私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末

8

　グレイが治癒室から出て行くのを見送り、ソフィアは室内を見渡した。
　ほとんどの負傷者は治癒師達が対応している。自分の出番は今のところ無さそうだ。

（骨折二人と血管を繋いだから、急激に魔力が減って少しふらつくかも）

　ソフィアの魔力からすれば半分消費くらいか、だが重症者に対応すると急激に魔力が減るためふらつきが起こりやすい。

　グレイは部隊の中で一番魔力が高いのはアルフォンスだと言っていた。彼の部隊には他にも魔導騎士がいただろうか。
　駄目だ、頭が働かない。

　ビルの様子を気にしながらベッドサイドの椅子に腰掛ける。顔色は悪いが今は穏やかに眠っている。

（アルは無事なのかしら。デモンズハーピーの呪い…もしもアルが呪いをかけられたなら私の事を忘れてる？）

　どうなのだろうか。
　自分に関する一切の記憶が無くなって悲しいが、それだけ愛されていたという証拠だ。

（本当に厄介な呪いなのよね…記憶を忘れた後に本当に愛されていた事を知るなんて、悪夢でしかない）

　アルフォンスが呪いをかけられたかもしれないと心配し取り乱した事を反省する。
　そして魔力を奪われた可能性を考える。

（私はデモンズハーピーの呪いをかけられて魔力を奪われた人を知っている。もしも同じなら…）