23 / 96
23話
しおりを挟む
「けれど、里を守るために諜報活動やら場合によっては暗殺やらもしているのだろう。やっぱり、忍びではないか」
「まあ、そのうち分かるよ」
そして、古びた祠の前で足を止めた。すると、男子が飛び出してきた。
「父上! あ……」
声を上げ駆け寄ろうとして、その男子は足を止めた。
「旬介、母上は?」
旬介は、不安そうに頷くと祠に戻った。
「母上、父上と知らない男の人がいるよ。怖い人かな」
ぷっと晴明が笑った。
「すまんな、あいつは俺と葛葉以外の大人を見た事がないのだ」
蜃もまだ幼い顔をした子供である。けれど、旬介からしたら充分大人に見えるのだ。
そして、蜃はムカついた。もし、自分が本当にこの男の倅であったならば、自分をその時守るために預けたにしろ、こうしてまた子をもうけているではないかと。
「俺に、何をさせるつもりですか? こうして、貴方には子がいる。それも男児だ。跡取りには、充分ではないか。今更、母だ父だと名乗る人間にあったところで、俺はあの家の嫡男で跡取りとして育ってきたのだ。爺も心配している、早く帰してくれないか!」
「わかっているよ。本当は、そのつもりだった。生涯、姿を見せるつもりなどなかったよ」
晴明は悔しそうに、申し訳なさそうにそう言った。
「晴明……その子は……」
祠から、葛葉が姿を見せた。同じだ、同じ場所に同じホクロがある。自分でも気付かないうちに、己のそれに手を触れていた。
「大きゅうなったなあ。さぞ、立派に。松兵衛のお陰じゃ」
「松兵衛、何故松兵衛を知っているのだ?」
「そりゃあ、私等の師匠だからのお。松兵衛は、さぞ厳しかろう。直ぐ尻を叩くので、子供には不評な爺やじゃった」
じわりと、蜃の目に涙が浮かんだ。まだ信じたくないのに、嘘だと思えない。そして、葛葉の後に隠れる旬介が恐る恐る蜃に手拭いを差し出した。
「お前は……弟になるのかな」
「旬介、お前の兄上だよ」
「兄上? 怖くない?」
「怖くないよ」
と、怯える旬介を蜃は抱き上げた。
やはり、葛葉は母親なのだ。母には適わないと、晴明はそれを見守った。
「蜃、ひと目見れただけで私は充分だ。お前は今すぐこの里から逃げなさい。鬼共に気付かれぬうちに」
「だが、お蝶がまだ」
「お蝶?」
お蝶を知らない葛葉に、晴明は事の次第を説明した。そして、少し前に松兵衛が晴明に宛てた手紙を葛葉に渡した。
「それ程、私が……母上が憎いのか……」
葛葉は、悔しかった。龍神と言われようとも、結局は何も出来ない無力な自分が心底憎いと思った。
先程晴明から、葛葉は島流しと偽ってこの祠で匿われ、隠れ、生活していると聞いた。だから、もう少しマシな場所だと思っていた。
「それにしても、こんな酷い場所で俺の年くらい生活していたと言うのは本当なのか?」
「そうだよ」
そのせいか、確かに葛葉は健康そうには見えない。
「旬介も、ここで生まれ育ったのだと言うのか?」
「旬介の生まれについては、また話そう。けれど、育ったのは本当だ」
「こんな場所で1人で」
「今は、3人じゃ」
葛葉は、蜃に祠の中を覗かせた。着物に包まれるように生活しているのであろう場所に、女の子が1人くるまっていた。覗く蜃を見て、新月は怯えて見せた。それを、旬介が大丈夫だからと声を上げる。
「俺の兄上なんだって! よくわかんないけど、怖くない人だって!!」
新月は礼儀正しくその場に座り直すと、深々と頭を下げた。月の光が差し込み、女の子の顔を照らした。可愛らしい顔が見えた。
「新月はね、俺のお嫁さん! 兄上には、あげないよ」
「はあ」
「これ、旬介。お前は、もう寝ろ。新月、旬介を頼むよ」
新月はコクリと頷くと、旬介の手を引き、2人で着物にくるまった。
「蜃よ、お蝶の事は我々でなんとかする。だから、お蝶のためにも、少しばかり辛抱してあの屋敷にいておくれ。松兵衛に迎えを頼むから、その間だけでも辛抱しておくれ」
葛葉は、蜃に頭を下げた。
その晩は、それで終わった。そして、案の定地下牢に戻された。
「蜃、明日には部屋に戻すよう手配する。すまんが、今晩はここで耐えてくれ」
晴明は、牢の鍵を掛けた。
「頭を冷やしながら考えるには、この場所はぴったりですよ。父上」
「無理に、父だの母だのと呼ばなくても構わぬ。俺は晴明、母と言っていた女は葛葉という名だ」
「では最期に、聞かせてください。旬介は、何故生まれてから手元に置いたのでだ? 新月は? 同じように守ろうと、考えなかったのか? それは次男だから、女子だからか?」
「旬介は、祠の裏で棄てられていた子供だよ。新月は戦ですべて奪われ、この里に逃げ延びてきた子。何れ大きくなり、2人が葛葉に手を貸し、里が本来の姿を取り戻せるように。葛葉が最後の希望として2人を手元に置いたのだ。お前は、俺達の希望だった。お前はこのようなこと全て知らず、知られず、俗世で生きていくことを望んでいたのだ。普通の男子としてな」
蜃はようやく、2人からの深い愛情を感じた。同時に悔しく思った。
「必ず助けてやる。お蝶も含めて。だから、何も案ずるな」
離れゆく晴明に、蜃は何も言えずにいた。
翌朝、晴明が蜃を迎えに来た。あれから蜃は眠れず、答えも出ないまま朝が来た。
「朝餉の時間だ。適当に話を合わせて、大人しくしておれば牢には入れられんから」
蜃は、コクリと頷きながら牢を出た。大きすぎる晴明の着物を着たままであったが、一旦通された部屋に着替えが用意されていて、それに着替えてから来るように言われた。今度は、ぴったりだった。
「おはよう。蜃よ。少しは、反省したかのう」
反省? 何のことだ? と思ったが、ここは晴明に言われた通り適当に合わせた。
「おはようございます、お祖母様。よく見れば、己と良く似た顔。父上と信じるには申し分ありませんでしたよ。昨晩は急な事で、酷く取り乱しました」
「左様であろう。その着物は、そなたのために唐から取り寄せたものじゃ。良質であろう。良く似合うぞ。そなたが最初に目覚めた部屋を、今後そなたが使うといい。欲しいものは全て与えてやる。なんでも申せ」
富子は興奮気味に笑って見せた。
「では、お蝶を俺の世話係にしてもらえませんか? やはり、元から知った顔があるのは安心ですから」
富子は不愉快な顔をしたが、それも最もだと渋々了承した。
「藤緒の娘じゃ。女狐の血、化かされぬように気をつけるのじゃよ」
「はい」
蜃にとって、食事は葡萄酒に肉と奇天烈なものばかりだった。お蝶の姿は見えない。ちゃんと食事は与えられているのだろうか。
その様子を察したのか、晴明が口を開いた。
「知った顔が既に見えないが、不安なのでしょう。母上、お蝶もこちらへ呼んでください」
富子は、顔を顰めた。
「藤緒の血を引くもの、葛葉の血を引くもの。共に食事など、おぞましい」
「ですが、可愛い蜃の為ではありませんか」
「晴明がそうまで言うのなら……」
仕方ないと、富子は泰親にお蝶を呼ぶように命じた。
直ぐに、お蝶が現れた。
「お蝶、今日から蜃の世話係じゃ。昼の世話はもちろん、夜の世話も全て抜かりなく。式神の世話はもうよい。わかったな」
「かしこまりました」
お蝶は、蜃に葡萄酒を注いだ。
「お蝶に飽きたら、いつでも寝女を替えてやる。言うが良い」
お蝶の目元に、悔し涙が浮かんだ。
食事を終えると、お蝶と部屋に入った。昨日から、敷かれた布団はそのままになっていた。
それを見たお蝶は、涙を流しながら自分の帯を解いた。
「まあ、そのうち分かるよ」
そして、古びた祠の前で足を止めた。すると、男子が飛び出してきた。
「父上! あ……」
声を上げ駆け寄ろうとして、その男子は足を止めた。
「旬介、母上は?」
旬介は、不安そうに頷くと祠に戻った。
「母上、父上と知らない男の人がいるよ。怖い人かな」
ぷっと晴明が笑った。
「すまんな、あいつは俺と葛葉以外の大人を見た事がないのだ」
蜃もまだ幼い顔をした子供である。けれど、旬介からしたら充分大人に見えるのだ。
そして、蜃はムカついた。もし、自分が本当にこの男の倅であったならば、自分をその時守るために預けたにしろ、こうしてまた子をもうけているではないかと。
「俺に、何をさせるつもりですか? こうして、貴方には子がいる。それも男児だ。跡取りには、充分ではないか。今更、母だ父だと名乗る人間にあったところで、俺はあの家の嫡男で跡取りとして育ってきたのだ。爺も心配している、早く帰してくれないか!」
「わかっているよ。本当は、そのつもりだった。生涯、姿を見せるつもりなどなかったよ」
晴明は悔しそうに、申し訳なさそうにそう言った。
「晴明……その子は……」
祠から、葛葉が姿を見せた。同じだ、同じ場所に同じホクロがある。自分でも気付かないうちに、己のそれに手を触れていた。
「大きゅうなったなあ。さぞ、立派に。松兵衛のお陰じゃ」
「松兵衛、何故松兵衛を知っているのだ?」
「そりゃあ、私等の師匠だからのお。松兵衛は、さぞ厳しかろう。直ぐ尻を叩くので、子供には不評な爺やじゃった」
じわりと、蜃の目に涙が浮かんだ。まだ信じたくないのに、嘘だと思えない。そして、葛葉の後に隠れる旬介が恐る恐る蜃に手拭いを差し出した。
「お前は……弟になるのかな」
「旬介、お前の兄上だよ」
「兄上? 怖くない?」
「怖くないよ」
と、怯える旬介を蜃は抱き上げた。
やはり、葛葉は母親なのだ。母には適わないと、晴明はそれを見守った。
「蜃、ひと目見れただけで私は充分だ。お前は今すぐこの里から逃げなさい。鬼共に気付かれぬうちに」
「だが、お蝶がまだ」
「お蝶?」
お蝶を知らない葛葉に、晴明は事の次第を説明した。そして、少し前に松兵衛が晴明に宛てた手紙を葛葉に渡した。
「それ程、私が……母上が憎いのか……」
葛葉は、悔しかった。龍神と言われようとも、結局は何も出来ない無力な自分が心底憎いと思った。
先程晴明から、葛葉は島流しと偽ってこの祠で匿われ、隠れ、生活していると聞いた。だから、もう少しマシな場所だと思っていた。
「それにしても、こんな酷い場所で俺の年くらい生活していたと言うのは本当なのか?」
「そうだよ」
そのせいか、確かに葛葉は健康そうには見えない。
「旬介も、ここで生まれ育ったのだと言うのか?」
「旬介の生まれについては、また話そう。けれど、育ったのは本当だ」
「こんな場所で1人で」
「今は、3人じゃ」
葛葉は、蜃に祠の中を覗かせた。着物に包まれるように生活しているのであろう場所に、女の子が1人くるまっていた。覗く蜃を見て、新月は怯えて見せた。それを、旬介が大丈夫だからと声を上げる。
「俺の兄上なんだって! よくわかんないけど、怖くない人だって!!」
新月は礼儀正しくその場に座り直すと、深々と頭を下げた。月の光が差し込み、女の子の顔を照らした。可愛らしい顔が見えた。
「新月はね、俺のお嫁さん! 兄上には、あげないよ」
「はあ」
「これ、旬介。お前は、もう寝ろ。新月、旬介を頼むよ」
新月はコクリと頷くと、旬介の手を引き、2人で着物にくるまった。
「蜃よ、お蝶の事は我々でなんとかする。だから、お蝶のためにも、少しばかり辛抱してあの屋敷にいておくれ。松兵衛に迎えを頼むから、その間だけでも辛抱しておくれ」
葛葉は、蜃に頭を下げた。
その晩は、それで終わった。そして、案の定地下牢に戻された。
「蜃、明日には部屋に戻すよう手配する。すまんが、今晩はここで耐えてくれ」
晴明は、牢の鍵を掛けた。
「頭を冷やしながら考えるには、この場所はぴったりですよ。父上」
「無理に、父だの母だのと呼ばなくても構わぬ。俺は晴明、母と言っていた女は葛葉という名だ」
「では最期に、聞かせてください。旬介は、何故生まれてから手元に置いたのでだ? 新月は? 同じように守ろうと、考えなかったのか? それは次男だから、女子だからか?」
「旬介は、祠の裏で棄てられていた子供だよ。新月は戦ですべて奪われ、この里に逃げ延びてきた子。何れ大きくなり、2人が葛葉に手を貸し、里が本来の姿を取り戻せるように。葛葉が最後の希望として2人を手元に置いたのだ。お前は、俺達の希望だった。お前はこのようなこと全て知らず、知られず、俗世で生きていくことを望んでいたのだ。普通の男子としてな」
蜃はようやく、2人からの深い愛情を感じた。同時に悔しく思った。
「必ず助けてやる。お蝶も含めて。だから、何も案ずるな」
離れゆく晴明に、蜃は何も言えずにいた。
翌朝、晴明が蜃を迎えに来た。あれから蜃は眠れず、答えも出ないまま朝が来た。
「朝餉の時間だ。適当に話を合わせて、大人しくしておれば牢には入れられんから」
蜃は、コクリと頷きながら牢を出た。大きすぎる晴明の着物を着たままであったが、一旦通された部屋に着替えが用意されていて、それに着替えてから来るように言われた。今度は、ぴったりだった。
「おはよう。蜃よ。少しは、反省したかのう」
反省? 何のことだ? と思ったが、ここは晴明に言われた通り適当に合わせた。
「おはようございます、お祖母様。よく見れば、己と良く似た顔。父上と信じるには申し分ありませんでしたよ。昨晩は急な事で、酷く取り乱しました」
「左様であろう。その着物は、そなたのために唐から取り寄せたものじゃ。良質であろう。良く似合うぞ。そなたが最初に目覚めた部屋を、今後そなたが使うといい。欲しいものは全て与えてやる。なんでも申せ」
富子は興奮気味に笑って見せた。
「では、お蝶を俺の世話係にしてもらえませんか? やはり、元から知った顔があるのは安心ですから」
富子は不愉快な顔をしたが、それも最もだと渋々了承した。
「藤緒の娘じゃ。女狐の血、化かされぬように気をつけるのじゃよ」
「はい」
蜃にとって、食事は葡萄酒に肉と奇天烈なものばかりだった。お蝶の姿は見えない。ちゃんと食事は与えられているのだろうか。
その様子を察したのか、晴明が口を開いた。
「知った顔が既に見えないが、不安なのでしょう。母上、お蝶もこちらへ呼んでください」
富子は、顔を顰めた。
「藤緒の血を引くもの、葛葉の血を引くもの。共に食事など、おぞましい」
「ですが、可愛い蜃の為ではありませんか」
「晴明がそうまで言うのなら……」
仕方ないと、富子は泰親にお蝶を呼ぶように命じた。
直ぐに、お蝶が現れた。
「お蝶、今日から蜃の世話係じゃ。昼の世話はもちろん、夜の世話も全て抜かりなく。式神の世話はもうよい。わかったな」
「かしこまりました」
お蝶は、蜃に葡萄酒を注いだ。
「お蝶に飽きたら、いつでも寝女を替えてやる。言うが良い」
お蝶の目元に、悔し涙が浮かんだ。
食事を終えると、お蝶と部屋に入った。昨日から、敷かれた布団はそのままになっていた。
それを見たお蝶は、涙を流しながら自分の帯を解いた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】『からくり長屋の事件帖 ~変わり発明家甚兵衛と江戸人情お助け娘お絹~』
月影 朔
歴史・時代
江戸の長屋から、奇妙な事件を解き明かす! 発明家と世話焼き娘の、笑えて泣ける人情捕物帖!
江戸、とある長屋に暮らすは、風変わりな男。
名を平賀甚兵衛。元武士だが堅苦しさを嫌い、町の発明家として奇妙なからくり作りに没頭している。作る道具は役立たずでも、彼の頭脳と観察眼は超一流。人付き合いは苦手だが、困った人は放っておけない不器用な男だ。
そんな甚兵衛の世話を焼くのは、隣に住む快活娘のお絹。仕立て屋で働き、誰からも好かれる彼女は、甚兵衛の才能を信じ、持ち前の明るさと人脈で町の様々な情報を集めてくる。
この凸凹コンビが立ち向かうのは、岡っ引きも首をひねる不可思議な事件の数々。盗まれた品が奇妙に戻る、摩訶不思議な悪戯が横行する…。甚兵衛はからくり知識と観察眼で、お絹は人情と情報網で、難事件の謎を解き明かしていく!
これは、痛快な謎解きでありながら、不器用な二人や長屋の人々の温かい交流、そして甚兵衛の隠された過去が織りなす人間ドラマの物語。
時には、発明品が意外な鍵となることも…?
笑いあり、涙あり、そして江戸を揺るがす大事件の予感も――。
からくり長屋で巻き起こる、江戸情緒あふれる事件帖、開幕!
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
魔王の残影 ~信長の孫 織田秀信物語~
古道 庵
歴史・時代
「母を、自由を、そして名前すらも奪われた。それでも俺は――」
天正十年、第六天魔王・織田信長は本能寺と共に炎の中へと消えた――
信長とその嫡男・信忠がこの世を去り、残されたのはまだ三歳の童、三法師。
清須会議の場で、豊臣秀吉によって織田家の後継とされ、後に名を「秀信」と改められる。
母と引き裂かれ、笑顔の裏に冷たい眼を光らせる秀吉に怯えながらも、少年は岐阜城主として時代の奔流に投げ込まれていく。
自身の存在に疑問を抱き、葛藤に苦悶する日々。
友と呼べる存在との出会い。
己だけが見える、祖父・信長の亡霊。
名すらも奪われた絶望。
そして太閤秀吉の死去。
日ノ本が二つに割れる戦国の世の終焉。天下分け目の関ヶ原。
織田秀信は二十一歳という若さで、歴史の節目の大舞台に立つ。
関ヶ原の戦いの前日譚とも言える「岐阜城の戦い」
福島正則、池田照政(輝政)、井伊直政、本田忠勝、細川忠興、山内一豊、藤堂高虎、京極高知、黒田長政……名だたる猛将・名将の大軍勢を前に、織田秀信はたったの一国一城のみで相対する。
「魔王」の血を受け継ぐ青年は何を望み、何を得るのか。
血に、時代に、翻弄され続けた織田秀信の、静かなる戦いの物語。
※史実をベースにしておりますが、この物語は創作です。
※時代考証については正確ではないので齟齬が生じている部分も含みます。また、口調についても現代に寄せておりますのでご了承ください。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる