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幻の魔王
誰の為のエンディング
戦闘終了と共に傷口から血が吹き出し、崩れ落ちたミャオの身体を勝利君が抱きしめた。
俺は……ゆっくりと二人に近づいた。
「ミャオちゃんはあと数分ももたない。そうすればきっと元の世界へ続く道が開かれるはず……だから……」
「だから『お前一人で帰ってくれ』って?」
俺の言葉に勝利君は驚いたように顔を上げた。
何を驚いてるの?
俺の事を知りたいと言った勝利君と同じ様に、俺だって君の事をいっぱい知りたくて君を見てきた。
勝利君が考えそうな事だって、いつもいっぱい考えてきたんだ。
勝利君が……大切なミャオちゃんを捨てて行けないって事だって、元の世界へ帰れる方法があるのに帰りたいと言った俺の願いを無視して、この世界へ縛り付けておく事も出来ない事だってわかってる。
「わかってたなら……お願い。俺は……俺が作り出したこの子を一人を不幸にして、おいては行けない」
勝利君がミャオの手を握るとミャオが薄っすらと瞳を開いた。
死に向かう、最後の最後まで笑顔を崩さない。
「ショーリ君……駄目。俺ではショーリ君を幸せに出来ないの……悲しかったけど……俺は宮尾君へのショーリ君の愛から生まれたから、ショーリ君が宮尾君を変わらず愛してるの……それは同時に俺の事を愛してくれてるんだって……今はわかってる」
「ミャオちゃん……ごめん」
「俺は宮尾君、宮尾君は俺。ショーリ君が宮尾君を愛し続ける限り、俺は宮尾君と一緒に愛され続けられる……ショーリ君……宮尾君と……帰って……」
本当に……嫌になるぐらい俺。
俺だって勝利君がミャオを大切にしてくれるのは俺の事を愛してくれているからだって嬉しくは思う。
ただ……俺は君より貪欲だ。
再び目を閉じたミャオの身体が足元から小さな光の文字になって消え始め……それらが集まって光の渦を作り出して行く。
「それがきっと元の世界へ続く道になる。宮尾……俺の事は忘れて……宮尾ならきっと幸せになれるから……」
ミャオの最期の言葉も勝利君の決断を崩す事は出来なかった。
周りの景色も次第に光を帯びて……崩れ始める。
この世界も、世界を作ったミャオと共に消えさろうとしている。
そして……勝利君も一緒に……。
嘘つき……嘘つき……嘘つき!!
「その子と心中する気?」
唇を噛み締めた無言が肯定を示していた。
崩れ去る世界と共に勝利君も消えていくつもりだ。
ずっと俺の従者だって言ってくれたのに。
俺を幸せにしてくれるって言ったのに。
いきなり一人で投げ出された……これのどこが幸せなんだ。
「……最低最悪なゲームだと思ったけど……エンディングまで最低だよ。誰も幸せになれない……究極のバッドエンドじゃないか」
俺と勝利君が魔王を消して共に元の世界へ帰ることを望む、ミャオの願いも。
勝利君と共に元の世界へ帰ることを望む、俺の願いも。
俺とミャオの願いが叶う事を望む、勝利君の願いも。
……誰の願いも叶わないエンディング。
ミャオの体はもう半分まで消えていて、元の世界への道も人が通れそうな大きさまで出来上がってきている。
魔王を倒した俺は……ミャオの考えたストーリー通り、元の世界へ戻されようとしている体が少しづつ渦へと引かれ出した。
足を踏ん張っても無駄で身体が後退していく。
勝利君の腕を掴んで無理やり引っ張って連れて行く……のは俺の力では無理だろう。
ただ一つの願いを叶える為に捨てなければならない物が大きすぎるけれど……今の俺に思いつく方法はこれしかない。
勝利君がバッドエンドを望んでも、無理やりにでもこんな終わり方は書き換えてやる……俺はコントローラーを握りしめた。
俺とミャオの決定的な違い。
ミャオは勝利君が俺ならこうするだろう、俺がこうだったら良いと理想を積み上げて作った俺だ。
ミャオも勝利君の理想の姿であり続けようとする。
元々が勝利君の望みを叶えるために生み出させれた存在だったから。
今の勝利君の望みは『俺が元の世界へ戻る事』なんだろう。
俺は……例え勝利君の望み通りじゃ無いとわかっていても、君から恨まれる結果になるとわかっていたとしても……。
「勝利君、俺は君の専属コントローラーなんだろ?」
「宮尾、早く行ってくれ……この世界が消える前に!!」
俺にはミャオみたいに綺麗な笑顔でサヨナラなんて出来ない……。
「俺を捨てるなんて許さない」
俺は俺の幸せの為の選択が出来る。
俺は一人では何も出来ないコントローラーだけど。
従者が居なくても出来る事がある。
もうミャオの姿は肩から上を残すだけで、俺を吸い込もうとする渦がローブの裾を飲み込んだ。
悩んでいる時間はもう無い。
俺は……覚悟を決めて決定ボタンを押し込んだ。
俺は……ゆっくりと二人に近づいた。
「ミャオちゃんはあと数分ももたない。そうすればきっと元の世界へ続く道が開かれるはず……だから……」
「だから『お前一人で帰ってくれ』って?」
俺の言葉に勝利君は驚いたように顔を上げた。
何を驚いてるの?
俺の事を知りたいと言った勝利君と同じ様に、俺だって君の事をいっぱい知りたくて君を見てきた。
勝利君が考えそうな事だって、いつもいっぱい考えてきたんだ。
勝利君が……大切なミャオちゃんを捨てて行けないって事だって、元の世界へ帰れる方法があるのに帰りたいと言った俺の願いを無視して、この世界へ縛り付けておく事も出来ない事だってわかってる。
「わかってたなら……お願い。俺は……俺が作り出したこの子を一人を不幸にして、おいては行けない」
勝利君がミャオの手を握るとミャオが薄っすらと瞳を開いた。
死に向かう、最後の最後まで笑顔を崩さない。
「ショーリ君……駄目。俺ではショーリ君を幸せに出来ないの……悲しかったけど……俺は宮尾君へのショーリ君の愛から生まれたから、ショーリ君が宮尾君を変わらず愛してるの……それは同時に俺の事を愛してくれてるんだって……今はわかってる」
「ミャオちゃん……ごめん」
「俺は宮尾君、宮尾君は俺。ショーリ君が宮尾君を愛し続ける限り、俺は宮尾君と一緒に愛され続けられる……ショーリ君……宮尾君と……帰って……」
本当に……嫌になるぐらい俺。
俺だって勝利君がミャオを大切にしてくれるのは俺の事を愛してくれているからだって嬉しくは思う。
ただ……俺は君より貪欲だ。
再び目を閉じたミャオの身体が足元から小さな光の文字になって消え始め……それらが集まって光の渦を作り出して行く。
「それがきっと元の世界へ続く道になる。宮尾……俺の事は忘れて……宮尾ならきっと幸せになれるから……」
ミャオの最期の言葉も勝利君の決断を崩す事は出来なかった。
周りの景色も次第に光を帯びて……崩れ始める。
この世界も、世界を作ったミャオと共に消えさろうとしている。
そして……勝利君も一緒に……。
嘘つき……嘘つき……嘘つき!!
「その子と心中する気?」
唇を噛み締めた無言が肯定を示していた。
崩れ去る世界と共に勝利君も消えていくつもりだ。
ずっと俺の従者だって言ってくれたのに。
俺を幸せにしてくれるって言ったのに。
いきなり一人で投げ出された……これのどこが幸せなんだ。
「……最低最悪なゲームだと思ったけど……エンディングまで最低だよ。誰も幸せになれない……究極のバッドエンドじゃないか」
俺と勝利君が魔王を消して共に元の世界へ帰ることを望む、ミャオの願いも。
勝利君と共に元の世界へ帰ることを望む、俺の願いも。
俺とミャオの願いが叶う事を望む、勝利君の願いも。
……誰の願いも叶わないエンディング。
ミャオの体はもう半分まで消えていて、元の世界への道も人が通れそうな大きさまで出来上がってきている。
魔王を倒した俺は……ミャオの考えたストーリー通り、元の世界へ戻されようとしている体が少しづつ渦へと引かれ出した。
足を踏ん張っても無駄で身体が後退していく。
勝利君の腕を掴んで無理やり引っ張って連れて行く……のは俺の力では無理だろう。
ただ一つの願いを叶える為に捨てなければならない物が大きすぎるけれど……今の俺に思いつく方法はこれしかない。
勝利君がバッドエンドを望んでも、無理やりにでもこんな終わり方は書き換えてやる……俺はコントローラーを握りしめた。
俺とミャオの決定的な違い。
ミャオは勝利君が俺ならこうするだろう、俺がこうだったら良いと理想を積み上げて作った俺だ。
ミャオも勝利君の理想の姿であり続けようとする。
元々が勝利君の望みを叶えるために生み出させれた存在だったから。
今の勝利君の望みは『俺が元の世界へ戻る事』なんだろう。
俺は……例え勝利君の望み通りじゃ無いとわかっていても、君から恨まれる結果になるとわかっていたとしても……。
「勝利君、俺は君の専属コントローラーなんだろ?」
「宮尾、早く行ってくれ……この世界が消える前に!!」
俺にはミャオみたいに綺麗な笑顔でサヨナラなんて出来ない……。
「俺を捨てるなんて許さない」
俺は俺の幸せの為の選択が出来る。
俺は一人では何も出来ないコントローラーだけど。
従者が居なくても出来る事がある。
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悩んでいる時間はもう無い。
俺は……覚悟を決めて決定ボタンを押し込んだ。
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