ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの?

未知 道

文字の大きさ
128 / 147

127.〖炎竜〗現在(終)

しおりを挟む
 


 ※『126.〖炎竜〗現在(終)』をご覧になった方へ。
 一話の長さと見やすさを考えて、分割しました。内容は変えていないので、飛ばして次の話からお読みになって大丈夫です。



 ----------------


 話し終え。2人に視線を向けると――主は目を赤くし、レイドは顔を歪めていた。

『そのような顔をしなくてもよい。もう、過ぎた過去のこと……。後悔はしても、その事実を変えることは、絶対に出来ぬからの……――それに、2人には謝らなくてはならん』
「な、なにを……?」

 主は鼻を啜りながら、首を傾げ。レイドは、下を向き黙っている。

『ワシは……。山へ訪れた主を、突っぱね続けたじゃろ? それのせいで、2人に酷く苦しい思いをさせてしまったのだと思うのじゃ……。もし、あの当時。主に着いていくことで、火山から出て。それで、世界の状態に早く気がついておれば……。ワシじゃったら、核達を守ることが可能だったかも知れぬからの……』

 ワシは、もう人とは関わりたくない……と意固地になり。山に訪れた主とも、しっかりと向き合うことはしなかった。

 だが、主と接しているうちに、過去の友を思い出し。その当初から、一緒に過ごすのが楽しいと思ってはいたのだ。

 しかし結局は、主の申し出を断わり続けた。
 けれど、主が一切訪れなくなったことで。ワシは心配で心配で、いてもたってもいられなくなり……――。

 主が居を構えている国を、以前に聞いていたのでそこに向かった――すると、主が亡くなったことを知ることとなったのだ。

 そして……。セルディアと、魂の基柱の色が同じ、レイドの存在にも気がつき。酷い脱力感に襲われた。

 それは、セルディアと似ているところが一つもない……全くの別人になっていたからだ。

 人間を観察したことで、以前からそのことに関しては分かっていたのに。もう二度と……。あの2人や、主にも会うことは出来ないのだと。実際に、それを自分と関わりの深い、人間の魂で再確認し。もう、全てがどうでも良くなってしまった。

【禁術機】といわれる存在が生まれたということも、その時に知ったが。ワシには関係のないことだと、見て見ぬ振りをし……。再び、火山へと戻ったのだ。

 ただ心のどこかでは、まだ期待を捨て切れていなかったのだと……。禁術機の術にかけられたことで、それに気付かされたのだが――――。


「いや、炎竜は俺を突っぱねてはいないだろ? 俺が、山をずっとウロウロしてたら。見かねて術を解いて、姿も現してくれたじゃんか。それこそ、知らんぷりすりゃ良かったのにさ。あの時は、ありがとな!」

 主は、その時を思い出したのか。嬉しそうに笑みを浮かべていた。

「それにさ、苦しい思いをしたのは……。俺よりも、レイドだからな。世界の歪みだって、炎竜の責任でも何でもないだろ? だって、そうなった原因は……。人間のせいだったんだ。俺達が、もっと早くに気が付くべきだった……」
『主……』

 眉をギュッと寄せ――主はそれに関して、非常に後悔しているようだった。

「――確かに、苦しい思いはしたが……。だからと言って、何故、それが炎竜の責任になるというんだ? ヤツの言う通り。その業を背負うべきは、炎竜ではなく……人間だ」

 レイドも、顔をしかめ。主と同じような、後悔の表情を浮かべている。

 2人にそんな顔をされたら、謝るに謝れなくなってしまうではないか……。

 けど、話をしたからか。なんだか心が軽くなったような気がする――。


『ホッホッホッホッ!! なんじゃ? なんじゃ? 懺悔大会のようになってしまっておるの~? 湿っぽい話は、これで終いじゃっ! 話を聞いてくれて、ありがとの~! すっきりしたわい!!』


 ワシが盛大に笑い出したからか。主とレイドは互いの顔を見合せ、苦笑していた。


 ――その後、いつの間にか。各地のご当地グルメの話とか、観光スポットの話などに話題が変わった。


『今度『甘い竹焼きさん』というものを持って来るから、楽しみにしていての~!』
「甘い竹焼きさん? 変な名前だな……」
「はははっ! なにそれ、まじウケる~! めちゃくちゃ楽しみにしてるな~!!」

 レイドは面白い物を想像したのか、目を細めてクスリと笑い。
 主に至っては、ツボに入ったのか大爆笑している。

『主、笑い過ぎて腹がよじれてしまうぞ~?』

 それから少しして。主は、なんとか笑いを収められたようだ。

「――なあ、炎竜。お願いがあるんだけどさ~……」
『ん? なんじゃ?』

 ――主は、間を置き。『主』と言うのを、止めて欲しいと言った。

『では、何と呼べば良いかの?』
「『ヤツ』って、呼んで欲しい」

 次は、ワシが笑ってしまった。

『ホッホッホッ! それは、レイドが呼んでいる呼び名じゃろう? 流石に、ワシがそう呼ぶのはの~? そんなこと言うと、レイドに怒られてしまうのでは――』
「俺達を『大事な友』と思ってくれている炎竜には、そんな事で怒りはしない」

 ワシの言葉を遮るように、レイドは涼しげな顔でそう言っていて――。

 心の内を言い当てられ。呆然と、レイドの顔を凝視した。

「あっ! レイドも、気づいてたんだな? ――炎竜、あの言葉に詰まってた時に……『大事な友』って言おうとしただろ?」
『な、何故……そう思ったのじゃ?』

 主は、キョトンとし――。

「え? だって……。炎竜が『同士』って言う時、あまりにも視線が泳いでいたし……。その2人、セルディアとレイナの話をしていた時の炎竜の目がさ――俺達に向けてた目とそっくりだったから、流石に分かるよ」

 ああ、そうだったんか……。ワシは意識せずとも、2人をそのように見ておったのじゃな。

『――そうじゃな……。ワシは何時からか、そう思っていたようじゃ』
「じゃっ! 決まりな! 今度からは、ちゃんと『ヤツ』って呼んでくれよ~? 正直、『主』って言われてるの、ずっと恥ずかしかったから良かったーー!!」
「確かに、『主』と呼ばれるのは恥ずかしいな……」

 ヤツとレイドは、気持ちを共感しているのか、2人でウンウンと頷いていた。


 2人をぼぅと眺めていたら――その姿が、セルディアとレイナであるように見えた。
 それは、瞬く間にヤツとレイドの姿に戻ったが……。確かに、ワシの目にはそう映った。

 そして……『再び、2人に逢うことが出来たのだ』と。その言葉が、ストンと胸に落ちてくる。

 それは確証もないことなのに、これこそが正解であるのだと……不思議とそう思えた――――。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? 夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)は、見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良ワーウルフの悪友(同級生)まで……なぜかイケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、異世界学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

処理中です...