【本編・改稿版】来世でも一緒に

霜月×ティオ

文字の大きさ
3 / 61

第1話

しおりを挟む


 ……コンコン。コンコン。

 いつもの朝だ。

 私は扉を叩く音で目を覚ました。
 きっとメイドのアンナだろう。

「お嬢様、お目覚めのお時間にございます」

 一瞬の間の後、扉の向こうから聞き慣れた声が響く。薄暗い寝室の中、それをベッドの上で聞いた私は、上体を起こすと返事をした。

「アンナね。入ってちょうだい」

 すると、アンナが扉を開け、一礼して入ってきた。

 アンナは私付きのメイドである。
 赤毛の髪をピッチリと結えたスレンダーな女性で、歳は28。厳しいところもあるが、基本優しく、長女として生まれてきた自分にとって姉のような存在だ。

「おはよう、アンナ」

「おはようございます、マリアンヌお嬢様」

 私が笑顔で挨拶をすれば、アンナもまた笑顔で挨拶を返してくれる。これも、いつものやり取りだった。

「お嬢様、今日は待ちに待ったお嬢様の社交界デビューの日でございますね」

「ふふっ。ええ、そうね」

「今日の王都は快晴でございますよ。絶好の舞踏会日和になりそうでようございました」

 挨拶の後、アンナがそう言いながらカーテンを開けていく。
 少しずつ明るくなる寝室。視線を窓のほうへと移せば、アンナの言葉どおり、開かれたカーテンの向こうに美しい青空が見えたのだった。



 *



 皆さま、ご機嫌よう。
 わたくし、マリアンヌと申します。シュヴァリエ侯爵家の一人娘で、ピッチピチの18才でございますわ。

 そう、18才!!

 昨年、無事に誕生日を迎えまして、私、成人となったばかりですの! そして今夜、王宮で行われる舞踏会にて、ようやく、……ようやく! ようやく!! ようやくっ!! 社交界デビューを果たすことになっているのですわ!!!

 嗚呼、この日のためにと磨きに磨きをかけてきたアレコレを、とうとう発揮する日が来たのです!

 殿方を楽しませるウィットに富んだ会話をすべく、ジャンルを問わずあらゆる本を読み漁り。お相手の名前が分からないなんて言語道断ですからね。分厚ぅぅーい貴族年鑑を、おやすみ前の絵本よろしく毎晩毎晩読み込んで。ダンスで毎日体を動かし、食事はお野菜中心、ハラハチブンメ!!
 日課はバストアップと脚痩せのマッサージ。それに追加して、アンナのスペシャル・エステで毎日ピカピカに磨いてもらってきたので、お肌はプルプルもっちり、髪は艶々サラサラなんでございます。
 後は、ワタシという戦うボディをタイトなコルセットにねじ込めば、立派な侯爵家令嬢の出来上がり!! 

 自分で言うのも何ですが、マナーも完璧でしてよ? ニッコリ。


 ――物心ついた5才頃から、私の座右の銘は『親孝行』。


 シュヴァリエ家は優秀な弟であるユーゴが継ぎ、きっとその将来、ますます盛り立てていってくれるでしょう。
 となると、女である私が、家のため、両親のために考え得る最大限の親孝行といえば、それはもう、より良い条件の殿方と結婚することでございましょう……!! ああ、そのために約十三年もの間、全力を尽くし突っ走ってきたのです!

 さあ皆様、是非見ていてくださいまし!!

 私ことマリアンヌは、今夜社交界デビューを無事果たし、近いうちに必ずや、でっっかい魚を釣り上げてみせますわッッ!!!!
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

2度目の結婚は貴方と

朧霧
恋愛
 前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか? 魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。 重複投稿作品です。(小説家になろう)

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜

白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。  私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。  けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?  関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。  竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。 『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』 ❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。 *乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。 *表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。 *いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。 *他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。

幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。 断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど ※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ ※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

妾に恋をした

はなまる
恋愛
 ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。  そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。  早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。  実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。  だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。  ミーシャは無事ミッションを成せるのか?  それとも玉砕されて追い出されるのか?  ネイトの恋心はどうなってしまうのか?  カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?  

侯爵令嬢ソフィアの結婚

今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚した。これは金が欲しい父の思惑と、高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない。 そもそもヴィンセントには恋人がいて、その恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ。 結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら屋に住むように言われて…… 表紙はかなさんのファンアートです✨ ありがとうございます😊 2024.07.05

【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

Mimi
恋愛
 若様がお戻りになる……  イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。  王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。  リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。  次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。  婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。  再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……   * 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました  そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです

処理中です...