! もう、良いのか?」
なんか、あのヒョロ兄さん……。まだまだ話したそうに、こちらに熱い視線を向けて来てるんだけど?
「ああ、問題もないようだからな。後は任せても大丈夫だろう……」
ヒョロ兄さんは、また誇らしげに胸を張ってる。
なんか、あの人、面白……――ん?
「なあ、レイド。ちょっと聞いて良い?」
「なんだ?」
俺は、あのヒョロ兄さんの後ろにある禁術機に……少しだけ違和感を覚えた。
「別に大したことじゃないんだけど、あれって前のと色が違う?」
前に見たのは。確か……赤色だったような?
今、ここにあるのは――紫色であった。
「禁術機には、名前に色がつけられているだろう? ただ、闇雲に名付けられた訳ではなく。それぞれの色により、そう呼ばれている」
あっ! そうか~!! 少し考えれば、分かることだったわ。
名前にある、後ろの内容にばかり目がいってて、色がつけられてるのを深く考えてなかった。
「確かに、そうだったな~! ちゃんと考えずに聞いて、悪かった」
「いや、それは俺がしっかりと説明をしていないからな。ヤマダが分からないのは当たり前だ。昔から、人に説明をするのが、どうも苦手でな……」
ああ~……。うん、それは知ってる。
レイドって、俺が質問をしないと説明を始めることすら、しないことが多いしな~。
それでも、聞けばそれなりには答えてはくれるから、今のところは大丈夫だけど。
「ははっ! それは否定出来ないな。まあ、疑問に思った時には、俺がその都度聞くから。そん時はよろしく~」
少し、ショボンとしたレイドがコクリと頷いていた。
えぇ……? 俺が否定しなかったから、ショック受けちゃった?
レイドって、けっこうメンタル弱いな~。
そうだ、ついでに次の禁術機に関する情報も聞いておくか?
その話題を振れば、レイドも意識がそっちに向くだろうし。
「レイド。さっそく、教えて欲しいことがあるんだけど……。他の禁術機は、何処の場所にあるんだ?」
俺がそう聞くと。レイドは、少し困ったような顔をした。
ん? レイドのこういう表情は珍しいな。
なんか、問題でもあったのか?
「実は……。一切、禁術機の磁気を捉えることが出来ないようだ」
「えっ? マジか。じゃあ、その情報待ちって感じか?」
すると、レイドが懐から何かを取り出した。
「いや、今回からは俺が直接探す方が早くなるだろう。その頼んだ者達でも探せない距離というならば、ここからだと一年程かかるような場所に、禁術機があると考えて良い。だから、これを貸してもらった」
「んん? それ、磁石、か……?」
レイドは、U字の磁石のようなものを俺に見せてきた。
「これは、前に話した禁術機を探す機械だ」
えっ? 機械じゃなくね……? それ、磁石だろ?
俺、もっとでっかい機械みたいなの、想像してたんだけど。
「え、え~と……。それを使うって、どうやって?」
「普段は、この形だが。禁術機の磁気を捉えると、円状になり、そこの場所まで案内してくれる」
へぇ~。なんだか、面白い機能だな!
これを使って。あの忍者の格好した人は、禁術機のある場所を探してくれてたのか。
探す方法は入手したけど。一年程もかかる場所にある、禁術機を探す方法って……空間魔法だよな?
それを使うと、魔力の消費が激しいって前に言ってたから。きっと、何度も使えないんじゃ……?
「レイド、探すのって空間魔法を使うよな? 大丈夫なのか?」
「実は、場所の目星はついている。ここ最近になり、頻繁に事件が多発している国がある。まずは、そこへ向かおう。街に着いたら、情報収集から始めなければならないが……」
おお~! レイド、よく調べてるな~。
ん? いや、マジで……。いつ、情報収集してんだ?
俺、いつも一緒にいるけど……。そんな素振り、一切見かけなかったぞ?
ん~……。まあ、古代魔術師っていうくらいだから。普通の人とは、出来が違うんだろうな。うん、そういうことにしておこう。
随分と長居してしまったのを、ヒョロ兄さんに詫び。俺達は、魔術塔を後にした――――。
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