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しおりを挟むあれから和紗とちゃんと話し合い、何回か面会した後――保護施設の人が、もう問題ないと判断し。俺は日常に戻ることが出来た。
ただもし、また同じようなことがあれば接触禁止にすると、和紗にキツく言ってはいた。
それで俺の行きつけの病院は、和紗の叔父が経営していたようで。
和紗が『彰が、筋肉をつけたいって言ってるから、オメガでも使用出来る筋肉増幅剤を処方してくれ』とお願いして貰っていたと聞いた。
なら、病院の方からも一言あっていいだろと思ったが……。診察していたのはそう頼まれた和紗の叔父じゃないし、病院側はわざわざそんなことを言う必要がないと判断していたのかもしれない――。
「彰、まだ……駄目?」
「ん~、お互いまだ大学生だろ? もうちょっと、色々な地盤を固めてからのが――」
「大丈夫! 俺が経営してる事業、かなり儲かってるから経済的な心配は無いんだ。彰が将来、仕事したいなら番として全力でサポートするし!」
「はぁ!? 経営だって? いつ経営してたんだよ?」
普通過ぎて、そんなことしてるなんて知らなかった。
「まぁ、パソコンから出来るやつだけどね。それで……駄目、かな?」
「ああ……。番なぁ~」
和紗とは、既に家族のように過ごしてきた。
だから番になろうと言われても、実感がわかない。
「……近いうちに、答え聞かせて」
落ち込んだ様子の和紗は静かに立ち上がり、キッチンの方に向かっていった。
「あ~、なんか……。うだうだしてる自分、すげぇ嫌いだ」
俺は洗面所のところに行き。顔を洗ってから、鏡に映る姿をまじまじと見る。
「あっ! あの先生が言ってた通りだな。めっちゃ、筋肉落ちてる」
盛り上がっていた筋肉が落ち、すらりとした身体になっていた。
――あれから、ふた月が経っていた。
以前勤めていたバイトは、もともと助っ人として余分に入ったものだからか……。事情を話し、当分の間は休みたいと伝えたら――『いつ戻るか、時期が分からないなら辞めて欲しい』と言われ、今はバイトをしていなかった。
「オメガっぽくなったな……」
また、新しいバイトを探そうかと思っていたが……。この姿なら、ちゃんとオメガとして見られるかも?
だから和紗は、俺を早く番にしたいのかもしれない。
「――もし、和紗と番にならないなら……。お互いに他の誰かと付き合ったり、番になるかもしれないんだよな……」
一度もそういうことがなく、考えたこともなかったが……。もし、和紗に恋人が出来たとしたら――。
考えただけでも、胸が切り裂かれたような気持ちになった。和紗は俺のなんだと、奪い返したくなる。
ずっと隣で、俺だけにその笑顔を向けていて欲しい。
「……なんだ、これって両想いじゃん」
あまりに近すぎて分からなかったけど、俺が和紗に向ける感情は、好きだからこそ湧き上がる独占したい気持ちに他ならなかった。
♢◆♢
「あれ、ご飯作ってくれたんだ?」
シャワーを浴びて戻ると、テーブルに食事が並べてあった。
「うん。……大丈夫、薬とか入れてないよ」
「いや、今さら心配してねぇし。毎回言わなくていいよ」
帰ってからというものの、いつものように和紗は俺に食事を作ってくれた。
当初は確かに、食べるか迷った。けど、せっかく俺のために作ってくれた食事を無視して帰ることは出来ず、恐る恐る食べていた。
この身体の変化から、もうなにかをしていないことが分かる。だから、もう一度だけ信じようと思えた――。
食事が終わり、片付けをしている最中。和紗に話し掛けた。
「ん? どうした?」
「あ、のさ……。あっ、これを片付けてから言うよ」
和紗が皿を洗い、俺が水気を拭いて棚にしまっていく――。
カチャンと最後の皿をしまってから、口を開いた。
「お、俺も……。和紗と番になりたいと思ってる」
言ってから急に恥ずかしくなり、パッと下を向く。
シン……と室内が静まり返る。
黙り込む和紗が、何を考えているのか不安になったが――ガバリと強く抱き締められ、嬉しそうに「やった、やった!」と和紗が喜ぶ声を上げた。
「彰、大事にする。愛してる、愛してる」
「……うっ、うん……!」
ホッと顔を上げると――チュッとキスをされて、それが深くなっていく。
脚に力が入らなくなり、カクッと膝が折れた瞬間に抱き上げられて、寝室に連れて行かれた。
「全部、俺に任せて――」
ぶわりと、和紗のフェロモンに包まれ。その甘いのにさっぱりした和紗の匂いに酔ってしまう。
「ふ、はっ、ぁああっ……! ま、まって、強……っ、強い……っ!」
和紗のアルファとしてのランクは、トップクラスだ。俺のオメガのランクは、中の下くらいに位置している。
だから、そんな強力なアルファからの大量なフェロモンを浴びせられて、耐えられるはずがない。
「うん……。大丈夫、大丈夫だよ。一緒に、気持ち良くなろうね」
非常に多くのフェロモンを吸い込み、意識が飛び飛びになる――。
「――はははっ、やっと……――運命なん―――絶対、俺の……――――」
「はぁっ、ああっ……あっ、あふ、ぁあ……」
気付いたら、視界が揺れていて。首輪も外れていた。
オメガの首輪には番号が付けられていて、その番号は首輪を付けているオメガしか知らない。だから、意識が飛んでいるうちに俺が和紗に教えたのだろう。
「はっ、はっ、か、和紗、和紗ぁ……! 好き、好き……和紗っ、……好き……っ!」
「ああ、彰……。俺も……愛してる。一生、俺が大事にするよ……――」
身体の中にある熱が弾け――首の後ろがカッと熱くなった。
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