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1巻
1-2
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ルーイはジョセフが精霊なしだということを親に聞いて知っていた。そして、親から精霊なしをバカにしたり、からかったりするのは絶対にするなと言われていたのだ。過去に精霊なしをバカにした人の多くはその後、精霊なしになったと聞いている。精霊なしをバカにすると自分に返ってくるのだ。
そして、ミルが精霊に対して疎いことに納得した。ジョセフは自分が精霊なしのためミルには精霊の話をあまりしていないのだろう。
ミルはルーイと精霊の話をしながら、ジョセフに初めて殴られたことを思い出した。
「お父さんには精霊が付いてないの?」
七歳くらいの頃、精霊たちから精霊付の話を聞いて、誰かとその話をしたかったミルはジョセフと精霊の話をしたら仲良くなれるのでは、と考えた。精霊の話をして距離を縮めようと思ったのだ。
そのキッカケとしてなんの精霊が付いているのか聞いてみようと思い、ジョセフを観察していた。しかしジョセフの周りに精霊はいなかった。お出かけしているとかないよね? と思って、そのままあのセリフが出てしまったのだ。カッと目を見開いて「誰に聞いた!」とジョセフはミルを殴った。
きれいな緑色の瞳を持って生まれたジョセフは両親から喜ばれ、きっと緑の精霊が付くに違いない、代々花屋の我が家にぴったりだと、言われて育った。
しかし、精霊は付かなかった。両親には土と水の精霊が付いていたからジョセフに緑の精霊が付けば商売の幅も広がると期待が大きかった分、落胆も大きかった。
しかし、ジョセフの両親はそんな息子を粗末に扱ったりしなかった。むしろそれまで以上に可愛がった。だが、それがジョセフのプライドをさらに傷付けてしまったようだった。
ジョセフは「やはりみんなオレをバカにしているのか!」と癇癪を起こした。自分が精霊なしであることにミルが気がついたのは、近所の人たちが噂をしているからだと思ったようだった。精霊なしは冷遇されるわけではないが、やはり仕事に関することは精霊付が優先される。
ジョセフも仕事を探す際に苦労をしたのだそうだ。結局、地元に残り花屋を継ぐしかなかった。そのことはのちに近所のおばさんに聞いた。
――あれは考えなしだった。私が悪い。殴られても仕方ない。……仕方ないかな? いきなり殴らなくても……。子供なんだし……中身、大人だけどね。でも知らなかったし……
精霊たちに今からでも付いてあげてよ、と頼んだが、
「苦いからやだ」
と、断られた。
――あぁ、苦いのはいやだね……
ミルは十歳になる頃には借馬車を操り、一人で市場に行って買い付けをするまでになっていた。市場は花の他にも、野菜、果物、小麦粉などの食べ物や食器類、雑貨、魔術具など様々な商品が集められている。
生花を扱っているジョセフの店は毎朝市場に行く。しかし、子供であるミルでは、いつも枯れそうな売れ残りの花しか仕入れることができなかった。大人でも難しい市場の買い付けを子供ができるはずがないのだ。いくら中身がおばさんでも、買い付けなどやったことがない。そして売れない花を仕入れてくると、役立たずとジョセフから殴られる。それが十歳のミルの日常だった。
ジョセフは近所の目があるからなのか、店番だけはしている。店の花を買ってくれるのは、ジョセフのファンだ。ちょっとくたびれた感じのイケオジはこの世界でも需要があるらしい。枯れそうな花でも「これはこれできれいよ」と買っていく。しかし、そんな花はもちろん安い値段でしか売れない。
ジョセフは「最近体調が悪くて子供に迷惑をかけているから、申し訳ない。でも進んで市場に行くと言ってくれて助かっている。しかし売れ残りばかり買ってきて困る。私も市場に行こうとすると休んでいてくれと言って困らせるんだよ、はは」とファンに言いふらして同情を買っている。
――大うそだ。昼間まで寝ていたいだけじゃないか。
そんな話を横で聞きながら、ミルはいつものように店の周りを箒で掃いていた。
「やぁミル、元気そうだね? お父さんの手伝い、えらいね。最近はミルが仕入れに行っているそうじゃないか。でもまだ仕入れはムリじゃないかな? 他のお店の人に仕入れを任せてみたらどうだい?」
そう話しかけてきたのはミルの花屋の二軒先で八百屋を営んでいるジルだ。どうも近所でミルのことが噂になり、親思いだが空回りしていると心配されているようだ。町内会で話し合い、ジルがミルに直接助言をすることにしたらしい。
ミルは、笑顔をジルに向ける。
「そうですね! そうします。ありがとうございます」
素直に頷いた。そこへジルとの話が聞こえたのか、ジョセフが店の奥から出てきた。
「ちょっと待ってくれ。そんなことをしたら手数料を取られてしまうよ、ミル」
ヘラヘラと笑いながら近寄ってくるが目は笑っていない。
「だったらジョセフが仕入れをするしかない。まだミルにはムリだろう」
「そうですよね」
ミルはウンウンと笑顔で答える。ジルは不思議そうな顔でミルを見ていた。父が言いふらしている内容と反応が違うからだろう。
そして夜、またミルは殴られた。ジョセフはミルを殴ることになんの罪悪感も抱かない。それは、ミルが次の日になったらケロッとしているからだろう。痛がってはいるがそれでも自分を睨み付ける。子供にまでバカにされているように感じられるのかもしれない。
ミルはよく殴られたが、へこたれない。なぜか。それは痛くないからだ。ミルは精霊たちにあるお願いをしていた。
ジョセフから初めて殴られたとき、壁にたたき付けられた。さすがに痛かった。意識が朦朧としている間に精霊たちがジョセフに攻撃しようとしていた。「ダメッ!」と大きな声を出したことでジョセフは「なにがダメなんだ!」とまた殴ってきた。
なんとか部屋に逃げ込みジョセフから逃れることができたが、精霊たちはミルに抗議した。だがミルがそんなこと願ってないと言うと、わかってくれた。
『また殴られたらどうするの?』
紫の精霊は両手を腰に当てて怒っている。
「時ちゃん、怒ってくれてありがとう」
ミルは時の精霊のことを時ちゃんと呼ぶ。
「でもお父さんを攻撃したらまたあとが大変だよ。どうやって反撃したのかと聞いてくるよ。精霊がたくさん味方してくれているなんて説明できないし……」
五十体ほどの大所帯の精霊たちがミルの味方をしていると知ったら大人はなんと思うのだろう。きっとどこかに売られる。なにをもって売られると確信しているのか自分でもわからないが、ミルは飼い殺しのような目にあわせられると思っている。ラノベの影響かもしれない。
『でも……じゃあまた殴られたどうするの?』
癒の精霊がミルに治癒をかけながら聞いてくる。大きく腫れた顔がきれいに治っていく。
「白ちゃん、ありがとう」
癒の精霊は白ちゃんだ。
「それなんだけど、どうにか精霊付ってバレないように回避できないかな?」
ミルは前世のこともあり、一回でも殴られたら誰であろうと縁を切ると決めている。しかしまだミルは七歳だ。この歳ではひとり立ちは難しいだろう。ミルは心配してくれる精霊たちにある提案をする。
風の精霊たちは集まって会議中だ。そして、指揮をとるのは、一番光の強い精霊だ。顔係・胴体係・下半身右係・下半身左係・飛んだ先係の第五部隊で形成され、一部隊に大中小の三体の精霊が付く。
ジョセフの姿が見えた瞬間に風部隊がミルの周りを囲みに入る。風の精鋭たちはどこから調達したのか知らないが、いつのまにか武装している。
ミルはその姿を見るたびに、吹き出しそうになるのを堪える。その姿がまたジョセフの癇に障るようで、なにかにつけて殴ってきた。風たちはジョセフの手や足が当たる瞬間に前に入り込み、ミルに当たらないようにする。そして、身体を浮かせ吹っ飛んだように見せかけた。これは何度も練習した。あまり、派手に吹っ飛ぶとあやしまれる。
吹っ飛ばされた先にも風たちが待機しているため、よいクッションになってくれて痛くないし、なんなら飛んでいるみたいで楽しかったりする。
もちろん、しばらく動けないフリをして痛がることも忘れない。そこは必須である。しかし、痛くないから平気というわけでもない。殴られる瞬間はやはり恐ろしい。殴られないように一応発言は気をつけているし、あまりジョセフの手の届く範囲内には近づかないようにしているが、またそれがジョセフの癇に障るらしい。
殴られたあとは、いつも以上に大人しくしている。そうでないと痛くないのがバレてしまう。
風たちに防御をお願いしてから、ミルは精霊の特性を生かして、なんとか家事を楽にできないかと考えた。
一番辛いのは洗濯だ。二人分しかないが、寒い冬のときなんて冷たい水で手があかぎれになるし、時間もかかる。水の精霊と契約している主婦などは近くにあるドラム缶に水を張って水を左右に回転させ汚れを落としている。まさに、洗濯機だろう。
それを小遣い稼ぎにしている主婦もいる。やりすぎると魔力切れを起こし倒れてしまうので、あくまで自分のところのついでだ。そのドラム缶は洗濯場に常備されている。そのために置かれているのだろう。ミルもそのドラム缶を使えばいいのだが、主婦たちに見つかりジョセフに精霊のことがバレると困る。主婦たちのネットワークを甘く見てはいけない。では、どこで洗濯をしようか。
「時ちゃんは私を運んで瞬間移動とかできる?」
『もちろんできるよ。普通の人だと魔力が少ないからムリだけどミルは関係ないから』
――ん? 関係ないってなに? ……ちょっと色々確認したいことがあるけど、まずは洗濯のことを考えよう。
「そ、そうなんだ。じゃあ森の奥とか人が来ないようなところに連れていってくれない?」
『もちろんいいよ』
「ほんと? ありがとう。あっ、その前に黒ちゃんにお願い。私を他の人に認識できないように隠ぺいとか使える?」
ウロウロしているのを誰かに見つかったらやっかいだ。闇の精霊は黒ちゃんだ。
ちょっとして、黒の光が前に傾いた。たぶんできる、という意味だろう。人型ではないが言葉は理解できているようだ。ミルは黒ちゃんに隠ぺいをかけてもらう。
周りが少し黒くなるだけで自分ではわからない。試しに、とジョセフがいる部屋まで行ってみる。見つかればトイレだと言えばいいのだ。
ジョセフはちょうど店から住居に移動しているところだった。目の前にいたが、認識されないまま通り過ぎた。どうやら成功のようだ。ミルは静かに部屋に戻った。
その足で、川が近くにある森の中に転移してもらった。転移したのは夜の森、真っ暗で静かだ。川のせせらぎだけが聞こえる。今いる森はミルが住む街の西門からそう遠くない。
西門はユロランに入るための門だ。反対側には東門もある。門の外には森がある。その森には獣の他に魔獣と呼ばれる危険生物が生息している。門から出て、馬車や人が通る道には魔獣避けのための結界が張ってあるが、少しでも外れると結界が効かなくなるため、とても危険だ。
ミルは結界魔法がなんの属性なのかわからなかったため、精霊たちに聞いてみた。
『知らない』
精霊たちの小さな光が同時に傾く。可愛いが、精霊もすべてを知っているわけではないようだ。
「知らないか……。じゃあ魔獣が出たら、ひのちゃんが追い払ってくれる?」
火の精霊はひのちゃんだ。
『私の出番ね! わかったわ! まかせて!』
やっとね! とばかりに、火の玉のように真っ赤に燃え上がる。
「あっ、その火の玉素敵! そのまま、そのまま。そのままでいられる?」
ロウソク代わりにと火の玉の姿で固定してもらった。他の数体のひのちゃんも同じように小さな火の玉になっていく。
「ありがとう、みんな」
電気などないこの世界は、夜になるとロウソクに火を灯す。しかし、ロウソク代もかかるのでミルには渡されない。火の精霊もロウソクは出せないが、火の玉になってくれたら夜の闇も暗くない。
ミルが笑顔でお礼を言うと、火の精霊は火の玉のままうれしそうに飛び回った。ちょっとシュールだ。
翌日、市場から戻ったミルは、店をジョセフに任せ、洗濯に向かう。途中で死角になっている場所に移動して黒ちゃんに隠ぺいをしてもらい森に転移する。森に人影はない。昨日準備した、土でできた弥生式土器のような大きな器が三つある。
その三つの器は昨日の夜、ドラム缶がないなら作ってしまえと土の精霊に頼み、作ってもらったものだ。
「土ちゃん、ドラム缶のような入れ物って作れる?」
土の精霊は土ちゃんだ。
『やっと、おいらの出番だね! 任せて』
土ちゃんは張り切って三つも作った。
――そんなにいらないけど、まっいいか。私とおやじの分を分けよう。
その器は固く水で激しく回しても壊れないようにしてもらった。
その後水ちゃんに土から水分を抜いてもらい、さらに強固にしてもらったうえで乾かした。
初仕事に土ちゃんは満足そうだった。
その器に洗濯物を入れて、水ちゃんにグルグル回してもらう。
洗濯の間、ミルは休憩を取ることにした。いつも朝から晩まで小さい身体で働きまくっているのだ。どこかで休息を取らないと死んでしまう。緑の精霊――緑子ちゃんたちに葉っぱでハンモックのような物を作ってもらい、横になる。
――最高、ちょっと昼寝。いつも朝が早いので助かる。
ミルはキラキラと飛び交う精霊たちを見ながら眠りに落ちた。目が覚めると青い空が見えた。眠っていた時間はそんなに長くないようだ。
『ちょっと時間を止めといた』
時ちゃんがすごいことをサラッと言う。
洗濯を終え、街に戻った。洗濯物は、水ちゃんに少し湿った状態になるまで水を抜いてもらった。それを干したら次は掃除だ。風たちに埃を飛ばしてもらい掃除は終了した。ジョセフは店のレジ前で居眠りをしている。いつものことだ。
家事はこれで楽になった。夕食を作るまでに少し時間ができた。あとはお金だ。独立するにあたっての資金を今から考えなくてはならない。せっかく精霊たちがいるのだ。うまく活用すればお金を稼ぐことができるだろう。
そう考えていたミルだったが、すぐに行き詰まった。お金はすべてジョセフが握っている。花を仕入れに行っても、その場で現金取引なんてしない。後日まとめてジョセフに請求が行くのだ。そのうえ、商売をするなら商人ギルドに登録しなければならない。登録には身分証明がいる。それがないと外から来た者と判断され、多くの書類が必要になる。緑子ちゃんに人気の花を作ってもらって道端で売ろうかと考えていたが頓挫する。
この国で生まれて育った者ならみんな必ず持っている身分証明がある。年に一度、夏になると満五歳になった子供たちを教会に集めて儀式がおこなわれる。そこで子供たち一人一人に、名刺くらいの長方形の薄い銀色をしたプレートのようなものが手渡される。それと同時に教会に街の一員になったことを認めてもらう。いうなれば戸籍のようなものだ。それがないと就職先にも結婚にも苦労するらしい。
ある魔術具によって、そのプレートに名前と出身地が登録できる。登録すると一センチ×三センチくらいのプレートになる。普段は銀色のただのプレートだが、専用の魔術具に通すと内容が確認できるそうだ。住民はなくさないように常に首から下げていた。プレートには親切にも丸い穴があいていて紐が通せるようになっているのだ。しかし、ミルは持っていなかった。
以前、ルーイからどうして首にかけないのかと、聞かれたことがある。なんのことかわからず、ルーイにそのプレートを見せてもらった。見たことがなかった。そのときは、「お父さんが持っている。私だとすぐなくすから」と慌てて言い訳をしたのだ。なんとなく知らないことを知られるのが怖かった。
「この首にかかっているチェーンは六歳の誕生日に父さんにもらったんだ。なくさないようにって。普通はそのことを説明して首にかけてもらうんだよ。それが習わしだって。母さんも父さんも言ってた。おまえも自分の子供ができたらそうするんだぞって」
眩暈がしそうだった。そんなこと、してもらったことなんてない。ミルは自分の誕生日も知らないことにそのときに初めて気がついた。
――なんでみんな知っているの? 私はこの国で自分がいつ生まれたのかなんて知らない。秋頃だとかしか知らない。異世界でも誕生日のお祝いとかするなんて初めて知った。
ミルのプレートはたぶんないだろう。聞いても殴られるだけだ。身分証明がなければ他の街や他の国に行けない。ジョセフはミルを一生この街に縛るつもりかもしれない。戸籍がない怖さは前世でもよく知っている。パスポートも作れないし、結婚もできない。
――ジョセフが恐ろしい。これは成人になるまでとか言っていられない。早急に動かないと。でも情報もお金も足りない。
ミルは、情報を集めようと、まず精霊たちにこの国のことを聞いた。時ちゃんは時の精霊だ。昔のことから今の情勢まで詳しいはずだ。
『いいよ。じゃあ目を閉じて』
言われたとおりに目を閉じた。おでこがほのかに温かくなり、色々な映像が頭の中に現れた。最近のことから徐々に古いものになっていく。
不思議なことに、数分でこの国の内情や風習などを知ることができた。ミルが直近で必要そうな情報としては、この国には八歳から十歳まで午前のみ通える学校のような施設があり、二年間通うとその証としてプレートに記される。それを学卒という。
この施設は、国が設立したもので、無料で文字や簡単な計算を教えてくれる。しかも昼ご飯付だ。そのことはミルも知っていた。しかし、プレートに学卒として記されることは知らなかった。ジョセフはミルを学校に通わせていなかった。
――それってまずくない?
この学校を出ない子は、ほぼいないらしい。それはそうだろう。勉強も教えてくれてご飯が付いているのだ。貧しい家庭なら進んで子供を行かせるだろう。本当ならルーイと一緒に学校に行くはずだったのだ。ルーイに学校に行かないのかと尋ねられたこともあった。ジョセフは近所の人たちに、「行きたくない。お店を継ぐから学校なんて行かなくていい」と、ミルが言っていると言いふらしていた。もちろん学校に入るのも、その戸籍プレートが必須なのだ。どうやったのか、ジョセフがミルのプレートを取得していないことは近所の人たちにバレていないようだった。
ミルは元々自分で勉強はしていた。文字がわからないと仕入れなんてできない。市場にいた人と仲良くなり、文字と数字はすでに習得していた。簡単な計算は習わなくてももちろんできた。できはしたが、学校を出ていないという現実は消えない。
――どうしたものか……
ミルは精霊に頼めばどこにでも行ける。しかし真っ当な生活をしたいミルは、プレートがほしい。
――さすがに日陰の人生なんていやだ。しかも親のせいで。どうしたものか。
とりあえず、市場や買い物で知り合った大人たちに愛想よくした。情報を得るためだ。元々愛想よくはしていた。それが仕事をするということだ。
前世から女性の仕事は、ほぼ愛嬌を振りまくことだと思っている。前世では十八歳から働いていたが、真顔で働いていたら無愛想だの、あの人は冷たいだの散々に言われた。仕事をしているときに笑えるか! とも思っていたが、やはり女性は笑顔なのだ。この世界でもやはり笑顔は効く。行き交う人に笑顔で挨拶、声かけ、愛想笑い、なんでもした。
笑顔って大事。
情報を得るための行動だったが、おかげで仕入れもうまくいくようになった。半年もすると、ジョセフが仕入れをしているときと同じくらい、いや、それ以上に売れ筋を売ってもらえた。しかも相場より少し安く。みんなが同情して、優先して仕入れさせてくれたのだ。
あざといって万国共通。
こんないい人たちを騙しているようで申し訳なく思うが、ミルも生きていかねばならないので、そこは許してほしい。安く仕入れて高く売る。これは商人の鉄則だ。なんちゃって。
しかし花屋が儲かっても、ミルには入ってこない。ジョセフが喜ぶだけだ。まあそれが狙いでもある。店に余裕が出てくれば、ジョセフの財布の紐にも緩みが出るだろう。
そこでまた、おばさんスキルの発動だ。大人たちにまざって、あざとさ大爆発の交渉をする。それができたのも前世の記憶に他ならない。恥も外聞もムシ、ムシ、ムーシである。もちろん、ミルの可愛い顔もプラスに働く。幼く可愛い、今だけの特権だ。そして花の仕入れに成功したら、近所での食材の買い物にも発動させるだろう。ジョセフの財布の紐も緩み、予算が増えた。お肉や野菜の値段も負けてもらう。さらに色々とまた精霊たちにお願いをした。
――ふふふっ。
洗濯をしている場所の近くに小さな菜園を作り、緑子ちゃんと土ちゃんにお願いして野菜を育ててもらっている。種をもらって植えたところ、みるみる育った。種はもちろん街の人にあざと可愛く、ねだった。そして育った野菜たちは時ちゃんに預けている。時ちゃんは時空の空間に倉庫があると言っていた。そこに入れたものは傷まない。
肉は洗濯している間に小さな小動物を狩って手に入れた。水ちゃんに協力してもらい、水でスパンと一振りだ。可愛い野ウサギだったりすると最初は仕留めるのに躊躇したが、しかしそこは前世はおばさん、すぐ慣れた。顔と内臓以外は全部食べる。顔部分はちゃんと埋葬して、合掌する。
ミルはまったく動物を捌けなかったが、家から遠く離れた街の肉屋まで行き、値段の相場や捌き方を教わっていた。この半年で少々大きな獣でも捌けるようになっていた。
しかし、まったく食材を買わないわけにはいかない。ジョセフに買っていないことがバレるかもしれないからだ。いつもの量を安く買い、時ちゃんから野菜や肉を取り出してもらい、調理して食卓に並べる。少し豪華になった食卓を見て、ジョセフは上機嫌だ。
しかし、おつりは毎回その日に、きっちりジョセフに返すことになっている。もちろん、安くしてもらった金額と時ちゃんから取り出した食材の金額を引いてだ。
市場や近所の大人たちから得た情報により、自分の置かれている状況も見えてきた。お金も少しずつ貯まっている。家事を任されるようになった七歳ぐらいのときから、毎日食材を買うために五ベニーをもらっていた。この国の通貨はベニーだ。パンひとつで一ベニーほど、円でいうと百円くらいだろうか。それが銅貨一枚になる。その他の硬貨として十ベニーで小銀貨、百ベニーで大銀貨になる。金貨は千ベニーで一番大きな硬貨だ。金貨ともなると、庶民はほとんど見ることもない。
昔はどんなに頑張っても一ベニーをくすねるのが精いっぱいだった、九歳頃になると畑が充実し出したので、ちょこちょことタンス預金が増えていった。三年でようやく五百ベニー、約五万円になった。
もうすぐ秋、ミルは十一歳になる。成人となる十五歳まで待たずに、家を出てもいいのではないかと思っていた。
厳しい冬が来る前にどこか落ち着ける場所を見つけたい。
しかし、問題があった。プレートだ。プレートがないと街から出られないし、入れない。家を出ても、この街・ユロランにいては、ジョセフに見つかり連れ戻されるだろう。とりあえず隣街に逃げたい。そしてプレート問題に行きつく。
プレートは再発行もできると聞いた。そのため、とりあえずの拠点にする隣街のイージュレンを視察することにする。うまくいけばそこでプレートを作れるかもしれない。もちろん移動は、時ちゃんにお願いをする。まだプレートがないので門を通らずに潜入だ。
潜入の前にミルは森の秘密基地で変装をした。今までのようなジョセフのお下がりを着ていては変に目立つだろう。ミルはモスグリーンのワンピースに身を包んだ。
ミルにとっては生まれて初めてのワンピースだ。このワンピースはミルが近所で情報収集をしているときに、パン屋のおばさんからもらったものだ。
その日、ミルはパン屋で買い物をして雑談を装い情報収集をしていた。
「これ、私が成人のお祝いのときに両親が作ってくれたワンピースなの。生地もまあまあのものよ。成人のお祝いと結婚のお祝いでしか着なかったのよね。本当は赤の布地がよかったんだけど赤は値が張るから、この色になったのだけど。娘に着てもらおうとずっと持っていたのよ。でも生まれたのは男ばかりで孫もまだだし。いい加減古くなっちゃうわ。もらってくれない?」
「えっ! こんな素敵なワンピースもらっていいの?」
「いいわよ。誰も着ないし、だからといって捨てられないしね。年頃のお嬢さんが着てくれた方がワンピースも喜ぶわ」
そして、ミルが精霊に対して疎いことに納得した。ジョセフは自分が精霊なしのためミルには精霊の話をあまりしていないのだろう。
ミルはルーイと精霊の話をしながら、ジョセフに初めて殴られたことを思い出した。
「お父さんには精霊が付いてないの?」
七歳くらいの頃、精霊たちから精霊付の話を聞いて、誰かとその話をしたかったミルはジョセフと精霊の話をしたら仲良くなれるのでは、と考えた。精霊の話をして距離を縮めようと思ったのだ。
そのキッカケとしてなんの精霊が付いているのか聞いてみようと思い、ジョセフを観察していた。しかしジョセフの周りに精霊はいなかった。お出かけしているとかないよね? と思って、そのままあのセリフが出てしまったのだ。カッと目を見開いて「誰に聞いた!」とジョセフはミルを殴った。
きれいな緑色の瞳を持って生まれたジョセフは両親から喜ばれ、きっと緑の精霊が付くに違いない、代々花屋の我が家にぴったりだと、言われて育った。
しかし、精霊は付かなかった。両親には土と水の精霊が付いていたからジョセフに緑の精霊が付けば商売の幅も広がると期待が大きかった分、落胆も大きかった。
しかし、ジョセフの両親はそんな息子を粗末に扱ったりしなかった。むしろそれまで以上に可愛がった。だが、それがジョセフのプライドをさらに傷付けてしまったようだった。
ジョセフは「やはりみんなオレをバカにしているのか!」と癇癪を起こした。自分が精霊なしであることにミルが気がついたのは、近所の人たちが噂をしているからだと思ったようだった。精霊なしは冷遇されるわけではないが、やはり仕事に関することは精霊付が優先される。
ジョセフも仕事を探す際に苦労をしたのだそうだ。結局、地元に残り花屋を継ぐしかなかった。そのことはのちに近所のおばさんに聞いた。
――あれは考えなしだった。私が悪い。殴られても仕方ない。……仕方ないかな? いきなり殴らなくても……。子供なんだし……中身、大人だけどね。でも知らなかったし……
精霊たちに今からでも付いてあげてよ、と頼んだが、
「苦いからやだ」
と、断られた。
――あぁ、苦いのはいやだね……
ミルは十歳になる頃には借馬車を操り、一人で市場に行って買い付けをするまでになっていた。市場は花の他にも、野菜、果物、小麦粉などの食べ物や食器類、雑貨、魔術具など様々な商品が集められている。
生花を扱っているジョセフの店は毎朝市場に行く。しかし、子供であるミルでは、いつも枯れそうな売れ残りの花しか仕入れることができなかった。大人でも難しい市場の買い付けを子供ができるはずがないのだ。いくら中身がおばさんでも、買い付けなどやったことがない。そして売れない花を仕入れてくると、役立たずとジョセフから殴られる。それが十歳のミルの日常だった。
ジョセフは近所の目があるからなのか、店番だけはしている。店の花を買ってくれるのは、ジョセフのファンだ。ちょっとくたびれた感じのイケオジはこの世界でも需要があるらしい。枯れそうな花でも「これはこれできれいよ」と買っていく。しかし、そんな花はもちろん安い値段でしか売れない。
ジョセフは「最近体調が悪くて子供に迷惑をかけているから、申し訳ない。でも進んで市場に行くと言ってくれて助かっている。しかし売れ残りばかり買ってきて困る。私も市場に行こうとすると休んでいてくれと言って困らせるんだよ、はは」とファンに言いふらして同情を買っている。
――大うそだ。昼間まで寝ていたいだけじゃないか。
そんな話を横で聞きながら、ミルはいつものように店の周りを箒で掃いていた。
「やぁミル、元気そうだね? お父さんの手伝い、えらいね。最近はミルが仕入れに行っているそうじゃないか。でもまだ仕入れはムリじゃないかな? 他のお店の人に仕入れを任せてみたらどうだい?」
そう話しかけてきたのはミルの花屋の二軒先で八百屋を営んでいるジルだ。どうも近所でミルのことが噂になり、親思いだが空回りしていると心配されているようだ。町内会で話し合い、ジルがミルに直接助言をすることにしたらしい。
ミルは、笑顔をジルに向ける。
「そうですね! そうします。ありがとうございます」
素直に頷いた。そこへジルとの話が聞こえたのか、ジョセフが店の奥から出てきた。
「ちょっと待ってくれ。そんなことをしたら手数料を取られてしまうよ、ミル」
ヘラヘラと笑いながら近寄ってくるが目は笑っていない。
「だったらジョセフが仕入れをするしかない。まだミルにはムリだろう」
「そうですよね」
ミルはウンウンと笑顔で答える。ジルは不思議そうな顔でミルを見ていた。父が言いふらしている内容と反応が違うからだろう。
そして夜、またミルは殴られた。ジョセフはミルを殴ることになんの罪悪感も抱かない。それは、ミルが次の日になったらケロッとしているからだろう。痛がってはいるがそれでも自分を睨み付ける。子供にまでバカにされているように感じられるのかもしれない。
ミルはよく殴られたが、へこたれない。なぜか。それは痛くないからだ。ミルは精霊たちにあるお願いをしていた。
ジョセフから初めて殴られたとき、壁にたたき付けられた。さすがに痛かった。意識が朦朧としている間に精霊たちがジョセフに攻撃しようとしていた。「ダメッ!」と大きな声を出したことでジョセフは「なにがダメなんだ!」とまた殴ってきた。
なんとか部屋に逃げ込みジョセフから逃れることができたが、精霊たちはミルに抗議した。だがミルがそんなこと願ってないと言うと、わかってくれた。
『また殴られたらどうするの?』
紫の精霊は両手を腰に当てて怒っている。
「時ちゃん、怒ってくれてありがとう」
ミルは時の精霊のことを時ちゃんと呼ぶ。
「でもお父さんを攻撃したらまたあとが大変だよ。どうやって反撃したのかと聞いてくるよ。精霊がたくさん味方してくれているなんて説明できないし……」
五十体ほどの大所帯の精霊たちがミルの味方をしていると知ったら大人はなんと思うのだろう。きっとどこかに売られる。なにをもって売られると確信しているのか自分でもわからないが、ミルは飼い殺しのような目にあわせられると思っている。ラノベの影響かもしれない。
『でも……じゃあまた殴られたどうするの?』
癒の精霊がミルに治癒をかけながら聞いてくる。大きく腫れた顔がきれいに治っていく。
「白ちゃん、ありがとう」
癒の精霊は白ちゃんだ。
「それなんだけど、どうにか精霊付ってバレないように回避できないかな?」
ミルは前世のこともあり、一回でも殴られたら誰であろうと縁を切ると決めている。しかしまだミルは七歳だ。この歳ではひとり立ちは難しいだろう。ミルは心配してくれる精霊たちにある提案をする。
風の精霊たちは集まって会議中だ。そして、指揮をとるのは、一番光の強い精霊だ。顔係・胴体係・下半身右係・下半身左係・飛んだ先係の第五部隊で形成され、一部隊に大中小の三体の精霊が付く。
ジョセフの姿が見えた瞬間に風部隊がミルの周りを囲みに入る。風の精鋭たちはどこから調達したのか知らないが、いつのまにか武装している。
ミルはその姿を見るたびに、吹き出しそうになるのを堪える。その姿がまたジョセフの癇に障るようで、なにかにつけて殴ってきた。風たちはジョセフの手や足が当たる瞬間に前に入り込み、ミルに当たらないようにする。そして、身体を浮かせ吹っ飛んだように見せかけた。これは何度も練習した。あまり、派手に吹っ飛ぶとあやしまれる。
吹っ飛ばされた先にも風たちが待機しているため、よいクッションになってくれて痛くないし、なんなら飛んでいるみたいで楽しかったりする。
もちろん、しばらく動けないフリをして痛がることも忘れない。そこは必須である。しかし、痛くないから平気というわけでもない。殴られる瞬間はやはり恐ろしい。殴られないように一応発言は気をつけているし、あまりジョセフの手の届く範囲内には近づかないようにしているが、またそれがジョセフの癇に障るらしい。
殴られたあとは、いつも以上に大人しくしている。そうでないと痛くないのがバレてしまう。
風たちに防御をお願いしてから、ミルは精霊の特性を生かして、なんとか家事を楽にできないかと考えた。
一番辛いのは洗濯だ。二人分しかないが、寒い冬のときなんて冷たい水で手があかぎれになるし、時間もかかる。水の精霊と契約している主婦などは近くにあるドラム缶に水を張って水を左右に回転させ汚れを落としている。まさに、洗濯機だろう。
それを小遣い稼ぎにしている主婦もいる。やりすぎると魔力切れを起こし倒れてしまうので、あくまで自分のところのついでだ。そのドラム缶は洗濯場に常備されている。そのために置かれているのだろう。ミルもそのドラム缶を使えばいいのだが、主婦たちに見つかりジョセフに精霊のことがバレると困る。主婦たちのネットワークを甘く見てはいけない。では、どこで洗濯をしようか。
「時ちゃんは私を運んで瞬間移動とかできる?」
『もちろんできるよ。普通の人だと魔力が少ないからムリだけどミルは関係ないから』
――ん? 関係ないってなに? ……ちょっと色々確認したいことがあるけど、まずは洗濯のことを考えよう。
「そ、そうなんだ。じゃあ森の奥とか人が来ないようなところに連れていってくれない?」
『もちろんいいよ』
「ほんと? ありがとう。あっ、その前に黒ちゃんにお願い。私を他の人に認識できないように隠ぺいとか使える?」
ウロウロしているのを誰かに見つかったらやっかいだ。闇の精霊は黒ちゃんだ。
ちょっとして、黒の光が前に傾いた。たぶんできる、という意味だろう。人型ではないが言葉は理解できているようだ。ミルは黒ちゃんに隠ぺいをかけてもらう。
周りが少し黒くなるだけで自分ではわからない。試しに、とジョセフがいる部屋まで行ってみる。見つかればトイレだと言えばいいのだ。
ジョセフはちょうど店から住居に移動しているところだった。目の前にいたが、認識されないまま通り過ぎた。どうやら成功のようだ。ミルは静かに部屋に戻った。
その足で、川が近くにある森の中に転移してもらった。転移したのは夜の森、真っ暗で静かだ。川のせせらぎだけが聞こえる。今いる森はミルが住む街の西門からそう遠くない。
西門はユロランに入るための門だ。反対側には東門もある。門の外には森がある。その森には獣の他に魔獣と呼ばれる危険生物が生息している。門から出て、馬車や人が通る道には魔獣避けのための結界が張ってあるが、少しでも外れると結界が効かなくなるため、とても危険だ。
ミルは結界魔法がなんの属性なのかわからなかったため、精霊たちに聞いてみた。
『知らない』
精霊たちの小さな光が同時に傾く。可愛いが、精霊もすべてを知っているわけではないようだ。
「知らないか……。じゃあ魔獣が出たら、ひのちゃんが追い払ってくれる?」
火の精霊はひのちゃんだ。
『私の出番ね! わかったわ! まかせて!』
やっとね! とばかりに、火の玉のように真っ赤に燃え上がる。
「あっ、その火の玉素敵! そのまま、そのまま。そのままでいられる?」
ロウソク代わりにと火の玉の姿で固定してもらった。他の数体のひのちゃんも同じように小さな火の玉になっていく。
「ありがとう、みんな」
電気などないこの世界は、夜になるとロウソクに火を灯す。しかし、ロウソク代もかかるのでミルには渡されない。火の精霊もロウソクは出せないが、火の玉になってくれたら夜の闇も暗くない。
ミルが笑顔でお礼を言うと、火の精霊は火の玉のままうれしそうに飛び回った。ちょっとシュールだ。
翌日、市場から戻ったミルは、店をジョセフに任せ、洗濯に向かう。途中で死角になっている場所に移動して黒ちゃんに隠ぺいをしてもらい森に転移する。森に人影はない。昨日準備した、土でできた弥生式土器のような大きな器が三つある。
その三つの器は昨日の夜、ドラム缶がないなら作ってしまえと土の精霊に頼み、作ってもらったものだ。
「土ちゃん、ドラム缶のような入れ物って作れる?」
土の精霊は土ちゃんだ。
『やっと、おいらの出番だね! 任せて』
土ちゃんは張り切って三つも作った。
――そんなにいらないけど、まっいいか。私とおやじの分を分けよう。
その器は固く水で激しく回しても壊れないようにしてもらった。
その後水ちゃんに土から水分を抜いてもらい、さらに強固にしてもらったうえで乾かした。
初仕事に土ちゃんは満足そうだった。
その器に洗濯物を入れて、水ちゃんにグルグル回してもらう。
洗濯の間、ミルは休憩を取ることにした。いつも朝から晩まで小さい身体で働きまくっているのだ。どこかで休息を取らないと死んでしまう。緑の精霊――緑子ちゃんたちに葉っぱでハンモックのような物を作ってもらい、横になる。
――最高、ちょっと昼寝。いつも朝が早いので助かる。
ミルはキラキラと飛び交う精霊たちを見ながら眠りに落ちた。目が覚めると青い空が見えた。眠っていた時間はそんなに長くないようだ。
『ちょっと時間を止めといた』
時ちゃんがすごいことをサラッと言う。
洗濯を終え、街に戻った。洗濯物は、水ちゃんに少し湿った状態になるまで水を抜いてもらった。それを干したら次は掃除だ。風たちに埃を飛ばしてもらい掃除は終了した。ジョセフは店のレジ前で居眠りをしている。いつものことだ。
家事はこれで楽になった。夕食を作るまでに少し時間ができた。あとはお金だ。独立するにあたっての資金を今から考えなくてはならない。せっかく精霊たちがいるのだ。うまく活用すればお金を稼ぐことができるだろう。
そう考えていたミルだったが、すぐに行き詰まった。お金はすべてジョセフが握っている。花を仕入れに行っても、その場で現金取引なんてしない。後日まとめてジョセフに請求が行くのだ。そのうえ、商売をするなら商人ギルドに登録しなければならない。登録には身分証明がいる。それがないと外から来た者と判断され、多くの書類が必要になる。緑子ちゃんに人気の花を作ってもらって道端で売ろうかと考えていたが頓挫する。
この国で生まれて育った者ならみんな必ず持っている身分証明がある。年に一度、夏になると満五歳になった子供たちを教会に集めて儀式がおこなわれる。そこで子供たち一人一人に、名刺くらいの長方形の薄い銀色をしたプレートのようなものが手渡される。それと同時に教会に街の一員になったことを認めてもらう。いうなれば戸籍のようなものだ。それがないと就職先にも結婚にも苦労するらしい。
ある魔術具によって、そのプレートに名前と出身地が登録できる。登録すると一センチ×三センチくらいのプレートになる。普段は銀色のただのプレートだが、専用の魔術具に通すと内容が確認できるそうだ。住民はなくさないように常に首から下げていた。プレートには親切にも丸い穴があいていて紐が通せるようになっているのだ。しかし、ミルは持っていなかった。
以前、ルーイからどうして首にかけないのかと、聞かれたことがある。なんのことかわからず、ルーイにそのプレートを見せてもらった。見たことがなかった。そのときは、「お父さんが持っている。私だとすぐなくすから」と慌てて言い訳をしたのだ。なんとなく知らないことを知られるのが怖かった。
「この首にかかっているチェーンは六歳の誕生日に父さんにもらったんだ。なくさないようにって。普通はそのことを説明して首にかけてもらうんだよ。それが習わしだって。母さんも父さんも言ってた。おまえも自分の子供ができたらそうするんだぞって」
眩暈がしそうだった。そんなこと、してもらったことなんてない。ミルは自分の誕生日も知らないことにそのときに初めて気がついた。
――なんでみんな知っているの? 私はこの国で自分がいつ生まれたのかなんて知らない。秋頃だとかしか知らない。異世界でも誕生日のお祝いとかするなんて初めて知った。
ミルのプレートはたぶんないだろう。聞いても殴られるだけだ。身分証明がなければ他の街や他の国に行けない。ジョセフはミルを一生この街に縛るつもりかもしれない。戸籍がない怖さは前世でもよく知っている。パスポートも作れないし、結婚もできない。
――ジョセフが恐ろしい。これは成人になるまでとか言っていられない。早急に動かないと。でも情報もお金も足りない。
ミルは、情報を集めようと、まず精霊たちにこの国のことを聞いた。時ちゃんは時の精霊だ。昔のことから今の情勢まで詳しいはずだ。
『いいよ。じゃあ目を閉じて』
言われたとおりに目を閉じた。おでこがほのかに温かくなり、色々な映像が頭の中に現れた。最近のことから徐々に古いものになっていく。
不思議なことに、数分でこの国の内情や風習などを知ることができた。ミルが直近で必要そうな情報としては、この国には八歳から十歳まで午前のみ通える学校のような施設があり、二年間通うとその証としてプレートに記される。それを学卒という。
この施設は、国が設立したもので、無料で文字や簡単な計算を教えてくれる。しかも昼ご飯付だ。そのことはミルも知っていた。しかし、プレートに学卒として記されることは知らなかった。ジョセフはミルを学校に通わせていなかった。
――それってまずくない?
この学校を出ない子は、ほぼいないらしい。それはそうだろう。勉強も教えてくれてご飯が付いているのだ。貧しい家庭なら進んで子供を行かせるだろう。本当ならルーイと一緒に学校に行くはずだったのだ。ルーイに学校に行かないのかと尋ねられたこともあった。ジョセフは近所の人たちに、「行きたくない。お店を継ぐから学校なんて行かなくていい」と、ミルが言っていると言いふらしていた。もちろん学校に入るのも、その戸籍プレートが必須なのだ。どうやったのか、ジョセフがミルのプレートを取得していないことは近所の人たちにバレていないようだった。
ミルは元々自分で勉強はしていた。文字がわからないと仕入れなんてできない。市場にいた人と仲良くなり、文字と数字はすでに習得していた。簡単な計算は習わなくてももちろんできた。できはしたが、学校を出ていないという現実は消えない。
――どうしたものか……
ミルは精霊に頼めばどこにでも行ける。しかし真っ当な生活をしたいミルは、プレートがほしい。
――さすがに日陰の人生なんていやだ。しかも親のせいで。どうしたものか。
とりあえず、市場や買い物で知り合った大人たちに愛想よくした。情報を得るためだ。元々愛想よくはしていた。それが仕事をするということだ。
前世から女性の仕事は、ほぼ愛嬌を振りまくことだと思っている。前世では十八歳から働いていたが、真顔で働いていたら無愛想だの、あの人は冷たいだの散々に言われた。仕事をしているときに笑えるか! とも思っていたが、やはり女性は笑顔なのだ。この世界でもやはり笑顔は効く。行き交う人に笑顔で挨拶、声かけ、愛想笑い、なんでもした。
笑顔って大事。
情報を得るための行動だったが、おかげで仕入れもうまくいくようになった。半年もすると、ジョセフが仕入れをしているときと同じくらい、いや、それ以上に売れ筋を売ってもらえた。しかも相場より少し安く。みんなが同情して、優先して仕入れさせてくれたのだ。
あざといって万国共通。
こんないい人たちを騙しているようで申し訳なく思うが、ミルも生きていかねばならないので、そこは許してほしい。安く仕入れて高く売る。これは商人の鉄則だ。なんちゃって。
しかし花屋が儲かっても、ミルには入ってこない。ジョセフが喜ぶだけだ。まあそれが狙いでもある。店に余裕が出てくれば、ジョセフの財布の紐にも緩みが出るだろう。
そこでまた、おばさんスキルの発動だ。大人たちにまざって、あざとさ大爆発の交渉をする。それができたのも前世の記憶に他ならない。恥も外聞もムシ、ムシ、ムーシである。もちろん、ミルの可愛い顔もプラスに働く。幼く可愛い、今だけの特権だ。そして花の仕入れに成功したら、近所での食材の買い物にも発動させるだろう。ジョセフの財布の紐も緩み、予算が増えた。お肉や野菜の値段も負けてもらう。さらに色々とまた精霊たちにお願いをした。
――ふふふっ。
洗濯をしている場所の近くに小さな菜園を作り、緑子ちゃんと土ちゃんにお願いして野菜を育ててもらっている。種をもらって植えたところ、みるみる育った。種はもちろん街の人にあざと可愛く、ねだった。そして育った野菜たちは時ちゃんに預けている。時ちゃんは時空の空間に倉庫があると言っていた。そこに入れたものは傷まない。
肉は洗濯している間に小さな小動物を狩って手に入れた。水ちゃんに協力してもらい、水でスパンと一振りだ。可愛い野ウサギだったりすると最初は仕留めるのに躊躇したが、しかしそこは前世はおばさん、すぐ慣れた。顔と内臓以外は全部食べる。顔部分はちゃんと埋葬して、合掌する。
ミルはまったく動物を捌けなかったが、家から遠く離れた街の肉屋まで行き、値段の相場や捌き方を教わっていた。この半年で少々大きな獣でも捌けるようになっていた。
しかし、まったく食材を買わないわけにはいかない。ジョセフに買っていないことがバレるかもしれないからだ。いつもの量を安く買い、時ちゃんから野菜や肉を取り出してもらい、調理して食卓に並べる。少し豪華になった食卓を見て、ジョセフは上機嫌だ。
しかし、おつりは毎回その日に、きっちりジョセフに返すことになっている。もちろん、安くしてもらった金額と時ちゃんから取り出した食材の金額を引いてだ。
市場や近所の大人たちから得た情報により、自分の置かれている状況も見えてきた。お金も少しずつ貯まっている。家事を任されるようになった七歳ぐらいのときから、毎日食材を買うために五ベニーをもらっていた。この国の通貨はベニーだ。パンひとつで一ベニーほど、円でいうと百円くらいだろうか。それが銅貨一枚になる。その他の硬貨として十ベニーで小銀貨、百ベニーで大銀貨になる。金貨は千ベニーで一番大きな硬貨だ。金貨ともなると、庶民はほとんど見ることもない。
昔はどんなに頑張っても一ベニーをくすねるのが精いっぱいだった、九歳頃になると畑が充実し出したので、ちょこちょことタンス預金が増えていった。三年でようやく五百ベニー、約五万円になった。
もうすぐ秋、ミルは十一歳になる。成人となる十五歳まで待たずに、家を出てもいいのではないかと思っていた。
厳しい冬が来る前にどこか落ち着ける場所を見つけたい。
しかし、問題があった。プレートだ。プレートがないと街から出られないし、入れない。家を出ても、この街・ユロランにいては、ジョセフに見つかり連れ戻されるだろう。とりあえず隣街に逃げたい。そしてプレート問題に行きつく。
プレートは再発行もできると聞いた。そのため、とりあえずの拠点にする隣街のイージュレンを視察することにする。うまくいけばそこでプレートを作れるかもしれない。もちろん移動は、時ちゃんにお願いをする。まだプレートがないので門を通らずに潜入だ。
潜入の前にミルは森の秘密基地で変装をした。今までのようなジョセフのお下がりを着ていては変に目立つだろう。ミルはモスグリーンのワンピースに身を包んだ。
ミルにとっては生まれて初めてのワンピースだ。このワンピースはミルが近所で情報収集をしているときに、パン屋のおばさんからもらったものだ。
その日、ミルはパン屋で買い物をして雑談を装い情報収集をしていた。
「これ、私が成人のお祝いのときに両親が作ってくれたワンピースなの。生地もまあまあのものよ。成人のお祝いと結婚のお祝いでしか着なかったのよね。本当は赤の布地がよかったんだけど赤は値が張るから、この色になったのだけど。娘に着てもらおうとずっと持っていたのよ。でも生まれたのは男ばかりで孫もまだだし。いい加減古くなっちゃうわ。もらってくれない?」
「えっ! こんな素敵なワンピースもらっていいの?」
「いいわよ。誰も着ないし、だからといって捨てられないしね。年頃のお嬢さんが着てくれた方がワンピースも喜ぶわ」
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