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シンの周囲

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「やあ、美しいシンフォニー、真っ白なドレスがとても似合うね」
 数名の侍女を従え、真っ白な出で立ちで颯爽と食事の席に現れたユリウスは言った。
「ありがとう、ユリウス。最近特に忙しそうね。ちっとも私の相手をしてくださないじゃない」
「ごめんよ、シンフォニー。なかなか解決案がでないんだ。シシリアの貴族たちがアンバーを独立させてくれなくてね。金なら払うと言っているのに、もう少ししたら援軍が来ると思うんだ」
「援軍?」
「シシリアキングスに吸収させられた国が反旗をひるがえそうって訳さ」
「どこの国なの?コスモポリタン?メンガーチス?ブルータス?」
「そんなにあるのかい?」
「まだあると思うわよ」
 シンはワインをグイっと飲む。
「もっと短い名前じゃあなかったかな」
「では、ロイズかしら」
「ああ、そんな名前」
「へえ、ロイズは小さな国だったけど武力はまあまあよね。でもシシリアキングスにはかなわないからと合併を余儀なくされたんじゃなかったの?」
「そうだと言っていたな。でもカネさえあれば勝てるのだと言っていたよ」
 いつのまにそんな交渉をしていたのか。

「ユリウス、あなたがそんなに剛腕だとは思わなかったわ」
「僕?僕は全然そんなんじゃないよ。僕はただのお飾りだよ」
「ご謙遜ね」
「カネさえあれば、なんでも思いのままだよ」
「ユリウス、資金元は教えて下さらないのでしょう?でしたら私の前でその話はしないで」
「悪かった。…気分が逸れたな。僕はもう行くよ。ああ、食事は僕の部屋に運んで。シンフォニーは好きにするといい」
 席を立つとシンフォニーを見ずに部屋に戻った。

 シンフォニーはプルプルと怒りに震えた。
 何が悪かったというの…資金元の話はしない。でもカネカネとうるさい。もういいわ。私は私で好きにさせて貰う。

「テム!」
「なんだい?」
「部屋に戻るわ。これからは私の食事も部屋に運んで。ユリウスが一緒にと言うまで部屋で頂くわ」
「あいよ」

 シンは自分の周りを確認する。盗聴などが仕込まれていないか確認しているのだ。
「シンがあたしを指名してくれたおかげで嫌な仕事をせずに済んだよ。あんたの身の回りを世話をするなんてこんな楽な仕事ないよ」
「何言っているのよ。貴族の子女なんて我儘でそれは面倒な生き物よ。たまに命を落とす侍女だっているわ」
「おお、貴族様はこわいねぇ、でもあんたはそんな事はないだろう?」
「どうかしらね」
「やめとくれよぉ」

 シンはテムに言い、ドレスや装飾品を他国からジャンジャン買わせた。ユリウスが買っていいと言ったのだ。シンの回りには買わなくても豪華な装飾品が集まって来る。シンの美しさを見た貴族から送られたりするのだ。もちろんその貴族はユリウスがカネをバラ撒いて寄って来た貴族だ。決して信用してはならない。
 しかしカネは持っている。その貴族が貴族を呼び、ユリウスは完全に輪の中心にいる。
 シンはユリウスがこれからどうするのかどうしたいのかは分からない。最近ではシンを出汁に使い貴族を集め、資金があるのを仄めかし人材確保をしている。

 国を作る?どうかしている。すぐに叩きのめされるのが落ちだ。シンはそんなのには関わりたくないと思っている。いつでも逃げる道だけは確保して置かなければならない。
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