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プロローグ
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ざぁん……。ざぁん……。
墨汁色の海面が、不規則に揺れていた。そこに浮かぶ銀色の月も、同じように揺れている。
ざぁん……。ざぁん……。
静寂に包まれた闇の中、穏やかな波の音だけが、ただ響いていた。
ふと思い浮かんだ顔は、息子の様に可愛がってきた部下。初めての出会いは…そぅ、彼が小学生の時だったと記憶する。懐かしくなり、ふと笑みがこぼれた。ハーモニカーの上手い坊主だったが、もう二十年以上聴いていない。彼はまだ、吹けるのだろうか。
とても疲れてしまったので、少し休もうとその場に座り込んだ。頭上に浮かぶ月からの光がとても穏やかで、心地良く感じた。
ゆっくり思考は停止し始めていた。このまま眠るのも悪くない、そう思ったのと同時に、残した仕事が気掛かりになった。
そうだ、自分は仕事中だったのだ。
昔を思い出した。小学校も中学校も、高校も大学も、全て皆勤賞だった。仕事ですら、休んだことが無かった。そんな糞が付くほど真面目一筋の自分が、海面に浮かぶ月を見つめながら、仕事中に眠ろうとしている。だが、不思議と罪悪感はなく、穏やかな心地に包まれていた。不良にでもなった気分だ。いい年のオヤジがと、ふっとした笑いが溢れた。
ざぁん……。ざぁん……。
波の音が心地良い。
母の胎内も、こんな感じだったのだろうか。
ざぁん…。ざぁん…。
仕事の事は、忘れよう。
いざとなれば、部下が自分の意志を引き継いでくれるだろう。
そして、波の音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。
墨汁色の海面が、不規則に揺れていた。そこに浮かぶ銀色の月も、同じように揺れている。
ざぁん……。ざぁん……。
静寂に包まれた闇の中、穏やかな波の音だけが、ただ響いていた。
ふと思い浮かんだ顔は、息子の様に可愛がってきた部下。初めての出会いは…そぅ、彼が小学生の時だったと記憶する。懐かしくなり、ふと笑みがこぼれた。ハーモニカーの上手い坊主だったが、もう二十年以上聴いていない。彼はまだ、吹けるのだろうか。
とても疲れてしまったので、少し休もうとその場に座り込んだ。頭上に浮かぶ月からの光がとても穏やかで、心地良く感じた。
ゆっくり思考は停止し始めていた。このまま眠るのも悪くない、そう思ったのと同時に、残した仕事が気掛かりになった。
そうだ、自分は仕事中だったのだ。
昔を思い出した。小学校も中学校も、高校も大学も、全て皆勤賞だった。仕事ですら、休んだことが無かった。そんな糞が付くほど真面目一筋の自分が、海面に浮かぶ月を見つめながら、仕事中に眠ろうとしている。だが、不思議と罪悪感はなく、穏やかな心地に包まれていた。不良にでもなった気分だ。いい年のオヤジがと、ふっとした笑いが溢れた。
ざぁん……。ざぁん……。
波の音が心地良い。
母の胎内も、こんな感じだったのだろうか。
ざぁん…。ざぁん…。
仕事の事は、忘れよう。
いざとなれば、部下が自分の意志を引き継いでくれるだろう。
そして、波の音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。
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