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葉っぱじゃ……ない?

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 ムシャ、ガリ、ガリガリ、ガリガリガリ。
 ……あれ? なんか、思っていたのと違う。葉っぱが固くて食べれないんだ。
 かたい。とてもかたい。こんなんじゃ食べれらないよって思うくらい。ためしに葉っぱの上を歩いてみると、チクチクして、痛い。ぼくの、まだやわらかい体に突き刺さりそうだ。
 まさかこれ、葉っぱじゃないのかな……? 葉っぱじゃないなら、一体何? アスファルトという固い地面、チクチクする食べられない葉っぱ。それって……。
 ぼくはとあることをひらめいて、心配になってきた。
 コンクリートに人工の芝生。これは自然のものじゃなくて人間のものなのかもしれない。なら、大きな大きな木でできている目の前にそびえる木目のものは、木じゃなくて、人間の家の壁の一部なのかもしれない。
「あ! あおむしだ!」
 まさかこの声は! 人間じゃないか! 女の子の声だった。
 人間は、危ない。捕まえられたり、やっつけられたりしてしまう。早く逃げなきゃ。と思って、体をくねらせようとしても人工の芝生はチクチクして痛い。
 人工芝生に体を刺されてしまうか、人間に捕まえられるか。
 ぼくの命はどちらにしても消えてしまうのだろうか……そう思うと涙が出てきた。
「困ったね、こんなところにあおむしさんがいるね」この声は、きっと人間のお母さん。
 さっきの声を出した女の子より、足がずーっと長いんだもの。人間の顔を見るには首が疲れてしまうけれど、足の長さだったらぼくの背でも見ることができる。
「お母さん、このまま玄関のドアを開けたら、あおむしさん、つぶれちゃうよ」
 なんて恐ろしいことだ! どうか、ぼくを逃がしてくれよ! まだたくさんの葉っぱを食べて、大きくなって、さなぎになって、立派なチョウチョに変身するんだ。

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