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第一章 変わりゆくモノ
第二話 変革の夜会
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『あ゛~゛の゛どい゛でぇ゛~゛
づがれ゛だ~゛』
蓮は音村の奢りでファミレスで夕食を済ませ、ゲーセンからのカラオケで絶唱しヘトヘトになっている。
『いや~蓮ゲームも歌も上手かったなぁ~。ゾンビ撃つゲームも完敗だったし、90点越え連発してたしなぁ!
アニメや同人?の曲はよく分かんなかったけど結構いい曲あんのな!』
音村は意外な蓮の才能を素直に称賛した。
『まぁよく一人で行ってたしな』
一人好きな蓮は娯楽施設に一人で行っていることを音村に伝えた。
『へぇ~、一人でゲーセンやカラオケ~俺結構勇気いるかも…』
蓮とは対照的に他の人間と同じ時間を共有することを好む音村はあまり一人で娯楽施設に行くことに馴染みがない。
『そうか?俺は他人に気を使う必要とかないから断然一人がいいけどな』
二人には根本的な価値観の相違が存在する。
『今日、一人じゃなかったけど楽しかったしょ?』
全力で遊んでいた蓮を見ていた音村は蓮に尋ねた。
『まぁストレス発散にはなったよ、財布の中身も気にする必要なかったしな』
蓮は楽しかったかはさておき、音村の奢りだった為、財布の中身を気にすること無なく素直にストレス発散になったことを告げた。
『おい!俺の財布の中身だぞ!気にしろ!あと俺に少しは気を使え!』
それに対して音村は少しは気を使うよう蓮に物申す。
『…その言葉そのまま返すぞ』
蓮は音村のダル絡みやお節介に対してやはり思うところがあるようだ。
『まぁ、ありゃ俺なりに気を使ってんだよ~まぁお互い様ってことでいいんじゃね』
音村は笑い気味に蓮に返答した。
『あ~うん、それでいいよ』
蓮は音村に張り合っても無駄な事を学んだ為軽くあしらった。
『ん~?なんか張り合いねぇな~』
それに対して音村は少し拍子抜けした。
『張り合うだけ無駄だからな』
蓮は心情をそのまま音村に伝えた。
『まぁいいや!ちと公園寄ろうや今日は夜風が気持ちいいからな!』
相変わらずマイペースな音村は話題を逸らし、公園で休憩することを提案した。
『そうだな。俺も喉が痛むしゆっくりジュースでも飲みたい気分だ』
蓮もそれに賛同し、二人は近くの公園へ向かった。その後、蓮と音村は公園のベンチで寛いで何気ない会話を行っていた。
『蓮はきのこ派?たけのこ派?勿論きのこ派だよな?』
『やはりお前とは気が合わんようだな。俺はたけのこ派だチョコとクラッカーをあえて分ける意味がわからない。分けるぐらいなら別々で食べればいいんじゃ無いか?』
『いや~分かって無いね。分かれたチョコを口で溶かしながらあの食感が強いクラッカーを噛み締めるのが最高なのよ。たけのこ食うならチョコレートクッキーで良くね?』
『わざわざ口で溶かしながら硬いクラッカーを食べるのか?そんなことやるくらいならそれこそたけのこで良く無いか?』
蓮は音村のお菓子の食べ方にケチをつけ、自分の好みのお菓子を食べた方が良いことを音村に伝えた。
『なんだとぉ~!?』
蓮の発言に対し音村は声を上げる。蓮と音村が不毛な争いを繰り広げていると二人に対して不意に言葉が投げかけられた。
『おやおや、君たち仲がいいね。私も混ぜてはくれまいか?』
おおよそ高校生ぐらいの年齢に見えるウィッチ帽を被った魔法使いのような格好をした謎の女性がブランコの頂上に座りながら二人に声をかけた。夜明かりに照らされた彼女の髪は肩にかかるくらいの長さで銀色に煌めいており、緋色の目が蓮達を見下ろす。
『誰だあんた?俺はそこそこアニメに精通しているがそんな格好の魔法使いキャラは知らんな。何のコスプレか知らないが、変質者に見えるだけだぜ。痛々しく可哀想な病気にでも罹ったか?』
蓮は冷静に謎の女性に対して返答する。
『おや、ちゃんと言葉が通じているようで良かったよ。変質者はちょっと癪だけど。小娘から記憶を読み取った甲斐があったねぇ』
朝の報道の不自然な建物、変質者、鳩の怪我、行方不明の女性。記憶を読み取ると行った非現実的な芸当。これらの情報から蓮は一つの仮説を導き出した。
『点と点が線で繋がったよ。あんたこの世界の人間じゃ無いだろ?』
蓮は自分の仮説を謎の女性に告げる。
『ん?どゆこと?僕ちゃん付いてけない。』
音村は今の状況に一切ついて行けてない。
『ん~鋭いねぇ~御名答、いかにも私はこの世界の人間ではないよ。
ねぇねぇ聞いてよこっちの世界にゲート繋げるのすっごい大変だったんだよ~、時空の歪みから微かに感じる負のエネルギーを足がかりに大部分の魔力を消費してやっとこさこっちに来られたってわけ、空間移動の影響で関係ない鳩ちゃんや建物を巻き込んじゃったのは計算外だったけどね』
蓮の発言を聞いて驚いたそぶりを見せ女は返答した。
女は蓮の推理が当たったのが予想外だったのか、ご機嫌そうに懇切丁寧に説明した。
『で、そんな異世界変質者が俺に何のようかな?』
蓮は女に対して用件を伺う。
『ん?俺達じゃなくて?おーい聞いてます?』
音村は置いてきぼりだ。
『も~さっきから気になっていたけど変質者って言うのやめてくんない?せめて私のことはクラウンと呼びたまえ。あと君から取り出したい力があるから少し協力してもらいたいだけさ』
女は自分の名前らしきものを明かした。
『クラウン…道化か…変質者にはおあつらえ向きの名だな。取り出したい力か…さっき言ってた、負のエネルギーとやらに関係しているのだろう?なんだ、俺を絶望でもさせたいのか?』
中学二年生の蓮は状況を自分なりに整理し、クラウンに問いかけた。
『飲み込み早すぎるし、鋭過ぎない?あと絶対君周りから嫌われてるでしょ』
クラウンは蓮の発言に嫌悪感と不信感を抱いているようだ。
『お!さすが蓮!アニメ見たいな展開における飲み込みの早さと発想が凄いぞ!
どうやら俺は蚊帳の外みたいだし、そろそろ遅いから帰るぞ!また学校で会おうな!
あと気休めになるかは知らんが少なくとも俺はお前のこと嫌いじゃ無いぞ!じゃあな!』
音村は疎外感に耐えかねたか、もう夜中の為か帰宅しようとした…その時…
ビュン!
『ウォッ!』
パサァ…
帰宅しようとした音村に向かって、クラウンが発生させたと思しき魔法陣からナイフが射出され、音村の髪の毛を少し切り裂いた。
『蓮君と言ったかな、君の友達を殺したら君はきっと絶望してくれる。絶望した君を私達の世界に連れてくよ』
『えぇ~!俺、蓮の絶望の出汁にされて殺されるのぉ~!
ってか今の手品すげー!!』
音村はクラウンの行動に驚く。
『…異界の魔法使い…面白いものを見せてくれるじゃないか…
…絶望した俺を負のエネルギーとやらの燃料タンクにでもしたいのか?
残念だがその男は友達じゃないし、殺しても別に絶望しないぞ』
蓮は音村を殺しても意味がないことをクラウンに告げる。
『えぇ!?面と向かって堂々といいます!?ちょっと傷ついたんだけど!』
蓮が堂々と発言した為、音村は驚く。
『そっか…じゃあそれが本当か試させてもらうよ!』
ビュン!
クラウンは再度音村に向かってナイフを射出した。
『ウォラ!』
蓮はクラウンの行動を予測し、ナイフの軌道に合わせて自分のカバンをぶん投げた。
ボスッ!
ナイフは蓮の投げたカバンに突き刺さり音村には届かなかった。
『逃げるぞ音村!』
『お、おう!』
蓮と音村は全速力でクラウンから逃げ出し、公園を出て道路に出た。
『逃げられると思ってるの?』
クラウンは不敵な笑みを浮かべながら浮遊し二人をすかさず追いかける。
『蓮、あいつは多分俺を狙ってるはずだ。だったらよ、二手に分かれてよ俺が囮になるぜ』
音村は自分がクラウンに狙われていることを理解し、自らが囮になると宣言した。
『…死にたいのか?』
それに対し、蓮は音村の行動に疑問を抱く。
『一緒に逃げたとしても、すぐに追いつかれてどっちか死んでどっちか誘拐だ。
だったら俺が死んで、蓮が助かる確率上げた方がマシじゃん?』
音村は状況を整理した上で自分を犠牲にして蓮が助かる可能性を上げることを優先した。
『…いや俺が囮になる、お前に情けをかけられっぱなしで借りもあるのにそのまま死なれても困るからな。
それに…一応策はある。考えうる限りで最良の結果を約束しよう。』
音村に温情をかけられっぱなしなのが癪だったのか、他人との深い関わりを避ける蓮が、他人の為に自分を犠牲にする覚悟を決めた。
『…分かった。蓮を信じさせて貰う。生きてまた学校で会おう!』
『あぁ、最善は尽くすさ。』
(さて…生きて帰れるかね…)
蓮は音村を先に逃げさせ、追いかけてくるクラウンに向かって立ち止まり、言葉を投げかけた。
『おい!クラウンとやら!これ以上俺達を追っかけるとお前が死にかねんぜ!』
蓮は大声でクラウンを静止させ脅しをかけた。
『…どういう意味だい。?』
クラウンは蓮の発言を警戒し、質問した。
『フッ…俺の一族は最悪の結果を目の前にした際、せめて相手を道連れに出来るように体内に強力な爆弾が埋め込まれているのさ』
勿論ハッタリである。
『…もしそれが本当だとして、仮に爆発したとしたら結局君は死んでお友達もこの街も大変なことになるんじゃないのかい?
本末転倒もいいとこだよ』
クラウンは至極真っ当な正論を発した。
『どうせ、何もしなかったらどっちか死んでどっちか誘拐されてお前に最も都合が良い結果になるだけだからな。
それは癪だから多少被害は大きくなるが、お前を道連れにしたほうが俺はスッキリする』
(音村…逃げ切ってくれ…そしてあわよくば撤退しろ道化…!)
蓮は虚言を重ね、最大限に時間を稼ぐ。
『本気で言っているのかい?』
(…一族に伝わる爆弾…今の私の記憶にはそれを否定する材料がない…
だがこれがブラフで私がいいようにこの小僧に言いくるめられるのはそれこそ私の方が癪だ…決めた…!)
クラウンは蓮の言葉を整理し、一つの決断を下した。
『…本気じゃないように見えるか…?』
蓮は冷や汗をかきながら余裕のない様子で答える。
『君の話が本当かどうかは君を殺してみればわかるはずさ、本当なら私もタダじゃ済まないだろうし、嘘なら絶望した君の友達を連行する…
これこそ!命を賭けた最高のショー!最高に興奮するよ!』
クラウンは声高らかに蓮を殺す宣言をした。
『…所詮道化か…後から泣いても俺は知らないぜ、いやそもそも泣けないか…俺もお前もみーんな!死んじまうからなぁ!』
打つ手がなくなった蓮は最後まで虚言と己を貫いた。
『最っ高に!盛り上がってきたねぇ!ここまで私を昂らせてくれたのは君で5人目だよ!
そんな君と君の覚悟に敬意を払い私も全力の魔法で答えたいのだが生憎、今の魔力は心許ないし、帰りの分の魔力も残しておかないといけない…
今出せる最大限の魔法…!この魔法に私の熱き昂る気持ちを乗せさせてもらう!』
『…来な』
(俺もここまでか…)
『火柱!(フレイムピラー)』
蓮の足元に赤き魔法陣が展開され、燃え盛る炎が舞い上がり柱を形成するかと思われたその時…
グイッ!!
『うぁ!』
バタッ!
何者かが蓮の肩を後ろから強く引き蓮は倒れた。
『…信じた俺が馬鹿だったぜ。生きて学校でまた会おうって言ったけど、一人で死んで俺を逃がせなんて言ってねぇんだよ。何が最良の結果だ聞いて呆れるぜ。残されたこっちの身にもなれってんだ』
『なぜ逃げなかった!よせ!音村!お前死ぬぞ!』
『ダチ公見捨てて、逃げて生き延びろってか!?そんなダッセェ人生死んでもゴメンってもんなんだよぉ!』
『…音村……』
蓮は弱々しく言葉を発した。覚悟を決めた漢の背中を前に蓮はこれ以上語ることは無かった。
『向こうで会おうぜ相棒…向こうに学校があったらいいな!死んでるけど!
まぁ俺の分まで人生楽しんでくれや!』
音村は笑い気味にそう語った。
『音村ァアァァア!』
蓮は音村の名を叫び、大きな火柱が舞い上がると同時に灰色の羽が舞い、二人は眩い光に包まれた。
づがれ゛だ~゛』
蓮は音村の奢りでファミレスで夕食を済ませ、ゲーセンからのカラオケで絶唱しヘトヘトになっている。
『いや~蓮ゲームも歌も上手かったなぁ~。ゾンビ撃つゲームも完敗だったし、90点越え連発してたしなぁ!
アニメや同人?の曲はよく分かんなかったけど結構いい曲あんのな!』
音村は意外な蓮の才能を素直に称賛した。
『まぁよく一人で行ってたしな』
一人好きな蓮は娯楽施設に一人で行っていることを音村に伝えた。
『へぇ~、一人でゲーセンやカラオケ~俺結構勇気いるかも…』
蓮とは対照的に他の人間と同じ時間を共有することを好む音村はあまり一人で娯楽施設に行くことに馴染みがない。
『そうか?俺は他人に気を使う必要とかないから断然一人がいいけどな』
二人には根本的な価値観の相違が存在する。
『今日、一人じゃなかったけど楽しかったしょ?』
全力で遊んでいた蓮を見ていた音村は蓮に尋ねた。
『まぁストレス発散にはなったよ、財布の中身も気にする必要なかったしな』
蓮は楽しかったかはさておき、音村の奢りだった為、財布の中身を気にすること無なく素直にストレス発散になったことを告げた。
『おい!俺の財布の中身だぞ!気にしろ!あと俺に少しは気を使え!』
それに対して音村は少しは気を使うよう蓮に物申す。
『…その言葉そのまま返すぞ』
蓮は音村のダル絡みやお節介に対してやはり思うところがあるようだ。
『まぁ、ありゃ俺なりに気を使ってんだよ~まぁお互い様ってことでいいんじゃね』
音村は笑い気味に蓮に返答した。
『あ~うん、それでいいよ』
蓮は音村に張り合っても無駄な事を学んだ為軽くあしらった。
『ん~?なんか張り合いねぇな~』
それに対して音村は少し拍子抜けした。
『張り合うだけ無駄だからな』
蓮は心情をそのまま音村に伝えた。
『まぁいいや!ちと公園寄ろうや今日は夜風が気持ちいいからな!』
相変わらずマイペースな音村は話題を逸らし、公園で休憩することを提案した。
『そうだな。俺も喉が痛むしゆっくりジュースでも飲みたい気分だ』
蓮もそれに賛同し、二人は近くの公園へ向かった。その後、蓮と音村は公園のベンチで寛いで何気ない会話を行っていた。
『蓮はきのこ派?たけのこ派?勿論きのこ派だよな?』
『やはりお前とは気が合わんようだな。俺はたけのこ派だチョコとクラッカーをあえて分ける意味がわからない。分けるぐらいなら別々で食べればいいんじゃ無いか?』
『いや~分かって無いね。分かれたチョコを口で溶かしながらあの食感が強いクラッカーを噛み締めるのが最高なのよ。たけのこ食うならチョコレートクッキーで良くね?』
『わざわざ口で溶かしながら硬いクラッカーを食べるのか?そんなことやるくらいならそれこそたけのこで良く無いか?』
蓮は音村のお菓子の食べ方にケチをつけ、自分の好みのお菓子を食べた方が良いことを音村に伝えた。
『なんだとぉ~!?』
蓮の発言に対し音村は声を上げる。蓮と音村が不毛な争いを繰り広げていると二人に対して不意に言葉が投げかけられた。
『おやおや、君たち仲がいいね。私も混ぜてはくれまいか?』
おおよそ高校生ぐらいの年齢に見えるウィッチ帽を被った魔法使いのような格好をした謎の女性がブランコの頂上に座りながら二人に声をかけた。夜明かりに照らされた彼女の髪は肩にかかるくらいの長さで銀色に煌めいており、緋色の目が蓮達を見下ろす。
『誰だあんた?俺はそこそこアニメに精通しているがそんな格好の魔法使いキャラは知らんな。何のコスプレか知らないが、変質者に見えるだけだぜ。痛々しく可哀想な病気にでも罹ったか?』
蓮は冷静に謎の女性に対して返答する。
『おや、ちゃんと言葉が通じているようで良かったよ。変質者はちょっと癪だけど。小娘から記憶を読み取った甲斐があったねぇ』
朝の報道の不自然な建物、変質者、鳩の怪我、行方不明の女性。記憶を読み取ると行った非現実的な芸当。これらの情報から蓮は一つの仮説を導き出した。
『点と点が線で繋がったよ。あんたこの世界の人間じゃ無いだろ?』
蓮は自分の仮説を謎の女性に告げる。
『ん?どゆこと?僕ちゃん付いてけない。』
音村は今の状況に一切ついて行けてない。
『ん~鋭いねぇ~御名答、いかにも私はこの世界の人間ではないよ。
ねぇねぇ聞いてよこっちの世界にゲート繋げるのすっごい大変だったんだよ~、時空の歪みから微かに感じる負のエネルギーを足がかりに大部分の魔力を消費してやっとこさこっちに来られたってわけ、空間移動の影響で関係ない鳩ちゃんや建物を巻き込んじゃったのは計算外だったけどね』
蓮の発言を聞いて驚いたそぶりを見せ女は返答した。
女は蓮の推理が当たったのが予想外だったのか、ご機嫌そうに懇切丁寧に説明した。
『で、そんな異世界変質者が俺に何のようかな?』
蓮は女に対して用件を伺う。
『ん?俺達じゃなくて?おーい聞いてます?』
音村は置いてきぼりだ。
『も~さっきから気になっていたけど変質者って言うのやめてくんない?せめて私のことはクラウンと呼びたまえ。あと君から取り出したい力があるから少し協力してもらいたいだけさ』
女は自分の名前らしきものを明かした。
『クラウン…道化か…変質者にはおあつらえ向きの名だな。取り出したい力か…さっき言ってた、負のエネルギーとやらに関係しているのだろう?なんだ、俺を絶望でもさせたいのか?』
中学二年生の蓮は状況を自分なりに整理し、クラウンに問いかけた。
『飲み込み早すぎるし、鋭過ぎない?あと絶対君周りから嫌われてるでしょ』
クラウンは蓮の発言に嫌悪感と不信感を抱いているようだ。
『お!さすが蓮!アニメ見たいな展開における飲み込みの早さと発想が凄いぞ!
どうやら俺は蚊帳の外みたいだし、そろそろ遅いから帰るぞ!また学校で会おうな!
あと気休めになるかは知らんが少なくとも俺はお前のこと嫌いじゃ無いぞ!じゃあな!』
音村は疎外感に耐えかねたか、もう夜中の為か帰宅しようとした…その時…
ビュン!
『ウォッ!』
パサァ…
帰宅しようとした音村に向かって、クラウンが発生させたと思しき魔法陣からナイフが射出され、音村の髪の毛を少し切り裂いた。
『蓮君と言ったかな、君の友達を殺したら君はきっと絶望してくれる。絶望した君を私達の世界に連れてくよ』
『えぇ~!俺、蓮の絶望の出汁にされて殺されるのぉ~!
ってか今の手品すげー!!』
音村はクラウンの行動に驚く。
『…異界の魔法使い…面白いものを見せてくれるじゃないか…
…絶望した俺を負のエネルギーとやらの燃料タンクにでもしたいのか?
残念だがその男は友達じゃないし、殺しても別に絶望しないぞ』
蓮は音村を殺しても意味がないことをクラウンに告げる。
『えぇ!?面と向かって堂々といいます!?ちょっと傷ついたんだけど!』
蓮が堂々と発言した為、音村は驚く。
『そっか…じゃあそれが本当か試させてもらうよ!』
ビュン!
クラウンは再度音村に向かってナイフを射出した。
『ウォラ!』
蓮はクラウンの行動を予測し、ナイフの軌道に合わせて自分のカバンをぶん投げた。
ボスッ!
ナイフは蓮の投げたカバンに突き刺さり音村には届かなかった。
『逃げるぞ音村!』
『お、おう!』
蓮と音村は全速力でクラウンから逃げ出し、公園を出て道路に出た。
『逃げられると思ってるの?』
クラウンは不敵な笑みを浮かべながら浮遊し二人をすかさず追いかける。
『蓮、あいつは多分俺を狙ってるはずだ。だったらよ、二手に分かれてよ俺が囮になるぜ』
音村は自分がクラウンに狙われていることを理解し、自らが囮になると宣言した。
『…死にたいのか?』
それに対し、蓮は音村の行動に疑問を抱く。
『一緒に逃げたとしても、すぐに追いつかれてどっちか死んでどっちか誘拐だ。
だったら俺が死んで、蓮が助かる確率上げた方がマシじゃん?』
音村は状況を整理した上で自分を犠牲にして蓮が助かる可能性を上げることを優先した。
『…いや俺が囮になる、お前に情けをかけられっぱなしで借りもあるのにそのまま死なれても困るからな。
それに…一応策はある。考えうる限りで最良の結果を約束しよう。』
音村に温情をかけられっぱなしなのが癪だったのか、他人との深い関わりを避ける蓮が、他人の為に自分を犠牲にする覚悟を決めた。
『…分かった。蓮を信じさせて貰う。生きてまた学校で会おう!』
『あぁ、最善は尽くすさ。』
(さて…生きて帰れるかね…)
蓮は音村を先に逃げさせ、追いかけてくるクラウンに向かって立ち止まり、言葉を投げかけた。
『おい!クラウンとやら!これ以上俺達を追っかけるとお前が死にかねんぜ!』
蓮は大声でクラウンを静止させ脅しをかけた。
『…どういう意味だい。?』
クラウンは蓮の発言を警戒し、質問した。
『フッ…俺の一族は最悪の結果を目の前にした際、せめて相手を道連れに出来るように体内に強力な爆弾が埋め込まれているのさ』
勿論ハッタリである。
『…もしそれが本当だとして、仮に爆発したとしたら結局君は死んでお友達もこの街も大変なことになるんじゃないのかい?
本末転倒もいいとこだよ』
クラウンは至極真っ当な正論を発した。
『どうせ、何もしなかったらどっちか死んでどっちか誘拐されてお前に最も都合が良い結果になるだけだからな。
それは癪だから多少被害は大きくなるが、お前を道連れにしたほうが俺はスッキリする』
(音村…逃げ切ってくれ…そしてあわよくば撤退しろ道化…!)
蓮は虚言を重ね、最大限に時間を稼ぐ。
『本気で言っているのかい?』
(…一族に伝わる爆弾…今の私の記憶にはそれを否定する材料がない…
だがこれがブラフで私がいいようにこの小僧に言いくるめられるのはそれこそ私の方が癪だ…決めた…!)
クラウンは蓮の言葉を整理し、一つの決断を下した。
『…本気じゃないように見えるか…?』
蓮は冷や汗をかきながら余裕のない様子で答える。
『君の話が本当かどうかは君を殺してみればわかるはずさ、本当なら私もタダじゃ済まないだろうし、嘘なら絶望した君の友達を連行する…
これこそ!命を賭けた最高のショー!最高に興奮するよ!』
クラウンは声高らかに蓮を殺す宣言をした。
『…所詮道化か…後から泣いても俺は知らないぜ、いやそもそも泣けないか…俺もお前もみーんな!死んじまうからなぁ!』
打つ手がなくなった蓮は最後まで虚言と己を貫いた。
『最っ高に!盛り上がってきたねぇ!ここまで私を昂らせてくれたのは君で5人目だよ!
そんな君と君の覚悟に敬意を払い私も全力の魔法で答えたいのだが生憎、今の魔力は心許ないし、帰りの分の魔力も残しておかないといけない…
今出せる最大限の魔法…!この魔法に私の熱き昂る気持ちを乗せさせてもらう!』
『…来な』
(俺もここまでか…)
『火柱!(フレイムピラー)』
蓮の足元に赤き魔法陣が展開され、燃え盛る炎が舞い上がり柱を形成するかと思われたその時…
グイッ!!
『うぁ!』
バタッ!
何者かが蓮の肩を後ろから強く引き蓮は倒れた。
『…信じた俺が馬鹿だったぜ。生きて学校でまた会おうって言ったけど、一人で死んで俺を逃がせなんて言ってねぇんだよ。何が最良の結果だ聞いて呆れるぜ。残されたこっちの身にもなれってんだ』
『なぜ逃げなかった!よせ!音村!お前死ぬぞ!』
『ダチ公見捨てて、逃げて生き延びろってか!?そんなダッセェ人生死んでもゴメンってもんなんだよぉ!』
『…音村……』
蓮は弱々しく言葉を発した。覚悟を決めた漢の背中を前に蓮はこれ以上語ることは無かった。
『向こうで会おうぜ相棒…向こうに学校があったらいいな!死んでるけど!
まぁ俺の分まで人生楽しんでくれや!』
音村は笑い気味にそう語った。
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