好きになってしまいました

藤雪たすく

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王子様の話

妖怪との出会い

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運命の相手は……センスを磨くと言うか、盛り付けとかに活かせるかと、デザインのノウハウを齧りたくて通った短大で突然に出会った。

専攻合同交流会で隅の方で居心地悪そうに1人でお酒をちびちび飲んでいた人物。
その顔を見た瞬間に雷に打たれた。

今まで何処に隠れていたんだ……。

昔、祖父の絵本で大好きだった『あかでんちゅう』というタヌキの妖怪。

おんぶをせがんで、おんぶされると喜んではしゃぎ、肩叩きをして来る可愛い子ダヌキの妖怪。

ポヤンとした、たれ目がちな瞳、人の良さそうな……かわいい丸顔……。

ヨロヨロとその人物に近づこうとして隣にいた女子達にブーイングと共に止められた。

その時、彼の顔がこちらを見た。

うんざりとした……嫌そうな顔を向けられた。

大人しそうな彼の事だ、女の子に囲まれて騒いでいる俺との間に高い壁を感じた。
妖怪は煩いところ嫌いだもんな。

欲しい……彼が欲しい……。

その為なら……彼が好む人間に……どんな姿にだって化けてやる。どんな自分だって演じてみせる。

同じグラフィック専攻では見た記憶がないので、イラストかアニメーションか油絵か?

「なぁ……壁際のあの子何で一人でいるんだ?どこの専攻の子か知ってる?」

周りにいた女の子達に聞いてみると、イラスト専攻だと言う子が答えをくれた。

「あぁ……山川君か。あの子いつもあんな感じだよ?話しかけてもあんまり喋んないし……でもこの学校には人付き合い苦手な人結構いるし……あの子もそうなんじゃない?」

山川君……。
イラスト専攻。

まだ女の子達が何かを喋っていたけれど全く頭に入らず、先ほど仕入れた少ない情報を何度も反芻した。

ーーーーーー

「都居くん。一緒に帰ろう?」

「ごめん、ちょっと用事があるんだ」

腕に絡み付いてくる、女子の誘いを初めて断った。

なんとしてでも山川君とお知り合いになりたい。

意識してみても、彼の出現率はレアキャラかと思うくらいに低かった。
一般教養なら授業が被ること位あるだろうと、講義の間に探したけれど……避けられてるのかと思うほど被って無い。

こっそり彼の横に座って教科書を借りる作戦は失敗だった。

お昼の学食を狙って見たけど何処にもいない。

山川君は何者なんだ?
やっぱり妖怪はそうそう人の目に付く場所には姿を現さないのか……。

山川君におんぶをせがまれたら、速攻連れ帰って家の中に閉じ込めておくのに……。

そうか!!
この考えがいけないんだ。
座敷わらしを家に閉じ込めていた者はどうなった?座敷わらしが出ていった瞬間、家は滅びた。

妖怪を捕らえようとするのがいけないんだ。

お友達になろう……そして馴れて懐いて来たら家に居着いて貰う様にお願いするってどうだ?

妖怪の手懐け方は探しても無かったので、野生動物を手懐ける方法を調べ回った。

ーーーーーー

やはり好きな物をちらつかせ少しずつ距離を縮めていくのが良いだろう。

だが……だがしかし、彼の好物が分からない。その前に、彼と出会えないのでちらつかせる事も出来ない!!

俺が好意を寄せていることに気づかれて、周りが騒ぎ立てると臆病そうなあの生き物は山へ帰ってしまうかも……。

あの時向けられた目を向けられるのが怖くて聞き込みも出来ない。
せめてもう少し目立ってくれていれば話の流れで聞き出せるのに。

悶々とした日が続く。

「なぁ、都居!!お前最近何かイライラしてないか?飲みにでも行かね?」

飲み……彼がいるなら行きたいけど……参加するはずはないだろう。

交流会の時も無理やり参加させられて、無理やり酒を渡されて……断ることも出来ず飲めないお酒を舐めるように一応飲んでる振りをしていたに違いない。

彼の人物像の想像だけなら大分出来上がってきていた。

「そうか、そんなに楽しみか!!女の子達にも声を掛けとくよ、お前が参加すると女子の集まり良いんだよな。全部お前に持っていかれるけど」

山川君の事を想像していたら、飲み会が楽しみだと勘違いされて、友人は去っていった。

まぁ、心配?して声を掛けてくれたんだし気分転換に久しぶりに少し顔を出すか……。

講義後、女の子達に囲まれた。

こんな所を見られてらまた嫌悪の目で見られるかもしれないと思いつつ……山川君が俺に注目しているなんて大した思い上がりだとも思う。

彼は俺に全く興味など抱いて無いだろうから。

賑やかな居酒屋で、意味の分からない乾杯をして騒ぎながら酒を流し込む。

何で今まで楽しいと思っていたんだろう。
こんな事をしているより、彼に一歩でも近づきたい。

「都居くん、話したいことがあるの……少し良い?」

胸元を強調して、見せつける様にすり寄ってくる。店から連れ出されて店の横で抱きつかれた。

「都居くん……ずっと好きだったの。今付き合ってる子いないんでしょ?だったら……」

想像通りの展開に頭をかく。
どう断ろうかと視線をさ迷わせたその視界の端、関わらないように見て見ぬ振りをしながら通り過ぎる人達の中にその姿を見付けた。

山川君?何でここに……。

普段会いたくても会えないのに、こんな所ばっか……向こうも気づいたらし一瞬だけこちらを見た。

『お酒ばっか呑んでて、酔った勢いで女の子と手当り次第に……本当に不潔だ』

そう目が語っていた気がした。

「待っ…………!!」

追いかけようとした腕を女の子に引っ張られる。

「都居く~ん。私、本気なの……お願い。付き合おうよ」

媚びるような上目遣いと甘えたような声、昔の俺なら軽い気持ちで付き合ってただろうけど……。

「ごめん。好きな人がいるから」

急いで通りに目を戻すが、山川君の姿はもう無かった。
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