俺のスキルがエロゲー仕様で泣けてくる

藤雪たすく

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見知らぬ世界

踏み出せ一歩

ここでこうしていても何も始まらないのは分かってる……けど、別に何も始めたくない。

ベッドの上でゴロゴロしていたら『ギャオオオン』とけたたましい叫び声と共に牛みたいなでっかい怪物が現れた。

ひっ!!こんな怪物もいる世界なのかよ!?
飛び起きてベッドのヘッド部分にしがみつき、夢なら早く覚めろと祈り続けた。

しかし……怪物は俺が見えていないのか気にも留めずに横を通り過ぎていく。

助かった。
ほっと息を吐いたのも束の間。

「いたぞ!!グレートホーンブルだ!!」

数人の人間が飛び出してきた。

第一村人発見だ……村人か知らないけど。

人間達にも俺の姿は見えていないのか、ベッドの上で身を固める俺の目の前でバトルが勃発した。


しかし怪物も人も、それぞれ光の輪の中に立って動こうとしない。

カチャカチャと音がして、俺からは死角で見えない位置にいる人物が何かをやっている。

そのうち一人の男の頭上にコマンドが現れ『攻撃』『魔法』『道具』『防御』『逃げる』から『攻撃』が選択された。

その文字通り男が剣で攻撃をする。

別の男は『魔法』→『火火』
男の手から炎が吹き出し怪物へと走る。

次の男は『攻撃』で武道家らしく拳を叩き込む。

最後の男は『防御』が選択されて、その文字通りに男は身を守ように盾で体を隠した。


男たちの攻撃が終わると、大人しく全ての攻撃を受けていた怪物の頭上に同じ様なウィンドウが開いて『攻撃』と表示された。

怪物が一人の男に向けて突進をした。

吹き飛ばされた男は立ち上がると定位置の光の輪の中に戻っていく。

平然と立っているがHPと書かれたバーが少し下がった。
そうしてまた、男達の攻撃が再開したようで先ほどと同じように男たちの頭上に文字が現れる。

まるでゲームのターン制のバトルをリアルで見ているみたいだ。

剣を持った男の攻撃にクリティカルがついて怪物がようやく倒れた。

血が吹き出すことは無く、怪物の体は煙になって後には毛皮と角と肉が落ちていた。
スプラッターを見なくて済んで良かった。

「やった!肉ゲットだ!!食糧が心もと無かったから助かるな」

男達は大きな肉の塊を小さな鞄に質量無視で詰め込んでいく。

目の前で起こった出来事に呆然としていたが……せっかく出会えた人間が行ってしまう!

男達は強そうだし、どこか安全な場所まで連れていって欲しいと願いつつベッドから飛び降りた。

「待って下さい!!」

「うわっ!!何だいきなり!!お前は誰だ!?」

突然現れた俺に、男達は一斉に剣を構え頭上にさっき見た戦闘コマンドが浮び上がる。

「あっ!怪しい者じゃありません!!助けて欲しいんです!!」

止めて!攻撃しないで!!と慌てて手を振って訴えた。

たとえ夢でも殺されたりしたくない。
なるべくなら穏便に目を覚ましたいものだ。

「ん?お前コントローラーか?従者はどうした?」

コントローラー?従者?
男は俺が持っていたコントローラーに目を向けると首を傾げた。

分かんないけど、男達の上からコマンドが消えて取り敢えず攻撃の意志は消えて難は去ったみたいだ。

「成り立てのコントローラーさん……なのかな?こんなところでどうしたの?」

屈強な男達に守られる様に隠されていた線の細い男が顔を出した。
優しそうなその男の雰囲気に緊張して握りしめていた拳から力が抜けた。
ひとまず話は聞いてくれるようだ。


「気がついたらここにいて……ここは何処ですか?あの……コントローラーとか従者って何ですか?俺はそのコントローラーってやつなんですか?」

ひとまず自分の置かれている状況を知りたい。

矢継ぎ早に質問を投げかけた俺に、男達に憐れみの表情が浮かぶ。


「記憶喪失か?」

「……こんな森の奥にコントローラーが1人でいるなんて考えづらい。だけど近くに従者らしき気配もないし……もしかしたら戦闘で従者を亡くしたショックで記憶が……」

男達は顔を見合わせ黙り込んだ。

なんか事件の被害者みたいに勘違いをされているっぽい。
下手に否定してさらに怪しまれては困るので記憶喪失なんたらはスルーして、質問を再開した。
「あの……この場所は何なんでしょうか?何かのテーマパークとかでしょうか?」

そんなわけないと思いながら、そうであって欲しいと話の通じそうな細身の男をみつめると周りの男達がそれとなく俺とその男との間に割って入って凄く怪しんだ目を向けられる。

「テーマパーク?ここはナチャロヤの森だ。これは大分ヤバそうだぞ?変わった服を着ているし……」

俺からしたらそっちの方が変な服なんだけど……。

その時、ピコンと音がしてマップが浮き上がり赤い丸の上に『ナチャロヤの森』という文字が浮かび上がった。
どうやら情報を得ると、このマップは埋められていくのだろう。

このマップは男達には見えないらしく、虚空を見つめる俺に不審な視線を投げてくる男達のヒソヒソとした会話が途切れ途切れに聞こえる。

「何か企んでいるんじゃないか?」
「メニューを開いているみたいだ……記憶喪失がただの振りで、親切にしたところを背後から……」

眉を潜めた男達の壁を先ほどの男が割って俺の前に立った。
「まぁまぁ……勘繰り過ぎだよ。こんな可愛いコントローラーさんなのに……同じコントローラー同士助け合おう?僕はローラン。何でも聞いてね」

ローランと名乗った男はそう言って俺の手を握ってくれて……俺が可愛いかどうかはさておき、地獄に仏と言う言葉通りローランの笑顔は慈愛に満ちていた。
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