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2.管澤 光輝
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――――
「すまない、光樹。すまない……」
「会社のためなのよ。本当に、ごめんなさいね」
「……は、はぁ?」
父さんと母さんが、俺に何度も謝罪する。
一体なにがなんだか分からず、終始ポカンとしたままガタイの良い男達にズルズルと引きずられるように歩かされた。
車に乗せられそうになってやっと思考が働き、逃れようと抵抗した。
だが屈強な体をした男達から逃げられるわけもなく、しかも一、二発殴られたことで恐怖から抵抗を止めた。
恐怖感からか、正確な時間は分からないが……恐らくは十数分程で車が止められた。
すぐに車から引きずり出されて、大きな豪邸の中に首根っこを掴まれて歩かされる。
質の良い高価な装飾がふんだんに使われているから、見た目通りにお金持ちの家のようだった。
けど、なんでこんな場所に自分が連れてこられたのかと不安と恐怖で足が震えてしまい、何度も膝の力が抜ける。
その度に平手打ちをされるから顔が痛くて熱くて、涙がボロボロと溢れ出ていた。
――突如、大きな扉の中に放り込まれる。
「……ッ、いっ、た……!」
受け身をとれず、肩を強く打ち付けた。
肩を押さえて蹲る。
「――随分と、うちのが手荒な迎えをしたようだな」
「……え?」
その声は――満?
地面を見たまま動けなくなった。
なんで、満の声が……? とか、聞き間違えか……? などと、ぐるぐると思考を巡らす。
けど、『確認したくない』といった思いから、一向に顔を上げられなかった。
「なんだ、さっさと顔を上げたらどうだ? 5年ぶりの再会なんだからな。それとも、合わせる顔がないってか?」
「…………」
やっぱり、満なのか……と身体が冷える。
どうやったのか理由は分からないが、満がこの状況を作り出したということだろう。
グッと髪を掴まれ、無理やり顔を上げられる。
じわりと再び涙が溢れ出る。
「ぅうっ!」
パチパチと瞬きをして涙を流し、視界をクリアにして――ひきつった声が出てしまった。
「…………なんだこれは」
冷たい顔――満は人間とは思えないくらいに表情が抜け落ちていて、恐ろしかった。
けど、同時にびっくりもした。
満だとは声や雰囲気からで分かるが、体格の良い美形になっていたからだ。
しかも、危うい色気のようなものが身体中から出ていて、非常に魅力的な男性になっている。
学生の頃は、髪がボサボサで猫背気味でもあったから、余計に野暮ったく見えていた。
こんなに人が変わるなんて……この5年で満に何があったのかと、驚きの変貌を遂げた満を凝視する。
俺が呆然としていると、満が俺の頬に触れてきてピリリとした鋭い痛みが走る。
「ぃっ……!」
ジンジンと熱を持っているから、たぶん腫れているかもしれない。
「――おい! これを連れてきた奴ら、どいつだ!」
ビリビリと響く怒声に、驚いて耳を押さえた。
――慌てたように扉が開き、先程の男達が入ってくる。
「はい! なにか――ぐぎゃっ!」
「ぎゃっ!!」
「ん? なにか、じゃねぇだろ? 誰が傷を負わせていいっつったんだよ? ぁ"あ"?」
ドコ、バキ、ゴキと、今まで生きてきて聞いたことがないような暴力的な音が耳に入ってくる。
ガクガクと全身が震える。
自分はいま何を見ているのか、これは夢ではないのかと――満がこんなことをしているのが……信じられない。
満は優しかった。少なくとも、俺が知っている満はそんな人間だった。
こんな普通に人を殴れるような、狂暴な性格ではなかったのに――。
恐怖が限界を越えたのだろう。ぐるりと視界が回り、目の前が真っ暗になった。
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