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初めての従者
従者志願
「ミャオちゃん、待ってよ!まだ誰とも契約してないんでしょう?俺を従者にしてよ!」
何でここにこの人がいるんだよ。
しつこくついてくる男を無視して街の外へ向かう。
あの人がこんなところにいるわけ無い……俺を追いかけてくるなんてあり得ない。
他人のそら似……もしくは、やっぱり夢だ!
いつまでも諦めきれない往生際の悪い俺のバカな夢。
覚めろ、覚めろと願いながら足を進める。
早く他の誰かに従者をお願いしようと思ったけど、この人が登場してから他の冒険者の人達は遠巻きにこちらを見ていて、俺が近付くと嫌な顔をして逃げていってしまう。
さっきまであんなに話しかけてくれたのに、まるで高校の時みたいな……違う世界でも俺は周りから避けられるんだ。
「ねぇミャオちゃん、俺にしておこうよ?俺を従者にしないなんて設定してないよ?」
「?……設定??」
「やっとこっちを向いてくれた」
振り向いた顔を両手で挟み込まれた。
「ミャオちゃんが俺と接続してくれない世界なんて……消去しちゃいそう」
「勝利……君?」
今まで見たこと無いような怒りを湛えた怖い顔に体が固まる。
いつもにこにこしていた印象で、こんな顔は見たこと無い。
笑顔以外で見た表情といえば……
「はっ……離して!!」
あの日のあの顔が頭の中によみがえり、手を払って逃げ出した。
「ミャオちゃんっ!!」
もうその呼び名を聞きたくなくて、耳を塞いで街を飛び出した。
「はぁ……はぁ……」
ここまでくれば……。
街から離れ街道から外れた林の中に身を隠した。
周りに彼の姿がないのを確認して、鞄にしまったコントローラを取り出そうと手を入れた時……ぽたんと頭の上に何かが落ちた。
鳥のフン?
見上げるとそこには……。
『ぐるるるる……』
「あ……あ……」
腰から力が抜け落ちて、思わずその場にへたり込んだ。
『レッドドラゴンが現れた』冷静に目の前に浮かぶ文字。
ド……ドラゴン!?
3階建ての家ぐらいのドラゴンが涎を垂らしてこちらを見ている。
こんな街の側でこんなデカいモンスターが出るのかよ!?
ドラゴンといえばゲームではボスクラスか物語終盤の敵が定説だろうに。
腰が抜けて……動けない。
鞄に突っ込んだ手が固い物に触れた。
コントローラーだ。
ローラン達の戦いを思い出し、コマンド入力のターン制バトルなら勝ち目はなくても運が良ければ逃げられるかもしれないと、しっかりとコントローラーを掴んだ。
しかし、コマンドメニューが現れる事はない。
『どんなに屈強な戦士でも攻撃出来ずにモンスターに一方的にやられるか逃げ回るしかないね。コントローラーは従者無しでは戦えないし、従者もコントローラー無しでは戦えない』
ローランの言葉が頭に過る。
戦えない……やられるだけ。
ドラゴンが腕を振り上げたのを見ながら逃げ出す事も出来ずにただ体を震わせた。
もうどうでもいいと思っていた。
俺の人生なんてもう終わったと思ってた。
いつ死んだって構わないと思っていたけれど……怖い、怖い、怖い、怖い、怖い!!!死にたくないっ!!!!
ドラゴンの手が振り下ろされ、ギュッと目を瞑った時、
「ミャオちゃんっ!!!!」
俺の上に何かが覆い被さって来て……目を開けた俺の前を真っ赤な血が舞った。
「……勝利君?」
強く抱きしめられている……ドラゴンの攻撃はまだ続いていて、その衝撃が伝わって来る。
熱い液体は俺の服にもじわじわと染み込んで来る。
ローラン達が戦っていた時はやられても血なんて出なかった。
勝利君は剣を持っていたのに何で戦わないの?
どうして俺なんかを庇うの?
勝利君の頭の上にはゲージが現れていて……バーが減って、赤く光り始める。
「勝利君やめてよ!!死んじゃうよ!!」
「……ミャオちゃん……俺を従者に…野営を……」
野営そうか……でも俺だけ野営しても……いや、考えてる暇はない!!
鞄の中で片手で何とか操作してメニューから『野営』を選択した。
ドラゴンの爪が触れる寸前で足元からベッドが現れて、見えない壁にドラゴンの爪は弾かれた。
ドラゴンは不思議そうに辺りを見回しながら周囲をうろつき始めた。
勝利君も一緒にベッドの上にいた。
触れていれば一緒に野営が出来るのか……ベッドも何だかキングサイズ?みたいに二人用に大きくなってる。
取りあえず助かった……のかな?
しかし依然として勝利君のゲージは赤く光っているままだ。
「勝利君……しっかりして……」
どうすれば良いんだろう?
俺は回復アイテムなんて持ってないし、助けを呼ぶにもドラゴンがまだいるし。
「俺の鞄……貸して……」
ベッドの上に一緒に転がっていた鞄を勝利君の手元に置くと中からキレイな瓶を取り出し中身を一気に飲み干した。
シュウシュウと音を立てて傷が塞がっていくのが見えた。
すごい薬だな。
「ありがとう……ミャオちゃん」
それでもまだゲージは満タンではないが、力無く笑う勝利君の体を確かめてみると傷は全て塞がっている様だった。
「……何で俺なんか庇ったの?」
「どうしてもミャオちゃんの従者になって君を守りたかったからだよ……街に戻るにも戦えないとミャオちゃんを守れないし……お願い、俺を従者にして?」
手を握られて……ローランは従者の解約も出来るって言ってたのを思い出す。
街に帰るため、街に帰るため……勝利君が治療を受けている間に従者を解約すれば良いんだ。
自分に言い聞かせて……頷いた。
「従者の契約ってどうしたらいいのかな?」
「本当に俺が初めてなんだ……嬉しいなぁ」
にこにこ笑いながら体を入れ替え、勝利君は俺をベッドに寝かせた。
「コントローラーで『スキル』から『接続』を選んで……」
言われた通りに操作すると
『魔法剣士ショーリと接続しますか?』
→『はい』 『いいえ』
『はい』を選んだ瞬間……ドクンと血管が大きく脈打ち体が熱くなる。
ドクンドクンと心臓が騒ぎ出す。
「な……何?これ……」
「ミャオちゃん……俺と最高の接続しよう?」
俺の上に覆い被さって来る勝利君の顔は……あの日の優しい笑顔だった。
何でここにこの人がいるんだよ。
しつこくついてくる男を無視して街の外へ向かう。
あの人がこんなところにいるわけ無い……俺を追いかけてくるなんてあり得ない。
他人のそら似……もしくは、やっぱり夢だ!
いつまでも諦めきれない往生際の悪い俺のバカな夢。
覚めろ、覚めろと願いながら足を進める。
早く他の誰かに従者をお願いしようと思ったけど、この人が登場してから他の冒険者の人達は遠巻きにこちらを見ていて、俺が近付くと嫌な顔をして逃げていってしまう。
さっきまであんなに話しかけてくれたのに、まるで高校の時みたいな……違う世界でも俺は周りから避けられるんだ。
「ねぇミャオちゃん、俺にしておこうよ?俺を従者にしないなんて設定してないよ?」
「?……設定??」
「やっとこっちを向いてくれた」
振り向いた顔を両手で挟み込まれた。
「ミャオちゃんが俺と接続してくれない世界なんて……消去しちゃいそう」
「勝利……君?」
今まで見たこと無いような怒りを湛えた怖い顔に体が固まる。
いつもにこにこしていた印象で、こんな顔は見たこと無い。
笑顔以外で見た表情といえば……
「はっ……離して!!」
あの日のあの顔が頭の中によみがえり、手を払って逃げ出した。
「ミャオちゃんっ!!」
もうその呼び名を聞きたくなくて、耳を塞いで街を飛び出した。
「はぁ……はぁ……」
ここまでくれば……。
街から離れ街道から外れた林の中に身を隠した。
周りに彼の姿がないのを確認して、鞄にしまったコントローラを取り出そうと手を入れた時……ぽたんと頭の上に何かが落ちた。
鳥のフン?
見上げるとそこには……。
『ぐるるるる……』
「あ……あ……」
腰から力が抜け落ちて、思わずその場にへたり込んだ。
『レッドドラゴンが現れた』冷静に目の前に浮かぶ文字。
ド……ドラゴン!?
3階建ての家ぐらいのドラゴンが涎を垂らしてこちらを見ている。
こんな街の側でこんなデカいモンスターが出るのかよ!?
ドラゴンといえばゲームではボスクラスか物語終盤の敵が定説だろうに。
腰が抜けて……動けない。
鞄に突っ込んだ手が固い物に触れた。
コントローラーだ。
ローラン達の戦いを思い出し、コマンド入力のターン制バトルなら勝ち目はなくても運が良ければ逃げられるかもしれないと、しっかりとコントローラーを掴んだ。
しかし、コマンドメニューが現れる事はない。
『どんなに屈強な戦士でも攻撃出来ずにモンスターに一方的にやられるか逃げ回るしかないね。コントローラーは従者無しでは戦えないし、従者もコントローラー無しでは戦えない』
ローランの言葉が頭に過る。
戦えない……やられるだけ。
ドラゴンが腕を振り上げたのを見ながら逃げ出す事も出来ずにただ体を震わせた。
もうどうでもいいと思っていた。
俺の人生なんてもう終わったと思ってた。
いつ死んだって構わないと思っていたけれど……怖い、怖い、怖い、怖い、怖い!!!死にたくないっ!!!!
ドラゴンの手が振り下ろされ、ギュッと目を瞑った時、
「ミャオちゃんっ!!!!」
俺の上に何かが覆い被さって来て……目を開けた俺の前を真っ赤な血が舞った。
「……勝利君?」
強く抱きしめられている……ドラゴンの攻撃はまだ続いていて、その衝撃が伝わって来る。
熱い液体は俺の服にもじわじわと染み込んで来る。
ローラン達が戦っていた時はやられても血なんて出なかった。
勝利君は剣を持っていたのに何で戦わないの?
どうして俺なんかを庇うの?
勝利君の頭の上にはゲージが現れていて……バーが減って、赤く光り始める。
「勝利君やめてよ!!死んじゃうよ!!」
「……ミャオちゃん……俺を従者に…野営を……」
野営そうか……でも俺だけ野営しても……いや、考えてる暇はない!!
鞄の中で片手で何とか操作してメニューから『野営』を選択した。
ドラゴンの爪が触れる寸前で足元からベッドが現れて、見えない壁にドラゴンの爪は弾かれた。
ドラゴンは不思議そうに辺りを見回しながら周囲をうろつき始めた。
勝利君も一緒にベッドの上にいた。
触れていれば一緒に野営が出来るのか……ベッドも何だかキングサイズ?みたいに二人用に大きくなってる。
取りあえず助かった……のかな?
しかし依然として勝利君のゲージは赤く光っているままだ。
「勝利君……しっかりして……」
どうすれば良いんだろう?
俺は回復アイテムなんて持ってないし、助けを呼ぶにもドラゴンがまだいるし。
「俺の鞄……貸して……」
ベッドの上に一緒に転がっていた鞄を勝利君の手元に置くと中からキレイな瓶を取り出し中身を一気に飲み干した。
シュウシュウと音を立てて傷が塞がっていくのが見えた。
すごい薬だな。
「ありがとう……ミャオちゃん」
それでもまだゲージは満タンではないが、力無く笑う勝利君の体を確かめてみると傷は全て塞がっている様だった。
「……何で俺なんか庇ったの?」
「どうしてもミャオちゃんの従者になって君を守りたかったからだよ……街に戻るにも戦えないとミャオちゃんを守れないし……お願い、俺を従者にして?」
手を握られて……ローランは従者の解約も出来るって言ってたのを思い出す。
街に帰るため、街に帰るため……勝利君が治療を受けている間に従者を解約すれば良いんだ。
自分に言い聞かせて……頷いた。
「従者の契約ってどうしたらいいのかな?」
「本当に俺が初めてなんだ……嬉しいなぁ」
にこにこ笑いながら体を入れ替え、勝利君は俺をベッドに寝かせた。
「コントローラーで『スキル』から『接続』を選んで……」
言われた通りに操作すると
『魔法剣士ショーリと接続しますか?』
→『はい』 『いいえ』
『はい』を選んだ瞬間……ドクンと血管が大きく脈打ち体が熱くなる。
ドクンドクンと心臓が騒ぎ出す。
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俺の上に覆い被さって来る勝利君の顔は……あの日の優しい笑顔だった。
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