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91.見学のような探索

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 1階は、広間のような広い空間がある場所だった。

 過去のレイドが、あの森に向かう前に魔術塔の皆が集まっていたところだと思う。


 辺りを確認してみると――。
 エレベーターみたいなものや、階段みたいな、魔術塔内から移動する手段もあるようだった。


 レイドの過去を見た時、建物内を移動している光景もあったから、もしやとは思っていたけど……凄い細かく設計されているな。

 ここに何度か来た時は、扉から直接飛んでたってのもあって分からなかった。
 でもよく考えると、移動手段がそれだけだと不便なところもあるし、面白味にも欠けるからそうしたんか……?


 広間をぐるりと歩く。
 ここにも、人の骨らしきものが無数に散らばっていた。


 何だ? 何で、ここの中にも……?


 その骨達は、汚れて穴だらけになったローブのようなものを纏っている。

 これも、レイドの過去で何度も見たことがあった――魔術塔の人達が着ていた制服だ。


 それから、1階を色々と見て回っても骨だけが存在を主張し、それ以外の変化は無い。
 だから、俺は次の階へ進んだ――――。



 2階――食堂

 煌びやかで高級感漂うような場所や、ファミレスみたいな庶民的な場所、古風な雰囲気のある場所など。
 バリエーション豊富な、むしろ食堂というよりも、デパートのレストランのようにお店が並んでいる。

 3階――会議室

 前に、初めて来た時に入った会議室のような場所で、大きな長テーブルと、椅子がたくさん並べられている簡素なところ。

 4階――科学室・考察

 何やら、良く分からない構想のようなものが書かれた紙が、高くに積み上げられていた。

 5階――科学室・研究

 ユーホーキャッチャーのような形をした大きな機械が設置されていたり、ミシンのような形をした小さな機械が置いてあった。

 6階――科学室・製作

 いくつもあるテーブルの上に、何かのパーツが散り散りに散乱し。途中まで作られている機械のような物が大量にある。

 7階――寮

 部屋番号などがつけられた、何処かのホテルかのような綺麗な空間。
 他のところと違い、その長い廊下の先には――皆でゲームをするような場所、お茶を飲むカフェのような場所、棚が並べられ様々な本が置かれているような場所、多くの植物が植えられている植物園のような場所、豊富なお酒が置かれたバーのような場所があった。


 1階から6階まではメインのような場所は分かりやすく大きな扉になっていたが。その他にも小さな部屋があり、そこには物置とか、ちょっとした休憩場所のような所があったりもした。

 恐らくは、その階で作業している人達の為に作られているのかもしれない。

 ただ7階だけは、個人的な憩いの場のように見えた。



「何だか、ただの見学みたいになっちゃってるよな? 8階で最後なんだけど……。ここでもなかったら、マジでどうしよ」


 確認してみたら、全ての扉の取っ手から各階に飛ぶことは出来るみたいだけど……。どれが現実に戻るきっかけになるかが分からないから、俺は全ての場所を見ていった。
 結局は、戻るきっかけを見つけられなかったが。でも、どこの場所であっても共通していることは見つけた。

 それは、何となく予想をつけてはいたけれど……床一面に骨が散らばっていることだ。



「はぁ~……。なんで、こんな状態なんだ? ん……? あっ! ちょうど良かった、あそこから上の階に上がれるな」


 ――近くに階段があったので、自分の足で8階まで上って行く。


「この階は……。奥の方に1つだけ扉があるのか。なんか、随分と豪華で立派な扉だな。他のとこより2倍はあるみたいだ」


 7階だけ異質な空間だったが、ここも少し変わった所なのか……?

 少し長い廊下を歩き。その大きな扉の取っ手を掴んで、手前に引く――。


「あれ? ここ……」


 ここは、レイドがよく居た――【塔主の間】といわれている部屋であった。

 そうか、そういや……まだここには来てなかったもんな――。


「――した――……れはしっ――――たんだ」


「……? これは、話し声……か?」


 どこだろうと、周りを見渡す。
 すると、その声はソファーの近くから発せられているようだ。

 しかし、ただソファーが見えるだけだった。


「ん~? なんだ? ラジオみたいな何かか……?」

 未だに、この世界を詳しくは分からないけど……。あんなに精密な機械とかを作ってるから、そういう物とかもありそうだもんな。

 扉から見ると後ろ向きであるソファーの、座る部分の方に回った――――。


「――え……?」


 死角になっていた場所に、レイドがいた。
 しかし、その様子は正気ではなく――力無く床に座り込み、腕には人骨を抱えていて、ぼんやりとした表情で何かをぶつぶつと話していた。


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