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怪獣大決戦の話
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「うわぁ……」
入り口から外を見ると怪獣大決戦だった。
大きな銀色の狼と赤いドラゴンが戦っている。
ドラゴンが炎を吹き、それを狼が前足で切り裂くように生み出した風で炎を吹き飛ばす。
斬撃が俺の家の庭木を倒した。
旅館ならともかく、俺の家が……。
「ヒュウガ!!やめろ!!建物を壊す気かよ!!」
俺に気付いたヒュウガは戦うのをやめ、ドラゴンを睨みながらガルルと唸った。
ドラゴンもグルグル唸っている。
どうやらそれで会話が成り立っているようだが俺にはさっぱりだ。
話がついたのか、ヒュウガは俺の方へ戻ってきて人間の姿になった。俺が怒っていると感じて、耳が垂れてしまっている。
俺の家を壊そうとしたけれど……一応、俺を守ろうとはしてくれたんだよな?
叱るとこは叱って、褒めるとこは褒めてやらないとな……精一杯背伸びをして頭を撫でてやると、尻尾を千切れんばかりに振りながら俺をギュウギュウ抱き締めた。
そんな様子を見ていたドラゴンの体が小さくなって人の形になった。
「これは、これは。人狼族の皇子をそのように手懐けるとは……面白い人の子よ」
嘘っぽい爺さんくさい喋り方の若い男、エセ着物の様な格好で、頭には角を生やしてトカゲみたいな尻尾が生えている。
髪は赤く、開いているのかわからない程のつり上がった糸目は感情が読めない。
……元々人の感情を読むのは苦手だけどさ。
「人の子よ、名は?」
人に名前を聞くときは先ず自分からと習わなかったのだろうか?
でも、感情の無い糸目が怖くてヒュウガの腕を掴むとヒュウガが俺を守る様に腰を抱いてくる。
「烏丸……です」
小さく簡潔に答えた。
「ほぅほぅカラスマ殿か。我はキリュウ……どうぞよしなに……して、カラスマ殿?此方は宿の様に見受けられる。ダンジョンを攻略中なのだが食料と水もきらしてしまってなぁ……喰わずとも3ヶ月位はもつが何分力がでらん。補充をお願いしたくて立ち寄ったが……良ければ休ませては貰えないだろうか?」
「宿と言っても箱だけで……俺は世話は出来ない」
「よい、よい。この場所はカラスマ殿の優しい気で溢れ、魔物の気配がせぬ。ダンジョン内で気を張らずに眠れるだけでも十分価値がある場所だ」
柔らかい口調で優しいなんて誉められて照れる。田舎の爺ちゃんに褒められた気分だ。
「カラスマ、竜や狐は人を惑わす……隙を見せると喰われちまうぞ」
ヒュウガに耳打ちされるけど……。
「お前が居るから平気だろ?疲れてるみたいだし……休ませる位は……」
「カラスマ殿はここの空気同様にお優しいな。中へ入っても宜しいかな?」
食料がないと言っていたし、俺達も朝食の途中だった。
ちょうど良いからと、にこにこと笑うドラゴンを食堂へと通した。
入り口から外を見ると怪獣大決戦だった。
大きな銀色の狼と赤いドラゴンが戦っている。
ドラゴンが炎を吹き、それを狼が前足で切り裂くように生み出した風で炎を吹き飛ばす。
斬撃が俺の家の庭木を倒した。
旅館ならともかく、俺の家が……。
「ヒュウガ!!やめろ!!建物を壊す気かよ!!」
俺に気付いたヒュウガは戦うのをやめ、ドラゴンを睨みながらガルルと唸った。
ドラゴンもグルグル唸っている。
どうやらそれで会話が成り立っているようだが俺にはさっぱりだ。
話がついたのか、ヒュウガは俺の方へ戻ってきて人間の姿になった。俺が怒っていると感じて、耳が垂れてしまっている。
俺の家を壊そうとしたけれど……一応、俺を守ろうとはしてくれたんだよな?
叱るとこは叱って、褒めるとこは褒めてやらないとな……精一杯背伸びをして頭を撫でてやると、尻尾を千切れんばかりに振りながら俺をギュウギュウ抱き締めた。
そんな様子を見ていたドラゴンの体が小さくなって人の形になった。
「これは、これは。人狼族の皇子をそのように手懐けるとは……面白い人の子よ」
嘘っぽい爺さんくさい喋り方の若い男、エセ着物の様な格好で、頭には角を生やしてトカゲみたいな尻尾が生えている。
髪は赤く、開いているのかわからない程のつり上がった糸目は感情が読めない。
……元々人の感情を読むのは苦手だけどさ。
「人の子よ、名は?」
人に名前を聞くときは先ず自分からと習わなかったのだろうか?
でも、感情の無い糸目が怖くてヒュウガの腕を掴むとヒュウガが俺を守る様に腰を抱いてくる。
「烏丸……です」
小さく簡潔に答えた。
「ほぅほぅカラスマ殿か。我はキリュウ……どうぞよしなに……して、カラスマ殿?此方は宿の様に見受けられる。ダンジョンを攻略中なのだが食料と水もきらしてしまってなぁ……喰わずとも3ヶ月位はもつが何分力がでらん。補充をお願いしたくて立ち寄ったが……良ければ休ませては貰えないだろうか?」
「宿と言っても箱だけで……俺は世話は出来ない」
「よい、よい。この場所はカラスマ殿の優しい気で溢れ、魔物の気配がせぬ。ダンジョン内で気を張らずに眠れるだけでも十分価値がある場所だ」
柔らかい口調で優しいなんて誉められて照れる。田舎の爺ちゃんに褒められた気分だ。
「カラスマ、竜や狐は人を惑わす……隙を見せると喰われちまうぞ」
ヒュウガに耳打ちされるけど……。
「お前が居るから平気だろ?疲れてるみたいだし……休ませる位は……」
「カラスマ殿はここの空気同様にお優しいな。中へ入っても宜しいかな?」
食料がないと言っていたし、俺達も朝食の途中だった。
ちょうど良いからと、にこにこと笑うドラゴンを食堂へと通した。
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