俺のスキルがエロゲー仕様で泣けてくる

藤雪たすく

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空いた従者枠

役に立たない防衛機能

騒がしい食事を終えて食堂を出ると、勝利君が俺の手にずしりと重い何かの袋を乗せてきた。

「何、これ?」

「持ってても食べられないし、モフルキャットの毛皮をギルドで換金してきたんだ。買いたいものがあったらそれで買えるよ」

これは勝利君の……と言いかけてやめた。
このくだりは前にもやった無駄な攻防だ。
俺がお金を預かってるって体で勝利君が使う時に出せばいいやと、鞄の中へしまった。

『チャリーン』という音とともに『所持金 930,000円』という文字が目の前に現れる。

「きゅっ!!93万円っ!?」

勝利君が『お小遣い』みたいな顔して渡してくるから数千円、いっても一万円くらいだろうと思っていたので桁違いな数字に目が飛び出すかと思った。

「もう!ミャオちゃんは無用心だなぁ……大声で自分の所持金言うもんじゃないよ?悪い人に狙われちゃうじゃん」

勝利君に怒られて、慌てて口を抑えて周りを見ると、周囲にいた人たちの目がギラついて見えて……慌てて勝利君の後ろへ隠れた。

でも93万って……モフルキャットの毛皮は確かにいっぱいドロップしたけど、だからってたった1日分のドロップで多すぎじゃないか?

「魔物の素材は基本高額だからね。ちなみにミャオちゃんの鞄に入ってるドラゴンの素材はそれだけで100万超えるから落とさないように気をつけてね」

勝利君の一撃が100万円……。
ゴクリと唾を飲み込んで肩から下げていた鞄を胸に抱いた。

「さっき食べたパスタが750円だったから……お金の価値は同じぐらい?」

「うん。この金額を冒険者以外の人間が稼ぐには結構な努力がいるよね」

冒険者はこの世界ではかなりの高額所得者になるみたいだけど……コントローラーがいなければ冒険者としてはやっていけない。
コントローラーの力を持った人間はかなり少ないらしい。

『作物を育てたり、物を作って売るより割がいい』ローランも確かそう言っていた、手っ取り早く大金が手に入る……さっき囲まれた人たちのギラギラした目つきの理由がわかった気がした。

「ミャオちゃんの優しさに付け込んで病気の母親を救う為にお金がいるとか、殺された家族の敵を討ちたいとか……そういう泣き落としで迫ってくるかもね」

ニコッと笑って勝利君は小首を傾げた。

うぅ……そんな見えすいた泣き落としに引っかからないよ!!と大声で言い切れないのが寂しい。

「ミャオちゃん?でももし……気になる人がいたら……俺に気を使わずに従者にしてもいいんだよ?」
耳元で囁かれた勝利君の言葉に頭を殴られた様な感覚を覚えた。

俺の事を思って、俺の気持ちを優先してくれるっていう優しさのつもりなんだろうけど……ちょっと悲しい。

「ミャオちゃんが早く魔王を倒して現実の世界に帰りたいなら、仲間を増やしていく事も考えないとね」

「別に……他の従者なんていらない……」

他の従者はいらない……でも魔王は倒したい。
帰るためと割り切って従者を増やすべきなのか、でも……そこまでなりふり構わずやって、元の世界に戻る事は本当に幸せなのかな?
契約の為と割り切れたとして、勝利君の見ている前で他の人と……?

想像もしたくないと頭を振って追い出した。


「じゃあミャオちゃんは俺の専属コントローラーね」
呑気な声と共にいきなりお尻を撫でられて、反射的にコントローラーで勝利君の頭をまた叩いてしまった。

「ミャオちゃんはお尻まで可愛い~」
ヘラヘラ笑う勝利君とは距離をおいて歩く。
従魔達を引き連れてゆったりと歩く勝利君の様子を伺った。

き……気づかれてないかな?

いくらレベルが上がったからって、感度が良くなったからって……。
ダボダボとした服で良かった。

勝利君にお尻を撫でられただけで勃ってしまうなんて淫乱すぎないか?
……バレる前に鎮まれ、鎮まれ。

精神を統一させながら歩いていると横からスッと男の人が隣に並んできた。

「あの男とは喧嘩でもしたのか?俺は三つ先の街から命がけでこの街にやってきたんだ。どうかな?俺に乗り換えないか?」

勝利君とは少し離れて歩いているだけなのに……この人たちどんだけ必死なんだ。

「ケンカなんてしてませんから、ほっといてください」

そう言ったところで離れてはくれない。
ずっと横で自分を売り込んでくる男にうんざりする……お陰様でナニは鎮ってくれたからいいけど。
ローランの従者達がローランを取り囲む様にして歩いていたのはこの為か、コントローラーの空き従者枠をみんな躍起になって狙っている。


全く話を聞いてなかった俺が悪いんだけど……いきなり男に腰を抱かれ撫で回されて、ゾワゾワッと総毛立った。

防衛機能ちゃんと働け!!

「さ……触んなっ!!」
男を振り払おうと振り抜いたコントローラは……なぜか勝利君の後頭部に当たった。

「あ、ごめん!!勝利君」
俺と男の間に勝利君が助けに入ってきてくれて……それに気付かず勝利君を叩いてしまった。

普段散々ボコボコにしているけど助けに来てくれたのに申し訳なくてコブなど出来てないか確かめようと伸ばした手を掴まれた。

「いつもより痛い……ミャオちゃんってば俺の時は甘噛み?もぉ甘えん坊さん」

……ん、大丈夫そうだな。

「でもまあ、ミャオちゃんの物は暴力であっても受け取れるのは俺だけだからさ……悪いけどあんた消えてくれる?」

勝利君!!顔!!顔めっちゃ恐いです!!
まるでヤンキーの様な相手を見下した薄笑いの顔に俺までガタガタと体を震わせてしまった。

「すっ!すいませんでしたっ!!」

逃げていく男の後ろ姿を見送り……俺も一緒に逃げたい!!
発せられる黒いオーラにビクつきながら勝利君がどう動くのか背中を見つめて待っていた。


……薄々感じてきてたけど勝利君って結構恐い人?

優しい姿しか知らなかった。
勝利君の事何も知らなかった。

結局あの日の事は俺の勘違いで……ちゃんと話しをすれば勝利君はちゃんと答えてくれる。
沢山の人との接続を望んでるとか新しいコントローラーを探しているとか、全ては俺の勘違い。

こんなに勝利君の事を知らないのに、あんなに悩んでイジイジ引きこもって人生を棒に振るような事をして……勝利君の事を知ろうともしないで、どうして好きだなんて言えたんだろう。

今も勝利君の事……何も分かってない。

勝利君は……俺の何を好きになってくれたんだろう?
感想 3

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