ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの?

未知 道

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58.責任重大なこと

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「……もしかして、そのうち空気にも淀みが出て来るってことか?」
『そうじゃ。近い未来、空気中に瘴気が立ち込め……人の住める星――いや、どんな者すらも住める星じゃなくなるじゃろうな。勿論、ワシらも例外ではない』

 俺の言葉を、炎竜はハッキリと肯定し。首を振り、ため息を吐いている。
 その様子から、このままいけば。確実に世界が死に、世界にいる者達も一緒に死ぬ……ということなのだろう――。


「炎竜、何か手立てはあったりしないか? なんでも良いから、教えて欲しい」
『……。それは、主の可能性にかけるしかないの』

 俺の可能性……?

『主、忘れておるのか? 主も、ダンジョンの核じゃろう?』
「あっ! そ、そうか!! ……え? どうすれば、良いんだ? 世界の循環、したことないから分からないんだけど――……あぁ、でも、仮に土の清浄は出来たとしてもさ……。光粒の花が枯れ果てたなら、空気の清浄は出来ない、よな?」


 ――俺が言い終わるや否や。炎竜が面白い、というように笑った。


「……え? な、なんだよ? 俺、何か面白いこと言ったか?」
『いや、いや、循環のことが分からないことは、仕方ないけどの~。主、光粒の花は……ここにたくさん咲いておるじゃろ?』
「へ? ここに?」

 キョロキョロと周りを見渡すと。変な花が咲き乱れている、いつもの風景が目に入った。

「え? まさか、この花……?」
『さよう、これが光粒の花じゃよ』

 マジで? あ、でも、そうか。青い鳥と毛玉達は、光粒の種を運んだりする役割があるんだっけ?
 ここは、咲きやすいって判断されたってことか……?

「レイドに、色や形が一定してないって聞いてたから……分からなかったわ」
『それはの、世界が歪んだことによる副作用じゃろうな。本来は、こんな形じゃ』

 へ~。世界が仕組みを変えたことで、変異までしちゃったんか――って、……ん? 炎竜はなんで、それらを見たかのように細かく知っているんだろ?

 火山のところにずっと居たって言ってたよな?

「なあ、炎竜って、ずっと火山のところにいたんだよな? なんで、こんな詳細まで分かるんだ?」
『ああ、それはの……』

 炎竜は、モゴモゴと口を閉じたり開いたりしていて、どこか言いづらそうにしている。

「……? 炎竜?」
『……ワシがこの世に生まれたのは、今から1億五千年前くらいじゃ。まだ、人間が存在する前から存在しておる』

 スゲー、そんな前から……。まぁ、そんな長く生きてるなら、確かに知ってるか。
 でも……。炎竜は、なんでそんなに悔やんでいるようなんだ?

 一瞬、その理由を聞こうかと思ったが。ずかずかと人の事情に踏み込むのもどうかと思い、聞くのを止めた。


「そうか、そんなに前からいたなら。この世界のことを理解してるよな」
『……実は、それだけじゃないんじゃ。ワシは、自然から生まれたと言ったじゃろう? だから、この世界と同期し状況を把握することを、本当はいつでも出来た。じゃが、ワシはそれを……ずっと放棄してきたんじゃ』
「え……?」

 世界と同期って、そんなことを炎竜は出来たのか? それを行っていない俺には、『同期する』という状態がいまいち分からないが……。

『唯一、こうなるのを回避出来る力を持っていたのにも関わらず。ワシは、これら全ての事から目を背け、知ろうともしてこなかったんじゃ。ここまでの状況になったのは、ワシの責任でもあるじゃろうな……』


 炎竜は、心底後悔しているように、苦し気な様子で話している。けど、世界がこうなってしまったのは、炎竜のせいではないだろう……――。


「この状況は、人間の欲が生み出してしまったと思うんだ。だから、炎竜のせいじゃないだろ?」
『主……』


 俺が、実際に見聞きしたことだけでも。この世界の人間達の殆どが、自分達の見栄のために、奪う必要もない命を犠牲にしていた。

 だから、懺悔するのは炎竜じゃなく。それらをずっとしてきた人間達だ。

 そう、人間のせいなんだ。だけど――。


「炎竜、教えてくれ。どうすれば、核としての力を使うことが出来るんだ?」


 街の悲惨な光景を見てしまってから、あれが頭から離れない。

 それに、炎竜の話の通りなら……。

 原因を作った人間だけで無く。ここにいる炎竜や青い鳥、毛玉達――そして、レイドだって。この星の、全ての命が消えてしまう。


 もし、現状を俺が打開出来るなら。それを何がなんでも、成し遂げなければ――――。


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