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始まりの世界
第四話
な……何が?いったい何が起こってるんだ?
思わず隠れた渡り廊下の腰壁から顔を出しもう1度覗いてみる。
永倉が……永倉が藤川の指をくわえている。
「永倉君……離して……」
藤川が手を引こうとしても、永倉が藤川の手首を掴んでいて離さない。
紅潮した藤川の顔が妙に色っぽい……じゃなくて!!
俺は渡り廊下から飛び出すと永倉の肩を掴んだ。
「永倉!!何やってんだ!!」
永倉は、ハッと、我に返ったように肩を揺らすと慌てて藤川の手を離した。
「あ……千鳥?藤川……ご、ごめんっ!!」
永倉は走りさってしまった。
本当に一体何があったというのか?さっきのあの永倉の目は……。
「藤川、永倉がごめんな。何があったんだ?」
真っ赤な顔をした藤川の指には血が滲んでいる。
「永倉君と学祭の事で話してたんだけどプリントで……手を切っちゃって、そしたら……舐めとけば治るって……」
「……指を吸われた?」
一瞬戸惑いを見せた後に藤川はこくんと頷いた。
…………………。
「千鳥君?」
一瞬よぎった嫌な感覚を頭から追い出すと、藤川の手を掴むと水道まで連れていき指を水で流した。
ハンカチで拭くと絆創膏を貼ってやる。
「舐めたってバイ菌が入るだけだってのに、永倉の奴」
「あははっ、大袈裟だよ。ちょっと切っちゃっただけなのに……でもありがとう」
俺に絆創膏を貼った指を見せながら、藤川が微笑んだ。
今日イチの笑顔頂きましたっ!!
「じゃあ、俺は永倉と帰る約束してたから」
興奮で転がり回りたいのを押さえて冷静を装い藤川に手を振った。
手を振り返してくれる藤川、家に持って帰りたい!!
後ろ髪を引かれながら永倉を探しに歩いた。
ーーーーーー
「よぉ…………」
永倉は校舎の裏にあるテニスコート前のベンチにいた。まだサークルは始まってないらしく誰もいない。
うずくまって頭を抱えて座っている横に腰をおろした。
「………最悪だ。ごめん、お前が藤川に惚れてるのしってんのに……俺を殴ってくれ……」
永倉の希望通りに頭をこずいた。
「痛っ!!本当に殴るか?」
「なぁ……お前も藤川の事、好きなのか?」
顔をあげた永倉は俺の真剣な目に気圧される様に目を背けた。
「いや……好き……ではないけど……何か藤川の血を見てたらフラフラと吸い寄せられて……」
……まさか、永倉。
いや……だったら母さんが気づくだろうし、俺も何も感じない。
「血を見てたらって、そういうことよくあるのか?」
まさかと思いながら、慎重に問い詰めていく。
「初めてだ……お前が藤川と萌々菜ちゃんが似てるって言うから、藤川を萌々菜ちゃんの映像と重ねてそういう目で眺めてたせいかもしれない……」
もう一発殴っておいた。
もし永倉が吸血鬼で、人間に危害を加えた時。
俺は今までと同じように引き金を引けるだろうか?
ーーーーーー
「なぁ……母さん。父さんとどんな恋愛して結婚した?」
俺は夕飯を作りながら、猫用のベッドに眠る母さんに何気なく話しかけてみると、尻尾の先が小さくぱたぱたと動いている。
聞かれたくない話題だったのか?
「父さんがもうちょっと良い男だったらなぁ」
俺も美形に生まれてたかもしれない。
『はぁ!?誠一郎さん以上に素敵な男性が他に何処にいるってのさ!!』
母さんは毛を逆立ててお怒りモードに入り、ゆっくり一歩一歩近付いて目は赤く光っている。
やべぇ……本気で怒ってる。普段から怒りっぽいがこれだけの事でそこまで怒るか!?
「や……父さん素敵です!!格好いいです!!」
『じゃあ、誠一郎さんの良いところを50項目、言ってみな』
「えっと……眼鏡?痩せてる?えぇと……優しい……」
どんどん目の光が強くなる……その時、母さんの耳がピクピク動いて玄関へ走って行った。
助かったぁ~。
近付く父さんの気配に救われた。
料理の盛り付けをしていると、
「ミャ~ちゃん、いつもお出迎えありがとうね」
抱っこされてご機嫌な母さんを連れて父さんがリビングの扉を開けた。
「おかえり、父さん」
鞄をソファーに置いてダイニングに来ると嬉しそうに笑って用意されたおかずを見た。
「今日は肉じゃがかい?美夜さんが初めて作ってくれたのも肉じゃがでね。美味しかったなぁ」
母さんとの思い出を嬉しそうに話す父さんに、母さんは恥ずかしそうに「ニャ~」と鳴いて顔を擦り付けている。
母さんは俺達と同じものを食べる。
父さんは最近の猫はそうなんだと言うと、へぇ~と納得して自分の箸で「はい、ミャ~ちゃん」と食べさせたりもしている。
そんな二人を見て、微笑ましくもあり、けっ……とも思う。
ーーーーーー
夜の街を見廻りと称してビルの屋上から街を見下ろしていた。
気配を消しているので周りの人間は俺を気に止めない。
吸血鬼と人間。
仲良くやっている両親二人を見ている分、その垣根がわからなくなる。
まぁ、父さんは母さんが吸血鬼だったと知らなかったからかもしれないが。
人間に危害を加えた吸血鬼を俺は狩る。
でも吸血鬼からしてみれば食事をしただけだ。
人間が牛や豚を食べるのと一緒。
それなのに問答無用で灰に還して良いものなのだろうか?
母さんは父さんの事もあり人間に味方しているが。
吸血鬼でも、人間でもない俺は……。
永倉が……もし親しい友達が吸血鬼、アンデッドに変わった時、彼らは俺の狩の対象に変わる。
ハンターとしてその時、俺は彼らを滅する事が出来るのか?
「見ぃ~つケた」
思わず隠れた渡り廊下の腰壁から顔を出しもう1度覗いてみる。
永倉が……永倉が藤川の指をくわえている。
「永倉君……離して……」
藤川が手を引こうとしても、永倉が藤川の手首を掴んでいて離さない。
紅潮した藤川の顔が妙に色っぽい……じゃなくて!!
俺は渡り廊下から飛び出すと永倉の肩を掴んだ。
「永倉!!何やってんだ!!」
永倉は、ハッと、我に返ったように肩を揺らすと慌てて藤川の手を離した。
「あ……千鳥?藤川……ご、ごめんっ!!」
永倉は走りさってしまった。
本当に一体何があったというのか?さっきのあの永倉の目は……。
「藤川、永倉がごめんな。何があったんだ?」
真っ赤な顔をした藤川の指には血が滲んでいる。
「永倉君と学祭の事で話してたんだけどプリントで……手を切っちゃって、そしたら……舐めとけば治るって……」
「……指を吸われた?」
一瞬戸惑いを見せた後に藤川はこくんと頷いた。
…………………。
「千鳥君?」
一瞬よぎった嫌な感覚を頭から追い出すと、藤川の手を掴むと水道まで連れていき指を水で流した。
ハンカチで拭くと絆創膏を貼ってやる。
「舐めたってバイ菌が入るだけだってのに、永倉の奴」
「あははっ、大袈裟だよ。ちょっと切っちゃっただけなのに……でもありがとう」
俺に絆創膏を貼った指を見せながら、藤川が微笑んだ。
今日イチの笑顔頂きましたっ!!
「じゃあ、俺は永倉と帰る約束してたから」
興奮で転がり回りたいのを押さえて冷静を装い藤川に手を振った。
手を振り返してくれる藤川、家に持って帰りたい!!
後ろ髪を引かれながら永倉を探しに歩いた。
ーーーーーー
「よぉ…………」
永倉は校舎の裏にあるテニスコート前のベンチにいた。まだサークルは始まってないらしく誰もいない。
うずくまって頭を抱えて座っている横に腰をおろした。
「………最悪だ。ごめん、お前が藤川に惚れてるのしってんのに……俺を殴ってくれ……」
永倉の希望通りに頭をこずいた。
「痛っ!!本当に殴るか?」
「なぁ……お前も藤川の事、好きなのか?」
顔をあげた永倉は俺の真剣な目に気圧される様に目を背けた。
「いや……好き……ではないけど……何か藤川の血を見てたらフラフラと吸い寄せられて……」
……まさか、永倉。
いや……だったら母さんが気づくだろうし、俺も何も感じない。
「血を見てたらって、そういうことよくあるのか?」
まさかと思いながら、慎重に問い詰めていく。
「初めてだ……お前が藤川と萌々菜ちゃんが似てるって言うから、藤川を萌々菜ちゃんの映像と重ねてそういう目で眺めてたせいかもしれない……」
もう一発殴っておいた。
もし永倉が吸血鬼で、人間に危害を加えた時。
俺は今までと同じように引き金を引けるだろうか?
ーーーーーー
「なぁ……母さん。父さんとどんな恋愛して結婚した?」
俺は夕飯を作りながら、猫用のベッドに眠る母さんに何気なく話しかけてみると、尻尾の先が小さくぱたぱたと動いている。
聞かれたくない話題だったのか?
「父さんがもうちょっと良い男だったらなぁ」
俺も美形に生まれてたかもしれない。
『はぁ!?誠一郎さん以上に素敵な男性が他に何処にいるってのさ!!』
母さんは毛を逆立ててお怒りモードに入り、ゆっくり一歩一歩近付いて目は赤く光っている。
やべぇ……本気で怒ってる。普段から怒りっぽいがこれだけの事でそこまで怒るか!?
「や……父さん素敵です!!格好いいです!!」
『じゃあ、誠一郎さんの良いところを50項目、言ってみな』
「えっと……眼鏡?痩せてる?えぇと……優しい……」
どんどん目の光が強くなる……その時、母さんの耳がピクピク動いて玄関へ走って行った。
助かったぁ~。
近付く父さんの気配に救われた。
料理の盛り付けをしていると、
「ミャ~ちゃん、いつもお出迎えありがとうね」
抱っこされてご機嫌な母さんを連れて父さんがリビングの扉を開けた。
「おかえり、父さん」
鞄をソファーに置いてダイニングに来ると嬉しそうに笑って用意されたおかずを見た。
「今日は肉じゃがかい?美夜さんが初めて作ってくれたのも肉じゃがでね。美味しかったなぁ」
母さんとの思い出を嬉しそうに話す父さんに、母さんは恥ずかしそうに「ニャ~」と鳴いて顔を擦り付けている。
母さんは俺達と同じものを食べる。
父さんは最近の猫はそうなんだと言うと、へぇ~と納得して自分の箸で「はい、ミャ~ちゃん」と食べさせたりもしている。
そんな二人を見て、微笑ましくもあり、けっ……とも思う。
ーーーーーー
夜の街を見廻りと称してビルの屋上から街を見下ろしていた。
気配を消しているので周りの人間は俺を気に止めない。
吸血鬼と人間。
仲良くやっている両親二人を見ている分、その垣根がわからなくなる。
まぁ、父さんは母さんが吸血鬼だったと知らなかったからかもしれないが。
人間に危害を加えた吸血鬼を俺は狩る。
でも吸血鬼からしてみれば食事をしただけだ。
人間が牛や豚を食べるのと一緒。
それなのに問答無用で灰に還して良いものなのだろうか?
母さんは父さんの事もあり人間に味方しているが。
吸血鬼でも、人間でもない俺は……。
永倉が……もし親しい友達が吸血鬼、アンデッドに変わった時、彼らは俺の狩の対象に変わる。
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「見ぃ~つケた」
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