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ぼくをどうするの?

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 すると、人間の女の子が「そうだ!」と大きな声をあげた。
 まさかぼくを女の子の家に連れて行くのかな。虫カゴってやつに入れられちゃうのかな。
 そんなのいやだ!
 声をがんばって出しても、小さいぼくの声なんか人間に聞こえやしない。
「なにを思いついたの? さえちゃん」と人間のお母さん。
「あたし、このあおむしさんをふかふか地面の上に帰らせてあげる」
 ……え?
「そうだね、かわいそうだもんね。このままじゃ固くて歩きづらいだろうし、葉っぱはないものね」とお母さん。
 ……どういうことだろう。ぶるぶると、ぼくは震えていた。人間の女の子、さえちゃんの声がしてから、ぼくは玄関の扉の前から一歩も動けていない。早く逃げなきゃいけないのに。
 そのときだった。急にぼくは宙に浮いたんだ。空を飛んだ、そんなようだった。まだちょっとしか生きていないけれど、こんなこと生まれて初めてだ。
 さえちゃんはぼくを手に乗っけたまま、どこかに歩いていく。アスファルトの地面を、難なく歩く。ぼくをどこにつれていくの?
 こわい、こわい。
 ぼくはそこで体をくねらせてみた。降ろして、と言えなかったから。
「あおむしさん、くすぐったーい」さえちゃんの、嬉しそうな声。あれ? 楽しそうだ。
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