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新たに始まった俺達の関係
第41話 知らされる勝負、気合いの行き先は……
しおりを挟む点数勝負を止めようと思っていたのに、いつの間にか俺は勝負の内容について考えてしまっている。
しかし、今更勝負は無しでなんて言えば、彼女たちに何を言われてしまうか分からない。
まぁ別に俺にデメリットがある訳ではないし、ここは彼女たちのやる気のためにも犠牲になっておくことにする。
しかし、勝負の内容なぁ……。何かいい感じに公平になりそうな内容は無いのだろうか……。
俺たちは上位陣、愛衣は赤点が多いとなると……。ん? そうか!
「いい感じの勝負内容を思い付いたぞ!」
『えっ⁉』
「うぉっ⁉」
俺がそう言った瞬間、三人がうつむけていた顔をバッと上げ、俺の顔を見た。
そんな三人に驚きのあまり、声を上げつつも彼女たちに思い付いたルールを説明しようと、俺は口を開く。
「学力的には、夏葉とアリスと甘奈は上位、愛衣は下位。
じゃあ、三人は俺と同じ教科で点数が高かった教科数で勝負。
愛衣は俺の最低点数を上回った教科数で勝負ってことにすればいいんじゃないか?」
俺は今さっき思い付いた勝負方法を三人に提案してみた。
多分これならいい感じで勝負ができるのではないだろうか?
まぁ結局、平等になるには愛衣が必死に頑張らないと意味がないって事には変わらないけど。
そして目の前の三人は、俺の言った案について考えているのか、う~んと揃って唸る。
三人も頑張らないとダメだからな。下手に同意すると、自分の首を絞める事になるから、流石に考えるよな。
そして数分考え込んだ末に、三人は俺の案に乗る事にしたようで、オッケーとの答えが返ってきた。
「じゃあ愛衣には私から伝えておきますね」
「あぁ、分かった」
アリスがそう言ってくれたので、俺は安心した。
そうして俺たちは、それぞれの想いを胸に抱き、家に入る。
身体を重ねた後のいつもの甘奈なら、ここで抱きついてキスをねだってきたりしているのだが、テストの景品が景品なだけにそんな事のせず、一目散に自分の部屋へ駆け込んでいった。
ちょっと寂しい思いを覚えつつも、俺も俺で負けてはいられない。
素直に自室へ向かった甘奈を見習って、俺も部屋に入って部屋着に着替えた後にテスト勉強を始めるのだった。
☆
テストの勝負内容が決まり、わたしは早速愛衣に勝負をする事、そして勝負に勝てば真を一日独占できる権利を得られる事を伝えようと、彼女に連絡を入れます。
わたしが愛衣にメッセージを送ると、すぐに既読が付きました。
そして既読が付いたかと思うと、次の瞬間に電話がかかってきたのでした。
「はい、もしもし」
『も、もしもしっ⁉』
やはり焦ったような声で電話してきましたね……。
まぁ彼女なら焦ると思ってましたけど。
『あの勝負って本当なのっ⁉』
「えぇ、本当ですよ」
『それって真も知ってるの⁉』
「もちろんですよ? 真の目の前でこの話をしましたし」
『そ、そうなんだ……。真も知ってるんだ……』
愛衣はボソボソと呟き、なにやら考え込んでいるみたいですね……。
まぁ当たり前ですよね。まだどんな勝負の内容かは教えてませんしね。
「それで……どうします?」
『え……? どういう事……?』
「この勝負に参加するかどうかって事ですよ?」
『そ、そりゃもちろん参加するよ! 絶対勝つもんね!』
「では、勝負の内容を教えますね」
『なんか怖いけど……お、お願いします……』
愛衣にそう言われ、わたしは懇切丁寧に真が考えた勝負の内容を教えました。
初めは「うんうん」と元気に返事していたものの、説明が終わるとすっかり元気がなくなっていました。
「どうしました? 元気がないようですが……」
『い、いや……なんか勝ち目が無い気がして……』
「そうですか? 一応その辺りも真は配慮してくれてるみたいですし、愛衣にも勝ち目はあると思いますが」
『まぁ配慮されてるのは分かったんだけどさ……。
あたしなんかが、真の最低点数に追いつく点数が取れる自信無いよ……』
愛衣のその言葉を聞いて、わたしは彼女へ少しの怒りを覚えました。
「愛衣の……愛衣の真への想いはその程度って事なんですか?」
『そ、その程度⁉ そんな事言わなくてもいいじゃん!』
「じゃあもう一度お聞きしますけど、もちろんこの勝負乗りますよね?」
『当たり前だよ! あ、アリスこそ! あたしに負けても知らないからね⁉
皆に悪いけど、あたしがぶっちぎりで買っちゃうかもしれないんだからね⁉』
「ふふっ……面白いこと言いますねぇ? そんな事言っても良いんですか?
それで勝てなかったら恥ずかしいですよ?」
わたしは敢えて愛衣を煽るように言います。
愛衣は一年の頃から、煽れば煽るほど面白い反応が返ってきますし。
これは勝負が楽しみになりますね……。
『勝てば恥ずかしくないから大丈夫だし!
皆がギャフンって言っちゃうぐらいの点数取っちゃうからね!
今回のテストは自信あるからね! 覚悟しててよね!』
「ふふっ……楽しみにしてますからね。
じゃあ真たちにも言っておきますからね。
ではわたしも勉強するので、これで失礼しますね」
『分かったよ! ありがとう!
じゃああたしも勉強するからじゃあね!』
そう言って愛衣は電話を切りました。
そうしてわたしも、勉強に戻ろうとスマホを置いて、勉強するために教科書と向き合います。
「さぁ、真の独占権はいただきますよ!
ファイトです! わたし! そして一日中エッチするのです!
待っててくださいね真! 一日中ねっとり愛しますからね!」
そうしてわたしはテスト勉強を始めるのでした。
☆
「絶対に勝負に勝ってやるんだから!」
あたしはアリスとの電話を切り、再び勉強に戻る。
まさか突然、あんな勝負が決まるとは思ってなかったな……。
アリスにはあんな事言っちゃったけど、本当に大丈夫なのかなぁ。
「ダメダメ! ネガティブなんてあたしには似合わないぞ!
元気があたしの取り柄なんだから! 元気は最強! 頑張るぞ!」
あたしはそう気合を入れて、頬を叩く。
よし! これで頑張れるぞぉ!
「それにしても真の独占権……。勝ったらどうしようかなぁ。
えっと二人でデートしてそれから……うへへぇ~。
はっ⁉ いけないいけない! よだれが……」
あたしは既に勝負に勝ったことを想像して、思わずよだれがでてしまっていた。
これでほんとに勝てるのかな……。
そんな一抹の不安を抱えながら、あたしは勉強を再開した。
☆
テスト勉強を始めて約二時間。
俺は未だに机に向かって勉強を――――していなかった。
「くそっ! また星四かよ! なんなんだよこのクソガチャは!
完全に確立詐欺だろクソがっ! これで五十連ドブってんぞ⁉」
俺はテスト勉強を切り上げ、暇つぶしがてらスマホゲーに勤しんでいた。
そして現在、今まで貯めに貯めたオーブが湯水のように溶けていく。
「くっ……このままでは……」
俺はすっかり無くなってしまったオーブの残高を見つめ、思わずため息をついてしまう。
そして無くなってしまったオーブを足そうかとスマホの画面を見つめて思い悩んでしまっていた。
「どうする……? このまま諦めたら、もう手に入らないし……。
だからといって学生の身で課金するのもなぁ……」
そんな事で悩んでいると、ふと俺は思い出した。
そう……俺の机の中には、まだお年玉という切り札が残っていたのだ。
俺は早速机の引き出しを開け、切り札であるお年玉――もとい諭吉を取り出す。
「頼む、諭吉さん。俺に兵長を寄越しやがれ下さい!」
俺はそう願いながら、コンビニへ走り出す。
そして無事に密林のギフトカードを購入し、その勢いのままオーブを追加した。
「頼む! 運営さん! 俺にコラボキャラを下さい!」
俺はそう願いつつ、ガチャを引いた。
結果は言うまでもない。ちなみにその日の夜、とある男子の悲痛な叫び声が街に響いたという。
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