惨劇は虚しく終わる・前日談

ENZYU

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惨劇は虚しく終わる・前日談

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僕、ステラートと彼女、キャロラインは両親同士が親しい間柄の幼なじみだった。
歳は10程は離れている。
小さい頃は兄として親しまれてよく一緒に遊んでいた覚えがあるが、中学生くらいの頃から彼女は引きこもりがちになってしまいなかなか会う機会がなかった。
何かあればとメールアドレスを渡しており、時折そこで連絡し合う事はあったので、完全に縁が切れた訳では無い。
僕は小さい頃から彼女に兄として慕われる事に誇りを持っており、心を開いて貰える事に優越感を感じていたので、彼女が僕にも会う事がなくなった時は正直不安に思ったけれど、彼女からただならぬ状態になっていた事もやんわりと話して貰ってからは心の底から安堵し、彼女の回復を願った。
無理やり明るくしようとしていた彼女からのメールも途絶え、ある日届いたメールにはこう書いてあった。

「私の願い事、聞いてくれる?」

内容としては、インターネット内で相当酷い扱いをされて大きく心の傷やショックを受けた彼女は心身をおかしくし、呼吸さえままならず、命の危機を感じたのに、それすらも面白おかしく馬鹿にされて限界を迎えた彼女は、相手に復讐を願わざるを得なくなったという形だった。
まるで小さな天使のようだった彼女は、久しぶりに会った際にはあまり笑わない大人しい子になっていたけれど、それはそれでとても美しかった。
でも、彼女の笑顔を無くした相手を思うと心の底から許せなかった。此方迄気が狂いそうな気持ちになり、どんな事でも全て応じて見せようと彼女の共犯者になる決意を固めるのは容易い事だった。
相手の正体を暴くし、彼女に必要な武器も用意するし、世間から着せられる罪は全て僕が背負おう。
気が狂ってしまった彼女の言動を加速させたのは僕だ。けれど、自由で破綻していても自分の思う幸せを追い求める彼女はやはり美しいのだ。
望むままに蛇を切り、どんな道理を説かれても彼女のしたい事なら成し遂げていい、なんだってやったって構わない。そのようにどんどん甘やかした。
自分に自信がなく、環境にも恵まれず、選択肢は何も無いと苦しんで、欲しい物を諦めるしかない無味な人生より余程価値がある。それに彼女は、無害な人間に危害を加えていいとは思っていないし、僕も彼女がそのようになってしまったら悲しいと思う。自分に暴力をふるってきたのに立派に幸せを掴もうとする相手は何がなんでも許さないし潰す。その絶対的な気持ちこそがより素晴らしく感じるのだ。

ああ、彼女か追い求める幸せが僕だと早く気づいて振り向いてくれないだろうか。
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