俺のスキルがエロゲー仕様で泣けてくる

藤雪たすく

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空いた従者枠

朝食への挑戦状

「ミャオちゃん、おはよ」

爽やかな朝……とは程遠いピンク色の光が勝利君の顔を照らしている。

「おはよう……」

探してもランプの電源は見つからなくてそのまま寝たんだっけ。
目に飛び込んでくる真っ赤な布団が寝起きの目に痛かった。

「……このベッドに模様替え機能はないの?」

せめて布団カバーを変えたい。
欠伸まじりに体を起こしてベッドから足を下ろすと三匹の従魔達が擦り寄ってきた。

「みんなもおはよう」

一匹づつ頭を撫でてやると三匹の隣に順番を待つ様に正座をする勝利君を無視してキッチンを喚び出した。

喉が渇いた……。
新調された高機能冷蔵庫の前面パネルをタッチすると俺と勝利君の鞄の中に入っている食材関連のアイテムが表示される。

「勝利君も何か飲む?」

自分の分の麦茶を一つと……勝利君は側まできて一覧を眺めると麦茶をもう一つ追加する。

「モフルキャットワインばっかだね。もうちょっと飲み物を買っとけば良かった」

アイテムを選択して冷蔵庫を開け、グラスに注がれた麦茶を取り出して勝利君に渡した。

今朝の俺はやる気に漲っている。
なんせレベルアップして『調理レベル』も上がったらしい。
全く実感は湧かないけど、何らかの力が働いていい感じの料理が出来上がるに違いない。

まずは朝食の定番、目玉焼きだな。
卵をフライパンの端にぶつけて割ろうとしたらぐしゃりと潰れた。

「おかしいな……」

想像と違う。

「ミャオちゃん……あの、卵割りましょうか?」
勝利君よ……何なぜ丁寧語。
側までやって来たスライムがコンロから溢れて地面に落ちようとする生卵に欲しそうに手……手なのか触手なのかを伸ばした。

「調理レベルが上がったっていうから、いけると思ったんだけどなぁ」

溢れ落ちた生卵をちゅるちゅる吸い上げるスライムの頭を撫でながら膝を抱えた。

「調理のレベルで上がるのはキッチンの性能だから……」

だからなんだ。
俺がここまで料理の才能がないことは考慮していなかったってか。

「勝利君に食べてもらいたかったのに」

たまには喜ばせてあげたかったのに。
スライムを指で突き刺しているとモフルキャットと雪ウサギダイフクンがやってきて俺の袖を引っ張った。

「朝ご飯、俺が作るからミャオちゃんはみんなの遊び相手をしてやってくれる?」

フリフリフリルのエプロンすら似合ってしまうのが憎らしい。

「毎回悪いし、たまには俺が……」

「ミャオちゃんに手料理を作ってもらうのが夢だったけど、俺の作ったもの美味しそうに食べてくれる姿が嬉しくてさ!!昨日の晩とかスゲェ可愛い笑顔でご馳走様なんて言うから、口内射精でごっくんしてからの『ご馳走様』を想像しちゃって辛抱堪らずトイレに走っちゃったよね!!あ……思い出したらまた……ああ!!次の接続が待ち遠しすぎるぅぅっ!!」

ちょっと素直な自分を出していこうと、昨日の夕飯の後ちゃんとお礼を伝えたのが駄目だったらしい。
急にトイレと言って走って行ったからお腹を壊したのかと心配してたのに……。

「みんな、危ない人がいるから向こうで遊ぼうね?」

スライムを抱き上げてみんなをダイニングへ誘導した。
勝利君はまだ一人で悶えながら楽しそうだった。

ボールを投げて……モフルキャットと雪ウサギダイフクンが必死に追いかける間をスライムの触手が伸びてボールに突き刺さり……割れた。
スライムはきっと飼い主に似たんだな。
寂しそうにボールの残骸を見つめるモフルキャットと雪ウサギダイフクンをめいいっぱい撫でてやった。

甘い香りに顔を向けると、ちょうどお皿をテーブルに並べる勝利君に手招きされた。
今日の朝ご飯はなんだろうと楽しみにしながら席に着くと、ドラマで見る様なお洒落な朝食が輝いていた。

「勝利君の調理レベルが上がってる!!」

フレンチトーストとサラダに厚切りのベーコンと具沢山のスープ……その輝く料理が格好良くワンプレートに盛り付けられている。

くっ!!イケメンは作る料理までイケメシなのかっ!!

「ミャオちゃんのレベルが上がったおかげだよ~ここのパネルにレシピや盛り付け例も表示されるからね」

レシピ?そんな機能まであるとは気が付かなかった。

「なるほど……そのレシピを見れば俺もイケメシを作れるのか……」

キッチンに移動して冷蔵庫のパネルを弄ってみた。
レシピがあるならそれ通りに作れば良いだけだもんな。

「それは……レシピがあっても基礎的な……ね?」

……卵も割れない俺には無理だと言うことか。
勝利君にいつかちゃんとした物をご馳走できたらと思ってたんだけど……。

「あ!!でも!!どんな料理でもさ!!料理は愛情って言うし!?ミャオちゃんに作って貰ったドラゴンの素揚げ美味しかったよ!!」

「勝利君、俺……今まで事実であってもズバズバ言ってくる人って苦手だなって思ってたけど……はっきり言ってもらうのも優しさなんだって気づいたよ」

勝利君のフォローが逆に虚しくて席に戻ると勝利君が座るのを待って手を合わせた。

「いただきます……」

チラチラ俺の顔色を伺う勝利君を気にせず一口大に切ったフレンチトーストを口に運んだ。

悔しいけど美味しい。

いろいろ一緒に覚えていこうと自分で言ったのに、俺が手伝おうとしても毎回『従魔達と遊んであげて』と言って勝利君は手伝わせてくれない。
練習しなきゃ上手くなんてなるはずないじゃん。
俺だって何度か練習すれば一人では無理だとしても勝利君の手伝いくらい……出来るかも。

「……ミャオちゃんごめんね?初めあんまり料理したくなさそうだったしさ、そんなに料理作りたかったなんて知らなくて……正直ミャオちゃんの手付きは見てて怖くて……ミャオちゃんの可愛い手に傷なんて出来たらと思うとっ!!想像しただけで無理!!」

フォークを持つ手を握り込まれて頬をすり寄せられる。
……これは刺してくれと期待されているのだろうか。

「大袈裟。手を切ったって勝利君の魔法で治せるじゃん」

勝利君は興奮したように机に両手を勢いついて立ち上がった。

「何言ってんの!?傷は治せても、手を切ったら痛いんだよ!?そんな事させられない!!」

接続時に結構無茶な事をされているような気がするけど、それは良いのか?

「たかが包丁で手を切るか火傷するぐらいだろ?ドラゴンに……背中の肉を抉られるほどの痛みじゃないでしょ?」

「ソレはソレ!!コレはコレなの!!俺の事は置いといて、とにかく俺はミャオちゃんに怪我なんてして欲しく無いんだよぉ~」

駄々っ子か。

俺も勝利君に怪我なんてして欲しくないから、分からないでもないけど……置いておくならむしろ俺の怪我だろう。
でも無理を言って心配させるのも悪いし……勝利君はあれだ、過保護だ。
そして飼い殺すタイプなのかも。

優しい勝利君が好きだけど優しすぎるのも……恋って難しいな。

こうして勝利君といられるだけでも幸せなはずなのに、自分の我儘さに憂鬱にな理想な気持ちを払うように、お皿に残るプチトマトをフォークで突き刺した。
感想 3

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