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動き出すアリス、秘密のハーレム計画

第22話 甘奈の焦り、幼馴染の陰謀

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 俺を巻き込んだクソ騒がしい朝が終わり、休憩時間がやって来た。
 俺は今朝、下駄箱で見付けた差出人不明な上に、目的さえも分からない手紙をかばんから取り出す。
 すると、何かを察知したかのように、甘奈が俺の教室へ駆け込んできた。
 
「兄さん! さっきのアレは一体何なんですか⁉」
 
 甘奈は、浮気を問い詰める妻の様な気迫で、俺に詰め寄って来る。
 その気迫に押され、俺は何故か背中に嫌な汗をかき始めてしまった。
 
「何なんですかって言われても、俺も知らないんだよ……」
「むぅ……まぁ良いでしょう。取り敢えず、その手紙を開いてください。
 話はそれからにしましょう。さぁ、早く! Hurry!」
「何で甘奈がそんなに急かすのかは知らないけど、まぁ良いか……。
 俺も中身が気になるし……」
 
 そう言って俺は、その手紙の封を開けて中身を読もうとすると、それに待ったをかける人物が……。
 
「ちょ、ちょっと真君⁉ そ、それは何かな⁉」
「え? あぁ、これは今朝下駄箱に入ってたよく分からん手紙だ」
「て、手紙⁉ も、もしかしてラブレター……?」
「いや、分からん」
 
 うん、嘘じゃない。本当に分からないんだ。
 そんなやり取りをしていると、愛衣まで俺の元にやってきた。
 
「真? それは、一体何かなぁ?」
「愛衣まで……」
「答えて? それは一体なに?」
「分からん。今から確かめる所だ」
「ふ~ん、そっか」
 
 夏葉に続いて、愛衣も来たので丁度いい。
 好意を寄せてくれてる相手にも一応知らせておいた方が良いだろうし……。
 俺は三人が見守る中、恐る恐る封筒から中身を出した。
 
『伏見 真君へ
 放課後に伝えたい事があります。
 もし良ければ、放課後に屋上まで来てください』
 
 こ、これはまさか! 本当ラブレ――
 
「これは果たし状ですね。間違い有りません」
 
 中身を一緒に読んだ甘奈が、ばっさりと告げる。
 
「え? この流れ的に、ラブレターじゃないの?」
「いえ、違います。これは果たし状です」
「いやいや! 放課後に屋上だぞ? これは告白の王道パターンだろ」
「いえ違います! これは、告白を装った喧嘩への呼び出しに違い有りません!」
 
 甘奈は何故か、頑なにラブレター説を否定する。
 今までこんなに頑なな甘奈は、早々見ていなかった俺は少し驚いてしまった。
 
「でも本当にラブレターだったらどうするの?
 これで行かなかったら、真君が悪く言われちゃうかも知れないよ?」
「うっ……そ、それは……」
 
 夏葉に言われ、甘奈は顔をしかめる。
 
 俺自身、そこまで考えてなかったけど、そうだよな。
 すっぽかしたらどんな風に言われるか分からないもんな……。
 
「取り敢えず行くだけ行ってみれば良いんじゃない?
 なんなら、近くであたし達待機しておくからさ!」
 
 愛衣は俺にそう提案し、俺に行くことを進めてくる。
 
 まぁ確かに、それなら安心だけど……。
 う~ん、これで冷やかしだったら嫌だしなぁ。
 
 俺がそんな事を思っていると、夏葉が俺に近付いて、耳元でぼそっとささやく。
 
「もし冷やかしとかだったら、あたしと愛衣ちゃんとアリスで、いっぱいエッチな方法で慰めてあげるから❤
 だから、安心して? 大丈夫、あたし達は真君を裏切ったりしないから❤」
「うっ……」
 
 こ、こいつ……! 何か日を追うごとに言う事が大胆になってないか?
 ちょっと俺恥ずかしいんだけど⁉ てか、アリスもって……。
 
 俺は夏葉に言われた事を脳内で反芻し、少し股間が反応してしまう。
 そんな俺を怪しく思ったのか、なにやら甘奈の目が厳しくなった気がする。
 
「兄さん? 何か私に隠し事してませんか?」
「えっ⁉ いや、してないけど……」
「本当ですか? 何か怪しいんですけど……」
 
 甘奈は俺と夏葉を交互に見て、何かを疑うような目で俺達を見る。
 
「大丈夫だよ、甘奈ちゃん! ちょっと真君にアドバイスしただけだから!」
「アドバイスですか……。まぁそれなら良いんですけど……」
 
 甘奈はそう言って俺と夏葉から目をそらす。
 どうやら上手く誤魔化せたようだ……。
 そうしていると、俺達の元に噂のアリスがやって来た。
 
「おはよう、真。それに皆も」
 
 アリスはそう言って何やら怪しい目線を俺に向ける。
 
「ん? 何だ? 俺の顔に何か付いてるか?」
「いいえ、何にもありませんよ?」
「そっか」
 
 そんな事を言っていると、アリスは俺の持つ手紙に目を向けた。
 
「真、それは一体何です?」
「あぁ、これか……。これは――」
 
 俺がアリスに手紙の事を話そうとすると、愛衣が先んじてアリスに話し始める。
 
「これね! 何か、真の下駄箱に入ってたんだってさ!」
「へぇ……下駄箱に……」
「何か放課後に、屋上に来て欲しいらしいよ!」
「そうですか……」
 
 アリスは特に驚く事もなく、淡々と話を聞いている。
 その様子は、まるで全くその手紙の事には興味がないという雰囲気だ。
 
「あれ? アリスは興味無いの?」
「興味がない訳ではありませんけど、別にそんなに気にする事ではないかと」
「達観してるねぇ~」
「私は私の恋を成就させるので精一杯ですし、それに……」
「ん? なんだ?」
 
 アリスはちらっと俺を見てフッと微笑む。
 
「私はちょっと成し遂げたい事があるだけです」
「成し遂げたい事……ねぇ……。まぁ頑張れば良いんじゃねぇの?」
「えぇ、勿論。真も応援してくださいね?」
「え? あぁ、まぁ頑張れ?」
 
 俺は取り敢えず、アリスにエールを送っておく。
 これに意味があるのか知らないけど……。
 
「はい❤ 頑張ります❤ ふふっ」
 
 そうしている内に、小休憩の終わりを告げるチャイムが鳴った。
 
「あっ! いけません! 早く戻らないと!
 では兄さん、また後で! すぐに駆け付けますので!」
 
 甘奈はそう言って、教室から慌てて出ていった。
 
「では、私も行かないと……」
「おう、また後でな」
「えぇ、また後で」
 
 アリスもゆっくりとした足取りで俺達の教室から出ていく。
 そしてアリスが出ていってすぐに、先生が入ってきたので、俺もすぐに授業の準備を進めた。
 ちなみに、夏葉達はいつの間にか自分の席に戻ってた。
 
 
 
 
 
 そして時間は進み、放課後。
 俺は手紙の呼び出しもあって、屋上に向かっていた。
 一人で行きたかったけど、夏葉や愛衣達の強い要望も有り、彼女達も後ろから付いてきている。
 まぁ屋上自体には入らないって言ってたから良しとしよう。
 夏葉がアリスを誘ったけど、彼女は何か用事があるようで、この場には居ない。
 
「それにしても、真くんを呼んだ相手って誰なんだろうねぇ」
「う~ん……。誰か、真と仲の良い子って居たかなぁ……」
「兄さんは完璧なので、モテても仕方ありません。
 呼び出した相手は相当、見る目があるようですね」
 
 甘奈さん? 何故、そんなにハードルを上げてしまうんですかね?
 そもそも、俺はモテた事なんて無いし。まぁ、夏葉と愛衣とアリスには好かれてたけど……。
 それにしても、相手は一体誰だ? 本当に心当たりが無いんだけどな……。
 
 俺は不安な気持ちを抱きつつ、屋上へと一歩一歩近付いていく。
 そしていよいよ、屋上への扉の前に到着した。
 
「じゃあ、俺は行くから。皆は少し待っててくれ」
 
 俺は後ろの三人に向かって振り返り、そう言った。
 すると三人も俺を見て、声を掛けてくる。
 
「いってらっしゃい、真くん」
「どんな子なのかぁ……」
「この私が後でちゃんと、見極めないと……」
 
 何やら甘奈の言葉が不穏だったものの、俺は扉と向かい合ってそのまま扉を開いた。
 
 
 
 
 
 
 
 屋上への扉を開き、そのまま奥へと進む。
 
「え……? な、何で……⁉」
 
 俺はあまりの衝撃に、驚きを隠せなかった。
 
 
 
 だってそこには――
 
 
 
「あら、ちゃんと来たようですね」
「あ、アリス……?」
 
 先に帰ったはずの、幼馴染である西城 アリスが居たのだから……。
  
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