15 / 96
15話
しおりを挟む
「今回の事も、邪気に当たっただけではないのですよ」
「はあ」
松兵衛は、藤緒が酷く心配になった。
「松兵衛、心配しないで。幸いにも、お腹の子は元気なの」
そして、すぐに深刻な顔へと戻った。
「私は、今夜この子を産み、死ぬでしょう。この子を預かってくれる人を探したのですよ。村で小さな食堂を営むご夫婦。子が出来ず、悲しんでおられたのです。お家騒動に巻き込まれず、知らず、この子は育つ。恵慈家と私の家の血、本来の血筋は絶えず続く。これが、私の唯一出来ることなのです」
「藤緒様……」
「力無く、正室にすらなれなかった私ですけどね。法眼様のことは一番に考えているのですよ」
そして、藤緒は暗示した通り、女の子を産み、逝去した。
*****
晴明と葛葉は、正式に婚姻は結ばぬとも、夫婦として暮らしていた。誤解が解けた後、2人の仲は睦まじく。松兵衛の助けもあり、里も本来の姿を取り戻しつつあった。
やがて、晴明との約束通り、葛葉に子が宿った。
「男子だろうか、女子だろうか」
子が宿ってからは、晴明の口癖となった。
「晴明殿は、どちらがよろしいですか?」
「どちらでも、構わんよ。元気な子であれば」
1つ心配だった事。またその子が術が使えないのではないかと。
晴明は、松兵衛から説明を受けた。自分が鬼の子であるせいで、その姿を封じるために術が使えないと。云わば、血で血を封じているから術が使えないと。だが、それも葛葉の血と指南でなんとかクリアしたように思えた。
泰親も、あれ以来姿を見せていない。
そして、葛葉に陣痛が始まった。布団に寝て、産婆が待機し、いつでも子を産めるとなり、陣痛の間に少し安心したのか眠っていた。
その間、不思議な夢を見た。
真っ暗な空間がやがて眩しいくらいの光に包まれたと思ったら、目の前に七色に光る金色の龍が現れた。
「龍神か」
そして、葛葉は幼い頃松兵衛に聞いた話を思い出した。
「恵慈家の御先祖で守り神の龍神」
龍は静かに話し出した。
『葛葉、そなたは何故儂が恵慈家の先祖と言われるか知っておるか? そして、お主の正体を伝えに来たのだ』
「私の正体?」
龍は葛葉の頭上をぐるぐる回ると、ゆっくりと降りて、彼女の身体に巻きついた。
『そうじゃ。主は、儂じゃ。もう1人の儂なのじゃ』
「生まれ変わりと言うことか?」
『少し違うな。儂の魂の一部が変化してお主となったのだ。儂とお主は兄妹というやつかな』
見蕩れるほど、龍神が綺麗だと葛葉は思った。
『遥か昔の話だよ。儂は天に住んでいたのだけれど、天から覗く度毎日見かける娘に恋をした。踊りが上手いが、何処か悲しげな娘でな。毎日同じ時間、同じ場所で同じだけ独りで踊っているのだ。最初は踊りの練習だと思っていたのだが、毎日見る度に、そうでは無いことに気付いた。そこで、儂は1度地上に降りることを決めたのだ』
「もしや、その娘と言うのは」
『そうだ。そなたの母の一族の者だ。儂は青年の姿になって、娘の前に現れようとしたのだが、なんせ慣れぬ人の姿。海に落ちてしまったのだ。溺れ気を失っていたところを、娘が助けてくれた。結果、娘と会うことが出来た。心の優しい娘でな、傷が癒えるまで世話をしてくれた。そして、行く場所がないならとそれ以降も家に置いてくれたのだ。だが、やはり儂が気になったのは、いつも娘が哀しそうな顔をしている事。必ず踊りの前に、泣いている事。儂は娘に訊ねたのだ。何故、そんなに悲しそうなのか、と。すると娘は答えた。漁に出てから戻らぬ夫、すなわち恵慈家の男を待っているのだ、と。娘の住む土地の海は、特に荒々しい海であった。儂は天界に聞いてみた。娘の夫は既に海で亡くなり、生まれ変わっていると天は教えてくれたのだ。だから、その話を娘に告げた。娘は怒って儂の頬を打った』
「何故じゃ? 親切に教えてやっただけだというに」
『晴明が何の証拠もなく死んだと言われたら、葛葉はどうする?』
「あ」
そう、私だって打つだろうと葛葉は、気付いた。信じられない、不謹慎だと怒るだろう。もし、それを察していたとしてもだ。
『儂は、その娘にいつしか恋をしていたのだ。だから、娘の悲しみも怒りも辛く、天に帰る事を決めた。結ばれなかった娘の腹に、儂の魂を宿してな』
「それが、今の恵慈家の始まりか……」
『そうだ。そして、その血が危機にあることを知った儂は、同じように藤緒の身体に儂の魂を宿したのだ。それが、お主だ。お主に一生に1度しか使えぬ龍神の術を伝授する。封じ滅する技である。その名も生克五霊獣の法。いいか、一生に1度しか使えぬ技であるぞ。どんな鬼も悪霊も封じ滅する技である』
葛葉の頭に、法の理が直接書き込まれるように入ってきた。
「必ず必要になるのは、相生相克」
はっ!
っと、葛葉の目が覚めた。酷い陣痛だった。
やがて、葛葉の部屋から元気な産声がして、堪らず晴明は部屋に飛び込んだ。
「晴明様、殿方はまだお入りなっては困ります」
咄嗟に、侍女に目を塞がれ外に出されだ晴明であったが、再びそわそわしながら廊下で待った。
「晴明様、どうぞ」
侍女に改めて呼ばれ、今度は落ち着いて部屋に入ると綺麗に現れた子が産着に包まれながら泣いていた。
「元気な男子です」
「よう頑張ったな! 葛葉」
手の平におさまりそうな程小さい子を初めて抱いて、晴明の目から不思議と涙が溢れた。
「嫌ですわ、晴明殿。葛葉様に笑われますよ」
今は構わないとさえ思えた。
「名前は決めてあるのじゃ。蜃(しん)で、どうだ?」
「良い名前です」
見れば蜃の口元にもホクロがあった。凛々しい眉も、確かに我が子だと確信する。
めでたい日だった。
そのはず、だったのに。
その晩、富子の鏡が割れた。父、法眼が生命を掛けて封じたあの鏡が割れたのだ。
何者かが屋敷に入り、出産のゴタゴタに紛れて箱を盗み出し、中の鏡の封印を破った。
それに松兵衛が気付いたのは、翌朝の事であった。
部屋には無数の血痕。それは、箱に掛けてあった封印を無理矢理破った証拠であり、人でない証であった。
「泰親か……」
この数年、隠れていた間に力を蓄えていたようである。
再び災いが始まると、松兵衛は確信した。
*****
「遅い……遅い……待ちくたびれたぞ」
ミイラのような姿で、女はケタケタと笑う。富子だ。
封じの鏡から泰親に引き摺り出され、ボロ布のようになりながら2人して逃げた。里の森を抜け、人里近いそこにある古い祠に逃げ込んだ。
祠と言っても、人が入れる程度の大きさだ。中に祀られていたいくつかの地蔵は、今はない。
外の人間が時折口減らしに子を捨てにくる山道だった。村人に発見されない子は、ここで死んだ。運良く見つけられるように建てられた祠だった。その為、中は人が眠れるようになっていた。
背後に、恵慈家が見える。
富子の傍らに、同じようにボロ布のような姿の泰親がいた。
「泰親、今まで何をしておったのだ」
「この場で時を稼いでおったのだ。あの場で、私独りで勝てるとは思えませんでしたから。この時を待っておったのです。子を産んだ葛葉は、暫く使い物にならぬ」
「子を産んだと? 誰の子じゃ!!」
富子が発狂するように叫んだ。
「晴明との子じゃ」
富子が叫び狂った。森が揺れ、多くの動物が騒いだ。
「おのれ、あの小娘……許せぬ……」
そして、今度は嬉しそうに笑い声をあげた。
「だが、これもまた一興。その子をも、我が手に入れるのだ。この地と子を。恵慈家から全てを奪うのじゃ。我が子を奪われた恵慈家を、許すまじ!」
湯治場で、法眼が封じたのは富子にとり憑いた鬼と泰親にとり憑いた鬼の子であった。子を守るため、子との生活を送るため、あの場所を巣としたが法眼によって奪われた。だから、代わりに恵慈家の里を貰うことにしたのだ。まだ辛うじて残っていた2人の人間の魂と思いを利用して。しかし、その影も今はもう消えていない。喰らい尽くされた2人は、今やただの鬼である。
再び、鬼の邪気が里を覆いはじめていた。あの頃のように。
*****
「はあ」
松兵衛は、藤緒が酷く心配になった。
「松兵衛、心配しないで。幸いにも、お腹の子は元気なの」
そして、すぐに深刻な顔へと戻った。
「私は、今夜この子を産み、死ぬでしょう。この子を預かってくれる人を探したのですよ。村で小さな食堂を営むご夫婦。子が出来ず、悲しんでおられたのです。お家騒動に巻き込まれず、知らず、この子は育つ。恵慈家と私の家の血、本来の血筋は絶えず続く。これが、私の唯一出来ることなのです」
「藤緒様……」
「力無く、正室にすらなれなかった私ですけどね。法眼様のことは一番に考えているのですよ」
そして、藤緒は暗示した通り、女の子を産み、逝去した。
*****
晴明と葛葉は、正式に婚姻は結ばぬとも、夫婦として暮らしていた。誤解が解けた後、2人の仲は睦まじく。松兵衛の助けもあり、里も本来の姿を取り戻しつつあった。
やがて、晴明との約束通り、葛葉に子が宿った。
「男子だろうか、女子だろうか」
子が宿ってからは、晴明の口癖となった。
「晴明殿は、どちらがよろしいですか?」
「どちらでも、構わんよ。元気な子であれば」
1つ心配だった事。またその子が術が使えないのではないかと。
晴明は、松兵衛から説明を受けた。自分が鬼の子であるせいで、その姿を封じるために術が使えないと。云わば、血で血を封じているから術が使えないと。だが、それも葛葉の血と指南でなんとかクリアしたように思えた。
泰親も、あれ以来姿を見せていない。
そして、葛葉に陣痛が始まった。布団に寝て、産婆が待機し、いつでも子を産めるとなり、陣痛の間に少し安心したのか眠っていた。
その間、不思議な夢を見た。
真っ暗な空間がやがて眩しいくらいの光に包まれたと思ったら、目の前に七色に光る金色の龍が現れた。
「龍神か」
そして、葛葉は幼い頃松兵衛に聞いた話を思い出した。
「恵慈家の御先祖で守り神の龍神」
龍は静かに話し出した。
『葛葉、そなたは何故儂が恵慈家の先祖と言われるか知っておるか? そして、お主の正体を伝えに来たのだ』
「私の正体?」
龍は葛葉の頭上をぐるぐる回ると、ゆっくりと降りて、彼女の身体に巻きついた。
『そうじゃ。主は、儂じゃ。もう1人の儂なのじゃ』
「生まれ変わりと言うことか?」
『少し違うな。儂の魂の一部が変化してお主となったのだ。儂とお主は兄妹というやつかな』
見蕩れるほど、龍神が綺麗だと葛葉は思った。
『遥か昔の話だよ。儂は天に住んでいたのだけれど、天から覗く度毎日見かける娘に恋をした。踊りが上手いが、何処か悲しげな娘でな。毎日同じ時間、同じ場所で同じだけ独りで踊っているのだ。最初は踊りの練習だと思っていたのだが、毎日見る度に、そうでは無いことに気付いた。そこで、儂は1度地上に降りることを決めたのだ』
「もしや、その娘と言うのは」
『そうだ。そなたの母の一族の者だ。儂は青年の姿になって、娘の前に現れようとしたのだが、なんせ慣れぬ人の姿。海に落ちてしまったのだ。溺れ気を失っていたところを、娘が助けてくれた。結果、娘と会うことが出来た。心の優しい娘でな、傷が癒えるまで世話をしてくれた。そして、行く場所がないならとそれ以降も家に置いてくれたのだ。だが、やはり儂が気になったのは、いつも娘が哀しそうな顔をしている事。必ず踊りの前に、泣いている事。儂は娘に訊ねたのだ。何故、そんなに悲しそうなのか、と。すると娘は答えた。漁に出てから戻らぬ夫、すなわち恵慈家の男を待っているのだ、と。娘の住む土地の海は、特に荒々しい海であった。儂は天界に聞いてみた。娘の夫は既に海で亡くなり、生まれ変わっていると天は教えてくれたのだ。だから、その話を娘に告げた。娘は怒って儂の頬を打った』
「何故じゃ? 親切に教えてやっただけだというに」
『晴明が何の証拠もなく死んだと言われたら、葛葉はどうする?』
「あ」
そう、私だって打つだろうと葛葉は、気付いた。信じられない、不謹慎だと怒るだろう。もし、それを察していたとしてもだ。
『儂は、その娘にいつしか恋をしていたのだ。だから、娘の悲しみも怒りも辛く、天に帰る事を決めた。結ばれなかった娘の腹に、儂の魂を宿してな』
「それが、今の恵慈家の始まりか……」
『そうだ。そして、その血が危機にあることを知った儂は、同じように藤緒の身体に儂の魂を宿したのだ。それが、お主だ。お主に一生に1度しか使えぬ龍神の術を伝授する。封じ滅する技である。その名も生克五霊獣の法。いいか、一生に1度しか使えぬ技であるぞ。どんな鬼も悪霊も封じ滅する技である』
葛葉の頭に、法の理が直接書き込まれるように入ってきた。
「必ず必要になるのは、相生相克」
はっ!
っと、葛葉の目が覚めた。酷い陣痛だった。
やがて、葛葉の部屋から元気な産声がして、堪らず晴明は部屋に飛び込んだ。
「晴明様、殿方はまだお入りなっては困ります」
咄嗟に、侍女に目を塞がれ外に出されだ晴明であったが、再びそわそわしながら廊下で待った。
「晴明様、どうぞ」
侍女に改めて呼ばれ、今度は落ち着いて部屋に入ると綺麗に現れた子が産着に包まれながら泣いていた。
「元気な男子です」
「よう頑張ったな! 葛葉」
手の平におさまりそうな程小さい子を初めて抱いて、晴明の目から不思議と涙が溢れた。
「嫌ですわ、晴明殿。葛葉様に笑われますよ」
今は構わないとさえ思えた。
「名前は決めてあるのじゃ。蜃(しん)で、どうだ?」
「良い名前です」
見れば蜃の口元にもホクロがあった。凛々しい眉も、確かに我が子だと確信する。
めでたい日だった。
そのはず、だったのに。
その晩、富子の鏡が割れた。父、法眼が生命を掛けて封じたあの鏡が割れたのだ。
何者かが屋敷に入り、出産のゴタゴタに紛れて箱を盗み出し、中の鏡の封印を破った。
それに松兵衛が気付いたのは、翌朝の事であった。
部屋には無数の血痕。それは、箱に掛けてあった封印を無理矢理破った証拠であり、人でない証であった。
「泰親か……」
この数年、隠れていた間に力を蓄えていたようである。
再び災いが始まると、松兵衛は確信した。
*****
「遅い……遅い……待ちくたびれたぞ」
ミイラのような姿で、女はケタケタと笑う。富子だ。
封じの鏡から泰親に引き摺り出され、ボロ布のようになりながら2人して逃げた。里の森を抜け、人里近いそこにある古い祠に逃げ込んだ。
祠と言っても、人が入れる程度の大きさだ。中に祀られていたいくつかの地蔵は、今はない。
外の人間が時折口減らしに子を捨てにくる山道だった。村人に発見されない子は、ここで死んだ。運良く見つけられるように建てられた祠だった。その為、中は人が眠れるようになっていた。
背後に、恵慈家が見える。
富子の傍らに、同じようにボロ布のような姿の泰親がいた。
「泰親、今まで何をしておったのだ」
「この場で時を稼いでおったのだ。あの場で、私独りで勝てるとは思えませんでしたから。この時を待っておったのです。子を産んだ葛葉は、暫く使い物にならぬ」
「子を産んだと? 誰の子じゃ!!」
富子が発狂するように叫んだ。
「晴明との子じゃ」
富子が叫び狂った。森が揺れ、多くの動物が騒いだ。
「おのれ、あの小娘……許せぬ……」
そして、今度は嬉しそうに笑い声をあげた。
「だが、これもまた一興。その子をも、我が手に入れるのだ。この地と子を。恵慈家から全てを奪うのじゃ。我が子を奪われた恵慈家を、許すまじ!」
湯治場で、法眼が封じたのは富子にとり憑いた鬼と泰親にとり憑いた鬼の子であった。子を守るため、子との生活を送るため、あの場所を巣としたが法眼によって奪われた。だから、代わりに恵慈家の里を貰うことにしたのだ。まだ辛うじて残っていた2人の人間の魂と思いを利用して。しかし、その影も今はもう消えていない。喰らい尽くされた2人は、今やただの鬼である。
再び、鬼の邪気が里を覆いはじめていた。あの頃のように。
*****
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】『からくり長屋の事件帖 ~変わり発明家甚兵衛と江戸人情お助け娘お絹~』
月影 朔
歴史・時代
江戸の長屋から、奇妙な事件を解き明かす! 発明家と世話焼き娘の、笑えて泣ける人情捕物帖!
江戸、とある長屋に暮らすは、風変わりな男。
名を平賀甚兵衛。元武士だが堅苦しさを嫌い、町の発明家として奇妙なからくり作りに没頭している。作る道具は役立たずでも、彼の頭脳と観察眼は超一流。人付き合いは苦手だが、困った人は放っておけない不器用な男だ。
そんな甚兵衛の世話を焼くのは、隣に住む快活娘のお絹。仕立て屋で働き、誰からも好かれる彼女は、甚兵衛の才能を信じ、持ち前の明るさと人脈で町の様々な情報を集めてくる。
この凸凹コンビが立ち向かうのは、岡っ引きも首をひねる不可思議な事件の数々。盗まれた品が奇妙に戻る、摩訶不思議な悪戯が横行する…。甚兵衛はからくり知識と観察眼で、お絹は人情と情報網で、難事件の謎を解き明かしていく!
これは、痛快な謎解きでありながら、不器用な二人や長屋の人々の温かい交流、そして甚兵衛の隠された過去が織りなす人間ドラマの物語。
時には、発明品が意外な鍵となることも…?
笑いあり、涙あり、そして江戸を揺るがす大事件の予感も――。
からくり長屋で巻き起こる、江戸情緒あふれる事件帖、開幕!
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる