どうやら、自然消滅した元カレに復讐されるようだ

未知 道

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9.紀伊羅 満

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 作り物のように美しい男が、固く目を閉じピクリとも動かない。
 それを意味もなく見つめてから――「くそっ!」と舌打ちをする。

「ずっと、ずっと……俺のだ。そう、お前は一生……――俺の所有物に成り下がったんだ」

 光樹のモノに身体を貫かれ、不覚にも感じてしまった。
 しかも、光樹が迷いもせず俺の後孔を舐め、この身体の奥までマーキングするような行為をしてきて『嬉しい』とも思ってしまった。

 けど、それは絶対に許せないことでもあった。

 他の奴に入れたモノで貫かれたのだから――。

 付き合う前のことなら、仕方ないと思える。過去に戻ることは不可能だと諦めもつくからだ。
 けど、俺と付き合っているのに他の奴としたことは許せない。
 それは――俺よりも、他の奴が良いと言っているのと同じだ。

 ぶっ殺してやりたいと思った。
 光樹の精液を我が物顔で腹に飲み込み、ダラダラと垂れ流すクソ野郎を……。
 それは全部、俺のものだと腹を引き裂き、亡き者にしたくて堪らなかった。

 それでやっと認めた。
 俺は、ずっと嫌悪していたヤクザの血筋そのものだったのだと。

 俺の本質は、非常に凶暴なものであった――。

 だから、本当に殺してしまう前にその場から立ち去った。

 流石に、あの場で殺傷事件を起こしてしまえば、全てを隠し通すことは難しい。
 まずは、色々な準備が必要だと判断した。

 その日から、光樹を俺の手の内に入れるための準備を整えていった。

 ずっと嫌だと逃げていた親の裏稼業を積極的に手伝い、周囲に俺の力を認めさせた。

 光樹の父親の事業に圧力を掛けて経営を傾かせ、借金をチャラにする代わりに光樹を渡せと脅した。

 光樹とやっていたクソ野郎も、同じように借金のカタにさせ風俗に落とし、光樹の痕跡を少しも残さないためにたくさんの客を宛がったりした。
 あともう少ししたら、事故死として処理しようとも考えている。

 そう、全てが上手くいったはずだ。
 なのに、どうして……こんなに息が苦しいんだ。

「光樹、お前が裏切らなかったら……」

 ずっと、幸せな気持ちでいられた。

 ずっと、ずっと、好きだった人と恋仲になれて、身体も繋がって、一緒に過ごせて――

 一生、大事にしただろう。


 光樹は忘れているみたいだけど、光樹と俺は昔に会ったことがある。

 ちょうど、自分の家が他と違っていることに気付き、悩んでいた小学生の時期だ。

 皆からも一線引かれていて、普通じゃないのが嫌だった。
 普通の堅気として生きていきたい。でも、たまにカッとなる己の性格も知っているから、普通になれるかと悩みに悩んで苦しんだ。

 だから、同じ通学路でいつも明るく挨拶をしてくれる光樹に何気なくぼやいた。
 別にちゃんとした答えは求めてなくて、ただ誰かに聞いて欲しかった。
 あまり気にしなさそうな性格で、すぐに忘れるだろうとも思っていたから――。

 光樹は「え~なんで悩むんだよ? 両方試してみればいいじゃん! で、しっくりくる方で決定~! 人生を二種類も選べるなんてうらやましいな!」と本気で羨ましがっていた。

 最初は反発的な気持ちになった。
 羨ましいなら代われよとか、恵まれている奴は良いよなとか、人生舐めてるから分からないんだとか……――。

 けど暫くして、『両方試してみようかな』と思った。

 それは、ニコニコと純粋な笑みで言われた言葉がずっと忘れられなかったからだ。

 堅気として生きてみて、まず大変だったのが、周囲の奴らの纏わりつきだった。
 『将来、組を引っ張っていくのは坊っちゃんしかいない』と、顔を合わせる度に言われて鬱陶しかった。
 だから、敢えて冴えない装いや性格にしてみた。
 学校内でも監視を寄越しているようだから、四六時中そうしていると、失望したように離れていってくれた。
 堅気の生活はそれなりに楽しかったが、何故だが生きづらさを感じてはいた。

 それで、嫌悪や面倒な気持ちはあるけど、そろそろヤクザの方を試してみようかと思ったその時――光樹に再会した。

 再会してみて、自分が光樹を好きなのだと理解した。
 軽い挨拶しかせず一度話をしただけなのに、光樹と話すと声が裏返るほどに緊張した。
 きっと、恋をするのは大した理由なんかない。ただ好きになった……それだけのことだ――。


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