好きになってしまいました

藤雪たすく

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二人の話

角砂糖を噛じる甘さで

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都居くんのカフェ予定地はもう建物は出来ているので、あとは都居くんの卒業を待つだけだった。

「そうか……山川は真面目に働いてくれて助かってたんだけどなぁ……夢が叶うなら引き留める訳にはいかないな。頑張れよ」

店長に時期がきたら退職する旨を伝えると背中をバンッと叩かれて激励された。

「縁ってのは不思議なもんだよな……出会いは大切にしていかないといけないな」

「はい」

「はははっ……山川もそんな笑顔が出来るんだな。退職までの間も変わらず頑張ってくれよ」

店長は俺の頭をガシガシとかき混ぜ事務所を出ていった。

本当にお世話になりました。

まだ早いけど、店長の出ていった扉に向かって頭を下げた。

ーーーーーー

都居くんは学校とバイトに加え、カフェで出すメニューを考えて忙しそう。

「経営の方は親父達に手伝って貰うから良いんだけど……メニューはね、自分で考えないと……街のカフェとはまた毛色が違うからなぁ」

都居くんのクロッキー帳を覗き込むとメニューの大まかなアイデアが描かれている。

カレーソースとチーズソースを、太めのソーセージを挟んだホットドッグに掛けたタヌキの尻尾ドッグ。

タヌキの3Dラテアートにオムライスにタヌキの絵が描かれたもの等々……。

「タヌキ多過ぎじゃない……?」

みやこ ただしの絵本の世界がコンセプトのカフェだけど……。

「みやこ先生そんなにタヌキ推ししてないよね……」

がっつり都居くんの趣味に走ってる。

「え~だってタヌキ以外に、ときめかない……じゃあ山川ならどんなのがメニューにあったら良いと思う?」

鉛筆を渡されてクロッキー帳を前に目を閉じる。料理は凝ったものより簡単なものでって言ってたよね……。

みやこ先生の代表作は『料理の国の王子様』。

「都居くんがレッカー王子の衣装着て……オムレツに『レッカーの魔法で幸せになぁれ』って魔法をかけてくれたら幸せ……」

考えただけでうっとりしてしまう。

「それ、違うコンセプトの店になっちゃうから……」

困ったように都居くんが笑う。

そっか……結構本気で考えた案だったんだけどな……。

「それに……幸せの魔法をかけたいのは山川にだけだもん」

耳元で囁かれ、頬にキスをされた。

「うわぁぁっ!!もぉ!!都居くん格好良すぎじゃろ!!これ以上好きにさせんでよ!!」

「ちょっ!!山川!落ち着いて!!痛い、痛いよ!」

持っていたクロッキー帳で都居くんをバンバン叩いてしまった。

「ごめん……つい……」

「せめて平面にしてね……クロッキー帳でも縦は痛いから……」

「気をつけます……」

興奮して暴力を振るってしまったけれど、笑顔で頭を撫でて許してくれる……都居くんはやっぱり優しいなぁ。

気分転換にお茶でもいれようかと立ち上がりかけて腕を引かれた。

「ねぇ………そろそろ良いと思うんだけど……」

「そろそろ……って?なにが?」

「親父も都居だしさ……礼雅って呼んで?太一……」

間近で微笑まれて、ぴしりと体が硬直する。

「れ……れ……礼雅……」

やっとの事で喉の奥から絞り出す。

「なぁに?」

満面の今日イチの笑顔っ!!

恥ずかしくて見てられなくて、隠れるように頭をグリグリと都居くんの胸におしつけた。

「た~いち……ふふ……太一、大好き」

ギュ~ッと抱き締められて……今日も夜が更けていく。

う~ん……新しいメニューを作るのって難しいんだな。

ーーーーーー

礼雅の店で出すメニューもあらかた決まり、礼雅の卒業も間近に迫っていた。

今日は朝から一人、ここに立っている。

『みやこ ただし』ミュージアム。
もうすぐここで働くことになる。

楽しむ側から楽しませる側へ変わる前に……最後に純粋に客として楽しもうとやって来た。

職員さんには顔がバレているので、礼雅の部屋から拝借した眼鏡と帽子とマスクで顔を隠して入館チケットを買って入場した。

ゲートを潜ると綺麗な公園が広がっていて、絵本の世界観を再現した遊具がいくつか並んでいる。

少し高めの入館料だけど、平日は公園だけ無料開放されていて……今も数人の親子が遊んでいる。

前はその姿を羨ましく眺めていたけれど、礼雅と一緒に閉館後、何度も遊ばせて貰っているので、穏やかな気持ちで見守れる。

小路を進んで行くとシートの掛かった新しい建物……礼雅と……俺の……店。

うわっ!!何言ってんだ!?俺!!なにもしてないのに俺の店とか!!

でも…………ここで礼雅と一緒に働く様になるんだな。

飲食店の接客なんてしたことないし、料理の補助も怪しいし……本当に俺にやれるのかな?本当に俺は必要か?

礼雅は大丈夫、大丈夫と笑うけど……不安と期待が入り交じった気持ちで、シートに隠された建物を眺めていた。
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