もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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シンのはなし 1

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 細身の美しい男がユグン街に到着した駅馬車から降りて来た。もうすぐ王都だというのに雪で道は塞がれ春まで街道は閉鎖された。
 空腹だったため、近くの食堂に入る。スープパスタが売りの店だった。スープパスタは温かい湯気を出し、寒さで氷付きそうな体に生命を運んでくれた。

「参ったなぁ、今年は大雪だな。おやじビールをくれ」
 カウンターで食べていると横に座った男が大きな声を出している。
「おっうまそうだな。おやじこの料理も追加ね」「あいよ」
 ローブを頭から被り静かに食事をしている男の料理を指さし、男は言った。
「ああ、寒い。冬は苦手だよ。はやく家に戻りたいねぁ。あんたはここの人?」
 ローブの男に後に来た男は話かけた。
「…いや」
「あんたも旅の人?」
「…」
「ユグンに閉じ込められちゃったなぁ。雪が溶けるまで街道は閉鎖だって。シシリアキングスはいい所だな。広いし、ギルドもちゃんとしてるし家族で移住しようかな」
 後に来た男は返事を待たずにツラツラと話を続ける。

「家族がいるのか?」
 ローブの男はふいに返事を返した。
「いるよ。あんたもいるだろう?」
「もういない」
「…そっか、元気だせよ。まだ若いんだろう?これからいくらでも家族は出来るよ」
「そうだな」
「おっスープパスタか、温まりそうだな。ああ、生き返る。温ったけー、うまいーー」
 男は独り言をいいながら食べている。
「おやじ、代金を置いておく」「まいど」
 ローブの男は席を立った。

「おう、またな。冬の間会うかもな。俺はコルって言うんだ。あんたは?」
「シンだ」
「そうか、またどこかで」
「ああ」


 シンは食事を終えそのまま宿に向かう。安い宿は満室だ。何軒か回り1つ空いている宿に辿り着いた。春まで予約しないと他の宿を取れる保証はないよ、とおかみに言われ雪が溶けるまでの間はこの宿に定住しなければならないようだ。
 陛下から貰った金と身の回りの物を売った時に得た金がある。しばらくはやっては行けるがこの冬の間にそこが尽きてしまいそうだった。

 シンは護身用に剣を腰に指していた。幼い頃嗜む程度で剣術を習っていた。筋がいいと褒められたものだ。しかし、王妃になるのに剣術よりマナーや所作を優先させられた。元々体を動かすのは嫌いじゃない。剣術も力を付けておけばと後悔した。
 シンは商人ギルドに登録をした。商人試験にはその場で受かり相談窓口に赴いた。
「商人になる伝手がなくて何をすればいい」
 精一杯男のように振舞う。

「そうですね。魔力が多く魔術が得意でしたら魔法円や陣を作成して取引をなさるとか、今の時期は無理かもしれませんが森の素材を採取するという方法もあります。他に売り子とか冒険者に登録をして簡単な労働で金を稼ぐ方法もありますが、あなたは勉強会も受けず商人試験を受かったのでしたら、勉強の出来る方だと思いますので業務ギルドに登録されて見ては?」
「業務ギルドはどのような事をする?」
「業務ギルドは何かを教える事が出来るという所です。登録をしましたら自分の得意な事を教える代わりに賃金を得るのです。業務ギルドは中間役をしてくれるので生徒も募集してくれますし教室も貸してくれますよ。大人に簡単な読み書きを教える人もいます。あとは編み物を教える人や職人さんとか主婦の方なら料理とか、色々ですね。自分の得意分野ですから規制もないですし、好評ですよ」
「その中には剣を教える人もいるのか?」
「ええ、いますよ。剣がお得意ですか?」
「いや、自分が習おうかと思って」
「ふふ、そうでしたか、それもいいかもですね」
「ありがとう。業務ギルドに行ってきます」
「はい、頑張って」

 シンは自分が教える事には自信があった。ユリウスにも勉強は教えていたし、兄弟の面倒だって見てきたのだ。しかし、街中にあるガラスに映る自分の姿に困惑した。こんな薄汚れた小さな男に勉強や何かを習いたいだろうか。旅の為に汚らしい男の恰好をしているに過ぎない。シンはガラスの向こうにある。女性用のワンピースに目をやった。
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