好きになってしまいました

藤雪たすく

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二人の話

これからもよろしく

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今日は休みで、二人で気になっていた映画達を配信サービスで観尽くした。

怠惰とも取れるが、有意義な1日だったと、のんびり湯船に浸かる。

そろそろ暑くなってきたしシャワーだけでも良いかなぁ……なんてどうでもいいことを考えていると力強く扉が開け放たれた。

「礼雅?どうしたの?」

勢いよく扉を開けた割りに礼雅は入り口で俯いたまま動かない。

「……話あるから、すぐ出てきてくれる?」

睨まれ、吃驚するぐらいの低音に思わず背筋が伸びた。

開けた時とは逆にゆっくり扉が閉められて……何!?俺、何した!?
あんなに礼雅が怒ってるのなんて出ていくって言った時以来かも……出たく無いけど出ていかないともっと怒らせてしまう。

ハラハラとしながら、体を拭くのもそこそこに、髪から水滴を落としながら急いでお風呂を上がった。

ダイニングに座っている礼雅の前にはスマホが置かれ、礼雅は組んだ手に額を落として俯いている。

漂う不穏な空気……怖……。

「あの……礼雅?上がったけど……」

礼雅はスッとスマホを俺の方に差し出して、下から見上げてくる。

超不機嫌!!本当に何をしたんだ!?
お風呂に入る前の事を思い出しても……心当たりがない。

「お母さんから電話があった。今日太一の誕生日だって……何で教えてくれなかった訳?」

……誕生日?

「あ……そっか……今日誕生日だ」

「そっかじゃ無いでしょ!?誕生日だよ!?お祝いだよ!?太一の誕生日にしたい事いろいろ考えてたのにさ!!今からじゃ何も出来ないじゃないか!!せっかく今日は休みだったのに!!1日フルで使えたのに!!映画なんていつでも観れたのに!!」

時計は10時を回っている。

「別に今日じゃ無くても……「今日じゃないと意味が無い!!また1年俺に我慢させる気なの!?」

大袈裟だなぁ……。

「さっき必死に考えた!!早く行くよ!!時間が変わっちゃ……」

礼雅は立ち上がり俺の手を引いて玄関に向かいかけたがすぐに立ち止まった。

ーーーーーー

「急ぐんじゃなかったの?」

「急ぐけど濡れた髪の色っぽい太一を見て良いのは俺だけなんだよ……」

ソファーに座らせられて、ドライヤーで髪を乾かされてる。俺に色気など無いと思うけど……普段、自然乾燥だからドライヤーの風に目を閉じてされるがまま、髪を弄られた。

「あぁ……髪の毛温かくてフワフワ……」

頭に顔を埋めてくる礼雅はちょっと鬱陶しかったけど機嫌ご治ったようで何より……。

着替えて、いつの間に呼んだのかタクシーに押し込まれた。

「本当に……もっと、いろんな事考えてたのに……太一はそういうとこ、ほんと無関心だよね。何をしたら喜んで貰えるか妄想することに必死で、誕生日を確認するの忘れてた俺が悪いんだけどさ……」

礼雅はタクシーの中でずっとぶつぶつ文句を言っている。

「礼雅と一緒に居れる毎日、毎日が特別で幸せやけん……つい忘れとった」

記念日に無関心なのは事実だし、なんとも反論が出来ない。

「っ!!……この小悪魔タヌキ……」

礼雅はボソリと呟くと窓の方を向いてしまった。タクシーは住宅街へと入っていった。

ーーーーーー

「……ここ?」

「ここ、ほら早く」

タクシーを降り立った目の前には大豪邸が……俺の家も田舎だからデカさだけは負けてないけど……ここ都会だよ?

礼雅は何の気後れもなく門扉を開けた。

「ただいま」

礼雅が玄関の扉を開けると……。

「やあ!!太一君、誕生日おめでとう!!本当は明日プレゼントを渡そうかと思っていたんだが、遊びに来てくれるなんて嬉しいなぁ!!」

やっぱり礼雅の実家か……。
館長にギュウギュウに抱き締められ、何やら重たい紙袋を渡させれた。

中身は……『料理の国の王子様』全巻セット!!

「か……館長……ありがとうございます!!」

「ちょっと待て……何で親父が太一の誕生日を知ってるんだよ」

「そりゃあ、俺は館長だよ?あのカフェの店長は礼雅だが経営者は俺だ。履歴書を見たに決まってるじゃないか」

「ちっ……履歴書か……見ときゃ良かった」

礼雅は、親父と話している暇無い……と俺の手を引いて廊下を進む。
進んだ先、扉の前で足を止めて俺を振り返った。

「俺が太一の誕生日にしてやりたかった事はこれだけじゃ無かったんだからね!!本当はもっといろいろ考えてたんだから……」

しつこい前置きをして礼雅は扉を開いて、電気をつけた。

暖かな光に照らされたその部屋は……。

「…………」

まさか……まさか…………。

「爺さんのアトリエ……亡くなった時のまま。爺さんここには出版社の人間すら入れるの嫌ってたから初公開だね。プレゼントになるか微妙だけど誕生日おめでとう、太一」

へなへなと入り口で床にへたり込んだ。
大好きな絵本の原画が額に入れられ飾られている。

ラフ画だったり、書きかけの物もある。
椅子の背もたれに寄りかかる、非売品だった絵本のキャラのクッションはへたっていて、そこにみやこ先生の姿が見えた。

「れ……礼雅……ごめん」

「ん?入らないの?何でも気になるもの触って平気だよ?」

感極まって涙がこぼれる。

「……腰が抜けて立てない……」

礼雅を目線だけで見上げると……思い切り笑われた。

「そんなに笑う事……ないやん」

「こんなにも喜んでくれるファンがいるなんて……爺さんも幸せ者だよね……ちょっと妬ける」

隣りに腰を下ろした礼雅の指が顎に掛かった。

「ちょっ!ちょっと待って!!ここでは止めて!!家に帰ったら何でもするからっ!!」

必死にその体を押し返す。

「何で?」

「……ここは聖域やけん!!そんなんしちゃ駄目!!」

ギッと睨むと礼雅は肩を竦める。

「ははっ……はいはい。じゃあ帰ったら……ね?」

耳許で囁かれ……さらに腰が砕けた。

「礼雅~」

恨めしく礼雅を睨んだ。
目の前にせっかく憧れの先生のアトリエがあるのに動けないなんてっ!!
アトリエの仲に視線を移すと……凄く気になる物を見つけた。

「ね……礼雅、礼雅。あれ見たい」

礼雅の服を引っ張り指を指した。

「どれ?」

「写真立て」

その言葉に礼雅は嫌そうにしながらも取ってくれた。

「かっ!!可愛いぃぃっ!!」

遠くから見た通りそこに写っていたのはみやこ先生の膝の上で笑う幼少期の礼雅の姿。

背中に紐で括り付けられたタヌキのぬいぐるみはともかく。
その姿はレッカー王子そのもの!!

「写メ!!写メ撮って良い!?」

興奮する俺に礼雅は溜め息を吐いた。

「そんなに喜ばれると昔の自分に嫉妬するんだけど……今度太一のアルバムも見せてくれる?何なら俺の誕生日は太一の実家にお呼ばれしたい」

「ん~うちに帰っても写真そんな無いよ?流石に四人目やと、親もそんな写真撮らんかったみたい」

写メした礼雅の写真を確認しながら口元が緩む。

「四人!?そんなに兄弟いたの?」

「ううん。姉ちゃん、兄ちゃん、姉ちゃん、俺、弟の五人」

「取り敢えず……帰ったら今日はゆっくり話そうか……太一の事もっと良く知りたい」

「俺の?そんなに面白いエピソード無いよ?」

「良いんだよ。太一がどんな風に育って何を見てきたのか教えて欲しい。俺も太一がいる毎日が楽し過ぎて太一の思い出話を聞き出すの忘れてた。2人揃ってこんなバカみたいに夢中になって……駄目だね」

……そう微笑まれてベタに心臓を矢で打ち抜かれた。

「……礼雅……」

服を引っぱり自分の口元に礼雅の耳を寄せた。

「昔話ならこれからずっと一緒に居るんだし、いつでも出来るよ……今日は話より礼雅としたい……駄目?」

「あぁっっ!!もぉっ!!マジで小悪魔……いや、魔王タヌキだよ!!」

いきなり礼雅に抱き上げられる。

「あの、帰ったらだよ?今は……」

この家には館長もいるし、大先生のアトリエだし……まだ聖域を堪能してない。

「そんなのいつでも連れて来るよ!!今すぐ帰る!!」

鼻息荒く廊下を進む礼雅。

「もう帰るのかい?じゃあまた明日ね~。何なら臨時休業のPOP出しておくから無理しなくていいからね~」

館長とすれ違い、館長が和やかに手を振ってくる。

「ななな……何言ってるんですか!!館長!!」

「え~?普通にもう夜も遅いし?今から帰って寝る準備してたら睡眠不足かなって……太一くんは何を想像したんだい?」

礼雅に良く似た顔で微笑まれ……言葉に詰まった。

ーーーーーー

そうしてタクシーに押し込まれ2人の家に戻った俺は……ベッドに投げ出され上から礼雅に組みしかれる。

「ま……待って、一回一息入れよう?」

「……駄目。あんな煽り方されて優しくなんて出来る訳無いよね?」

ギラギラした礼雅に乱暴に唇を塞がれ……俺を凄く気遣ういつもの行為とは違っていて……ヤバい。こういう荒々しい礼雅もちょっと……興奮する。

「太一……こういう方が好き?すごい溢れてる……」

ダラダラと先走りを溢れさせるモノを握り込まれ、いつの間に準備したのかゴムをつけた礼雅の指が後孔に入り込んだ。
その指の動きすら荒い。

荒いけど……俺の体を知り尽くしている礼雅は的確に突いてきて……あっさり……。

は……早すぎて恥ずかしい。

「よ……余裕の無い礼雅が……それだけ俺に興奮してくれてると思ったら、嬉しくて……」

しどろもどろに言い訳する俺に、礼雅はにっこりと微笑んだ。

「大丈夫、何回でも達って?今日は太一のが枯渇するまでヤるつもりだから」

「いや……ほら、誕生日だし……優しくして?」

「誕生日はもう過ぎたでしょ?」

泣いても許してあげない……そう言って礼雅は覆い被さってきた。

ーーーーーー

次の日、俺は欠勤した。

礼雅め……一人でパニックになってれば良いんだ。布団の中で一人悪態をつきながら……楽しそうに笑う館長の笑顔が頭に浮んでいた。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

ゆき
2021.10.31 ゆき

めちゃ好みのかわいいお話だなと思って読んでたら、まさかのヒロインの作者様だなんて✧\(>o<)ノ✧ どっちも大好きなお話しです!!

2021.10.31 藤雪たすく

お読み頂きありがとうございます!

あっちもこっちもバカップルだらけで……お恥ずかしい(*﹏*;)ゞ

解除
NiWa
2021.10.30 NiWa

はじめまして
作品 ツボでした 特にタヌキ捕獲作戦が…
なんか ずっと笑いながら 読みました 楽しかったです ありがとうございました❤️

2021.10.30 藤雪たすく

感想ありがとうございます
お気に召して頂き幸いです!!

解除

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