ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく

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どこまでも反則級

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依頼にあったマンダイコン20本を5本づつに分けて丁寧に葉を縄で束ねて収納鞄へ納めた。
余ったマンダイコンは合成に使えそうだったので、とりあえず適当に突っ込んでおく。

俺がマンダイコンを獲っている間、他の依頼をこなしてくると言ってルノさんは森の奥へ行っている。
どれぐらいで帰ってくるんだろ?ルノさんが持って行った依頼書はAランクの依頼書ばかりだからそんなに早く戻っては来ないと思う。

この結界から出るのはとぉ~っても危険だから、ルノさんの帰りをここでのんびり待つのが良いだろうと収納鞄から手作りしておいた、裏面には丈夫なラヤティングの革と表面は柔らかなヤントーンの革を使った贅沢なレジャーシートを取り出した。剣山の上でだってお尻が痛くならない高性能。

クッキーとお茶を取り出し優雅にティータイムを……。

「ただいまシーナ。美味しそうだね」

ルノさんの声がするけど、どこから?
周囲を見回していたが、まさかの上空から帰宅してきた。
ルノさんが着地すると同時にドン!!ドドン!!とでっかい魔物も落ちてきて地面を揺らす。

空を見上げると氷の道ができているから、山の上から氷の滑り台を作って帰ってきた様だ。

体が跳ね上がった勢いでお茶が溢れたけれど超撥水加工のレジャーシートは全く染みを作ってはいない。

本当に無茶苦茶な人だ。

「早いお戻りですね」

レジャーシートの端に寄るとルノさんも腰を下ろしてきたので、お茶を煎れて素朴な甘さのクッキーの入った籠と一緒に差し出した。

「こんな森の中でゆっくりお茶が出来るなんて贅沢だ」

「……そうですね」
目の前に広がるのが巨大な魔物の死体達でなく、風光明媚な景勝地だったらとても優雅な時間になっただろうと思うよ。

「シーナ頑張ったんだね。レベルが9まで上がってる」

嬉しそうに頭を撫でられるとこっちまで嬉しくなるじゃないか。

「マンダイコン様様です。流石に1匹だけでレベルが上がるって事はもうないですがスライムより楽です」

魔物といえど見た目は大根だから命を奪うという生々しさが無いのも助かる。

「シーナのレベルも上がった、Aランクの依頼も5つ終了させた。これでシーナの冒険者ランクも上がるだろう。この報酬をカードに登録しておけば5年は依頼を受けなくても大丈夫だ」

5年もギルドから離れて何をするつもりなのか……うん、わかってる。エルポープスの言った『南西に向かへ』に従うつもりだ。

ユノスの街から南西と言えば……未開の土地が広がる区域……話の流れから、確実に居るな。
俺が食べたいと思ってしまった……ドラゴン。

へっぽこエルポープスは見せかけドラゴンだからおいておいて、ドラゴンと言えばファンタジー界最強の魔物。

ルノさん……レベル9をドラゴン退治に連れて行くのは無謀だと思います。

「南西に、何があるんだろうな……だがシーナの誕生日を言い当てた神のお告げだ。きっとそこにシーナの望むものがあるんだろうね」

う……一点の曇りのない眼で微笑まないで。

俺の望みなんて気にしないでと言ったところで『遠慮なんてしなくて良いんだよ』と言われるだろうし、素直にドラゴンがいるから危ないから行かないでと言っても『シーナが食べたいならなんとしてでも手に入れる』と逆に燃えてしまうだろう。

これはもう【秘境グルメツアー~ドラゴンの肉を求めて~ルート】は避けようが無い。
俺に出来る事はいかに快適に秘境で過ごすかだけだ。

ルノさんに預かったキャンプ道具一式を魔改造してやる!!

「シーナ燃えてるね。俺もシーナの望みが叶えられる様に頑張るよ」

ーーーーーー

程よく脂の乗った肉は、溶けた脂を滴らせジュウジュウと音を上げて、食欲を刺激する匂いを周囲に漂わせながら焼けていく。

「良い匂いだね……さすが神が神託を使って告げてきただけの事はありそうだ」

食事にあまり関心のなさそうなルノさんの胃すら刺激する香り。匂いだけでこれは美味いと分かる。

目の前の鉄板の上で焼かれているのは……全人類の夢……ドラゴンステーキ様だ。

口を開くと涎が垂れそうで、俺は無言でドラゴンステーキを焼いている。

俺があれだけ尻込みしていた【秘境グルメツアー~ドラゴンの肉を求めて~ルート】はルノさんの反則的な強さのせいで1週間足らずで達成されてしまった。

シンプルにショガランとミラペルだけで味付けされたドラゴンステーキを皿に盛り付けた。

「いただきます」

手を合わせてフォークを手にドラゴンステーキに立ち向かう。
ルノさんは……俺が手を付けるまでは食べないつもりかフォークも持たずにただ俺を見ていた。

見られていると恥ずかしいなんて思いも吹き飛ぶ香りに俺は恐る恐るフォークで肉を一切れ持ち上げ……ゆっくりと口へ運んだ。

「ふわっ……何これ…………」

涙が出そう……。
柔らか過ぎず固すぎず……噛めば噛むほど口の中に甘味のある脂と肉の持つ旨味が溢れて口の中で混ざり合う。

「シーナどう?美味しい?」

覗き込んで来るルノさんにフォークに刺したドラゴンステーキを無言で差し出した。

口を開いてこの味が逃げてしまうのすら勿体ない。

「これは、今まで食べたどんな肉とも違う……こんな肉がこの世にあったのか……」
ルノさんすらうっとりと恍惚の表情を浮かべている。

飲み込むのすら勿体無くてゆっくり、ゆっくりと咀嚼しているうちに涙が溢れた。

俺は……俺は今、猛烈に白米が食べたい。

「喜んで……貰えたかな?」

ルノさんの問いに夢中で頷きながらドラゴンステーキを口へ運んだ。

『ルノさんありがとう!!ルノさん大好き!!』

危険なドラゴンまで討伐してこんな夢まで叶えてくれて……本当に大好きだよ、ルノさん!!

……ん?んん?

ドラゴンステーキを堪能していた手がぴたりと止まった。

『ルノさんの為なら俺も何でもするから……ずっと一緒にいてくださいね』

待て……誰の声だ?
俺は一言も喋っていないのに……。

ルノさんの顔を伺うと嬉しそうに笑っている。

魔物が側にいる様子では無い。
じゃあ今の声は一体?ここにいるのは俺とルノさんの二人きりのはず……いや、ルノさんの膝の上で跳ねる小さな丸い物体。
見覚えのあるそのフォルムに1つの答えを導き出してその物体を鷲掴みにした。

『ルノさんが笑ってくれると俺も嬉しい!!』
「やっぱりお前かぁっ!!」

手の中から抜け出そうと藻掻くそれを、渾身の力で握り潰した。
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