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見知らぬ世界
未熟な精神
……外に出るのが怖くなった。
みんなが俺を見て笑ってる気がする。
原因は……高校最後の夏、ずっと好きだった人に密かに抱いていた想いがバレた事。
放課後にその人のリコーダーを舐めてた訳でも、その人の机で自慰をしていた訳でもない。
ただ……突然名前を呼ばれて、振り返ると思いのほか近くに顔があって赤面して飛び退いてしまった、ただそれだけ。
ただそれだけの事だったのに周りにいたクラスメイトにからかわれ、それを慌てて否定した事でさらにからかわれた。
俺の見せた反応が悪かったのか……面白がられ……次第にエスカレートしていく。
最初は俺とその人が廊下ですれ違うだけで囃し立てられるだけだったのに、俺の机にデカデカとハートマーク入りで彼の名前が落書きされたり、明らかに彼とは違う筆跡のラブレターを靴箱いっぱいに詰められたり……なんて暇人なんだと気にしないようにしていたが、もともと近くないその人との距離はさらに遠くなった。
その人がその状況をどう思っていたのかは、何も反応をしてなかったからわからない。
俺がその人を好きでいる事をどう思っているのか……怖くて聞く勇気はなかった。
ずっとずっと……同じクラスでもバレないように意識して見ないようにしていたのに、たまに廊下ですれ違ったりした時に目が合ったりするのがささやかな幸せだったのにそれすら奪われてしまった。
ある朝、教室に入るとクラスメイトのニヤニヤとした視線を一斉に向けられた。
その視線は居心地が悪く、そのまま教室から逃げ出そうとしたが、ノートを開いたくらいの大きさの紙が黒板に貼られているのが目に止まった。
男同士でセックスをしている写真。
その顔の部分には俺とその人の顔が無理やり当て込まれていた。
ここまで悪意のある悪戯をされるぐらい俺の恋心はいけないものだったのか。
気持ちを伝える気も、その人とどうこうなりたいなんて思ってなかったのに……密かに想いを寄せることがこれほど罪なことなのだと教えられた。
『ケツに突っ込まれて気持ちいいの?』とか『気持ち悪いもん見せるなよ』とか心無い言葉に歯を食いしばり、泣き出したいのを堪えながら教室から出て行こうとした時、入ろうとしていた人とぶつかった。
大丈夫?と声をかけられ顔を上げると、それは……俺の大好きだった人。
その事で教室の中の嘲り笑う声はさらに大きくなる。
逃げ出さずに写真を回収して捨てておけばよかった。
あんな写真を見て欲しくない。
あの写真はただの悪戯であって現実ではないけれど……それは俺が夢に見ていた未来でもある。
どれだけ諦めても、どれだけ押し込めても、どれだけかき消しても……『彼に愛されたい』その小さな願いは心に常にあった。
引き止めようと軽く掴んだ彼の服は簡単に指の間をすり抜け黒板に進んでいった彼は、写真を見て心底嫌そうな顔で引きちぎりながら「気持ち悪い」と言った。
細かく破られ、丸められてゴミ箱へ投げ込まれたのは、俺の浅ましい欲望だった。
……そうだよな。
俺の想いは気持ち悪いよな。
俺でもそう思う。
まさか俺も同じ男を好きになるなんて思ってもみなかった。
ーーーーーー
高校一年の春。
入学したてで行われたレクリエーション。
人見知りで誰にも声をかけられず、班決めにあぶれていた俺に声を掛けてくれた唯一の人。
その後もずっと話しかけてくれて、優しく笑いかけてくれた人。
見てるだけで良かったのに……。
長く温めてきたのに、白日の元に晒されてしまった俺の恋心は……彼の『気持ち悪い』の一言で砕け散った。
次の日から……俺は学校へ行けなくなった。
もう彼への想いは忘れようと散々泣いて、自分ではもう消化しきったと思っていたのに、家から出ようとすると手足が震えて動けなくなった。
次の日も……次の日も……玄関で動けなくなる日が続いて、心配そうに理由を聞いてくる親の声は遠く、こんな事で……俺の人生終わったなと目の前にはただモノクロの世界が広がった。
ーーーーーー
秋が過ぎて冬が来ても、相変わらず学校へは行けずにいる。
しかし学校へ行くのでなければ何とか家を出る事は出来る様になったので、家にお金を入れる為に工場内での仕分けバイトで小銭を稼いでいた。
もう高校は中退させてくれて良いのにと思うのだが……あとわずかだからと僅かな希望を託して籍を残してくれている。
いまさら進学なんて無理。
卒業だって危ないのに。
人を好きになってしまった所為で人生は狂った。
もう二度と恋なんてしたくないと思った。
隙を持て余して、オープンワールド等の自由度の高いゲームが乱立する中『原点回帰 古き良き 大作RPG』のコピーが売りの作業ゲーを淡々とこなす。
ゲームの主人公は良いな……決められた道を決められた道筋で進んで行くだけだもんな。
一応『はい』『いいえ』の選択肢は出て来るがどっちを選んでも相手の台詞が変わるだけで物語に支障はない。
「俺もゲームの登場人物ならどんなに楽だったか……」
誰に言うでもなく深く考えていたわけでもない、ただの独り言だったのに……。
『じゃあ……やってみるかい?』
え……?
返事をされたのかと一瞬ドキリとしたが、ゲームの中の台詞とたまたまタイミングが合っただけだった。
それ以上気に留めず、またボタンを押すだけの地味な作業に戻った。
みんなが俺を見て笑ってる気がする。
原因は……高校最後の夏、ずっと好きだった人に密かに抱いていた想いがバレた事。
放課後にその人のリコーダーを舐めてた訳でも、その人の机で自慰をしていた訳でもない。
ただ……突然名前を呼ばれて、振り返ると思いのほか近くに顔があって赤面して飛び退いてしまった、ただそれだけ。
ただそれだけの事だったのに周りにいたクラスメイトにからかわれ、それを慌てて否定した事でさらにからかわれた。
俺の見せた反応が悪かったのか……面白がられ……次第にエスカレートしていく。
最初は俺とその人が廊下ですれ違うだけで囃し立てられるだけだったのに、俺の机にデカデカとハートマーク入りで彼の名前が落書きされたり、明らかに彼とは違う筆跡のラブレターを靴箱いっぱいに詰められたり……なんて暇人なんだと気にしないようにしていたが、もともと近くないその人との距離はさらに遠くなった。
その人がその状況をどう思っていたのかは、何も反応をしてなかったからわからない。
俺がその人を好きでいる事をどう思っているのか……怖くて聞く勇気はなかった。
ずっとずっと……同じクラスでもバレないように意識して見ないようにしていたのに、たまに廊下ですれ違ったりした時に目が合ったりするのがささやかな幸せだったのにそれすら奪われてしまった。
ある朝、教室に入るとクラスメイトのニヤニヤとした視線を一斉に向けられた。
その視線は居心地が悪く、そのまま教室から逃げ出そうとしたが、ノートを開いたくらいの大きさの紙が黒板に貼られているのが目に止まった。
男同士でセックスをしている写真。
その顔の部分には俺とその人の顔が無理やり当て込まれていた。
ここまで悪意のある悪戯をされるぐらい俺の恋心はいけないものだったのか。
気持ちを伝える気も、その人とどうこうなりたいなんて思ってなかったのに……密かに想いを寄せることがこれほど罪なことなのだと教えられた。
『ケツに突っ込まれて気持ちいいの?』とか『気持ち悪いもん見せるなよ』とか心無い言葉に歯を食いしばり、泣き出したいのを堪えながら教室から出て行こうとした時、入ろうとしていた人とぶつかった。
大丈夫?と声をかけられ顔を上げると、それは……俺の大好きだった人。
その事で教室の中の嘲り笑う声はさらに大きくなる。
逃げ出さずに写真を回収して捨てておけばよかった。
あんな写真を見て欲しくない。
あの写真はただの悪戯であって現実ではないけれど……それは俺が夢に見ていた未来でもある。
どれだけ諦めても、どれだけ押し込めても、どれだけかき消しても……『彼に愛されたい』その小さな願いは心に常にあった。
引き止めようと軽く掴んだ彼の服は簡単に指の間をすり抜け黒板に進んでいった彼は、写真を見て心底嫌そうな顔で引きちぎりながら「気持ち悪い」と言った。
細かく破られ、丸められてゴミ箱へ投げ込まれたのは、俺の浅ましい欲望だった。
……そうだよな。
俺の想いは気持ち悪いよな。
俺でもそう思う。
まさか俺も同じ男を好きになるなんて思ってもみなかった。
ーーーーーー
高校一年の春。
入学したてで行われたレクリエーション。
人見知りで誰にも声をかけられず、班決めにあぶれていた俺に声を掛けてくれた唯一の人。
その後もずっと話しかけてくれて、優しく笑いかけてくれた人。
見てるだけで良かったのに……。
長く温めてきたのに、白日の元に晒されてしまった俺の恋心は……彼の『気持ち悪い』の一言で砕け散った。
次の日から……俺は学校へ行けなくなった。
もう彼への想いは忘れようと散々泣いて、自分ではもう消化しきったと思っていたのに、家から出ようとすると手足が震えて動けなくなった。
次の日も……次の日も……玄関で動けなくなる日が続いて、心配そうに理由を聞いてくる親の声は遠く、こんな事で……俺の人生終わったなと目の前にはただモノクロの世界が広がった。
ーーーーーー
秋が過ぎて冬が来ても、相変わらず学校へは行けずにいる。
しかし学校へ行くのでなければ何とか家を出る事は出来る様になったので、家にお金を入れる為に工場内での仕分けバイトで小銭を稼いでいた。
もう高校は中退させてくれて良いのにと思うのだが……あとわずかだからと僅かな希望を託して籍を残してくれている。
いまさら進学なんて無理。
卒業だって危ないのに。
人を好きになってしまった所為で人生は狂った。
もう二度と恋なんてしたくないと思った。
隙を持て余して、オープンワールド等の自由度の高いゲームが乱立する中『原点回帰 古き良き 大作RPG』のコピーが売りの作業ゲーを淡々とこなす。
ゲームの主人公は良いな……決められた道を決められた道筋で進んで行くだけだもんな。
一応『はい』『いいえ』の選択肢は出て来るがどっちを選んでも相手の台詞が変わるだけで物語に支障はない。
「俺もゲームの登場人物ならどんなに楽だったか……」
誰に言うでもなく深く考えていたわけでもない、ただの独り言だったのに……。
『じゃあ……やってみるかい?』
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返事をされたのかと一瞬ドキリとしたが、ゲームの中の台詞とたまたまタイミングが合っただけだった。
それ以上気に留めず、またボタンを押すだけの地味な作業に戻った。
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