ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの?

未知 道

文字の大きさ
92 / 147

92.鏡写しな人物

しおりを挟む
 


「――んだ。……俺は、失敗してしまったんだ。……俺は、失敗してしまったんだ」

 レイドは『失敗してしまった』と、繰り返し言葉を発している。

「おい! レイドっ!! 俺は、ここにいるっ! 失敗なんかしてないぞ!!」

 レイドの肩に触れようとし――バチンッと、何かに弾かれる。

「はぁ!? な、なんだ……これ?」

 レイドの周りに、透明な壁があるかのように。何度触れようとしても、それに弾かれてしまう。
 試しに魔法を撃っても、同じく弾かれた。


「ど、どうすりゃいいんだ? レイド、俺の声が聞こえてないみたいだし……。まさか、これって……黒の禁術機の能力か? 苦しい記憶を見せるとか聞いてたのに……これって、一体――」
『ん~、それってさ……憶測だよな? だって、万全な力を持ってた状態の、黒い禁術機の術にかかって生き残った人達っていないだろ? だから、苦しい記憶のままで固定。または、事実を最悪なものにねじ曲げたりして、悪夢の続きを見せるんじゃないか? 多分だけど、全ての禁術機には何かしらの隠された力があって……その力は弱体化や破壊していても絶対に解析出来ないもの! みたいなさ~』
「……ああっ! そうか!! だったら、この状況は納得だ。絶対おかしいからな、こんなじょ……――ぁああ? へ……?」

 ん? あれ? 俺、誰と話して……?

 バッと振り返る。
 ――鏡写しのように俺そっくりな人物が、ニッコリと笑って近くに立っていた。

「……ええっ!? お、俺ぇ?」
『やぁ! やぁ! ――初めまして、俺!』


 目の前の人物は、シュパッ! と手を上げ。まるで親しい友に会ったかのように、明るく俺に挨拶をした。



 ********


「え~と、じゃあ……。そのヤツィルダが消える時に、意識だけがレイドの中に入った状態……ってことか?」
『そう、そう! とはいっても、ヤマダと共鳴して俺が浮き彫りになったから、別にず~~っとレイドの私生活見てたわけじゃないぞ! レイドがヤマダと一緒にいない時は、俺の意識は眠ってるんだ。ほらっ! ヤマダの魂が、前世の記憶を呼び覚ます、みたいな? あくまでも、魂の無い意識だけの存在だからな~! なんか、俺って凄くない? あははははっ!!』

 色々とややこしいから、お互いに【ヤツィルダ】と【ヤマダ】で呼び合うようにし。今の状態を打開出来る可能性のある、ヤツィルダと会話をすることにした。

 ヤツィルダは転生したのに、何故ここにいるかというと――『レイドに、最後の言葉を言えなかったことが心残りだったのかもしれないな~?』と言っていて。自分でも良く分かっていないようだった。

「ん~? 俺は、前の世界での記憶が強いからか……。それが、どう凄いのかがさっぱりなんだよな~」

 ヤツィルダが、首を傾げて。ああっ! という声を出した。

『そうか、ヤマダは前の記憶を持ったままだもんな~! そっちの世界には、そっちの常識があるかもなんだけど……。ヤマダは、元々こっちの人間の魂だし。輪廻もこっち側の流れだと思うから、一応、教えとくな? まあ、あくまでも語り継がれてる話だから……話半分で聞いてくれ』
「お、おお!」

 なんだか、自分にそっくりな姿の人に教えられるのって、不思議な気分になるな。

『そんなに難しく考えなくて良いんだけどな。魂が新しい生命に生まれる輪廻の道に流されているにつれて、記憶が洗われるんだ。だから、生まれ変わった時には前世での記憶は綺麗さっぱり消えてるってこと。ヤマダが前の世界でのことを覚えてるのも、その輪廻の流れに乗ってないからじゃないかな?』

 あ、こういう話は、前の世界でも聞いたことあったな。
 ただ、ヤツィルダが言っているように、語り継がれている程に常識としては言われていなかったけど……。

 それで、何でヤツィルダは自分が凄いって言ってたか。これを聞いて、何となく分かった。

「じゃあ、ヤツィルダが自分が凄いってのは。普通は消えてしまう、前世の意識ある記憶を、現世に落としていったからってことか?」
『ご名答! 通常じゃ、あり得ないんだけど、よく考えてみたら。俺って禁術機によって死んだし、そういうのも関係あるのかもな~』

 ヤツィルダは、レイドの方へスッと視線を向け。直ぐに顔を伏せてしまった。

『――さっき言ったように、レイドに言葉を伝えられなかったってのもそうだけどさ……。あんな状態のレイドを、残していくのも。スゲー嫌だな、とも思ったんだよな……』
「ヤツィルダ……」

 次は、俺がレイドに視線を向けると――悲痛な表情を浮かべ、ボロボロと涙を流している様子が目に映る。

『ヤマダも何となく気がついているかもだけど、レイドって人の名前をあまり呼ばないだろ?』
「あ、うん……そうだな」

 レイドと知り合ってから、今までで。更には、過去の記憶を見ても。数えられるくらいの一部の人間しか、名前を呼ぶことをしていなかった。

『あれって、レイドなりの防御本能だと思うんだ。ほら、極級魔術師って長い年月を生きるだろ? だから、この世界にいる殆どの人は自分よりもどんどん先に死んでいく……。それで、親しくしている人に対しても、多少の壁を作ることで……悲しさを軽減しようとしてたんじゃないかな?』
「そう、か……」


 黒の禁術機の動きが分からずに、ダンジョンの中で待っていた時。話の流れで、レイドから教えもらったことがある。魔術師の寿命についてだ。

 低級から強級までは、80~100年

 最級は、300~500年

 極級は、3000~5000年

 と言っていた。けど、俺には関係ない話だからと、聞き流すようにしていたんだ。――あの時、レイドはどんな顔をしていただろうか……?

 その時、ちゃんとレイドの顔を見ていなかったから……分からない。


 すると、急にヤツィルダがズイッと顔を寄せて来て。だからさ! と何やら興奮したかのように言った。

『もし、レイドが俺の名前を覚えて無かったら……。マジで、どうでもいい人間確定ってことじゃん? だって、同じくらいの時を生きるんだぞ!? しかも、けっこう長い年数一緒にいたのに、もしそうだったら……。流石に、悲しいだろ~~?』
「あ~、それは確かに悲しくなるな……。だから確認の為にも、レイドに名前を言って欲しいって言ったんだ?」

『……――まぁ、うん。そうなるのかな……』
「……?」

 何故か、ヤツィルダは戸惑ったような表情を浮かべていた。

「ヤツィ――」
『さぁ~てっ! そろそろ、レイドの目を醒ますか~~!!』

 ん? レイドの目を、醒ます……?

「え? どういうこと……?」
『うん? だから、この邪魔な壁みたいなのを消すからさ! ちょ~っと、待っててな~~?』

 ワキワキと手を動かすヤツィルダを、俺は半目で見る。

「おい~? 何で早くソレ、してくれなかったんだよ?」
『えぇ~? だってさ! 俺、ずっとずっと誰とも話せなかったんだぜ? 話したいだろ!? 少しくらいはさ~!!』

 プゥーと、頬っぺたを膨らましたヤツィルダを……。俺は、半目を飛び越え、棒のような目になって見た。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

転生×召喚

135
BL
大加賀秋都は生徒会メンバーに断罪されている最中に生徒会メンバーたちと異世界召喚されてしまった。 周りは生徒会メンバーの愛し子を聖女だとはやし立てている。 これはオマケの子イベント?! 既に転生して自分の立ち位置をぼんやり把握していた秋都はその場から逃げて、悠々自適な農村ライフを送ることにした―…。 主人公総受けです、ご注意ください。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処理中です...