まほろ よろず祓い屋

春きゃべつ

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まほろ よろず祓い屋

呪いの花



蓮の花咲く水面みなもに、吹き放しの渡殿わたどのが這うように伸びている。
大きな池だ。
池の最中さなかでぷつりと途切れたその透渡殿すきわたどのは、端の部分が一段低くなりほんの少しだけ横幅が広くなっていた。
渡殿の果てには、うら若き女人と童が佇んでいる。
女人は春を思わせる愛らしさを、童は黎明の空のような静けさを身に纏っていた。
彼等の視線の先には、こんもりと盛り上がった中州が一つ。
見えない参道でもあるかのように、間に大きな鳥居が建っている。
どこか見覚えのある景色であるのに、まったく違うようにも思えた。
ふいに。
両の掌を天に差し向けて、女人が祈るように目を閉じた。
応えるように、水塊がひとつ池の中から飛び出す。
女人がそっと手を触れると、水塊は押し出されるように宙を進みはじめた。
後を追うように、童が一歩足を踏み出す。
彼の足元には、蓮の花咲く水面があるばかり。
だが、危惧した水音が辺りに響く事はなかった。
かわりに軽やかな羽ばたきが響く。
背に翼を生やした童が、音もなく水面を駆けて飛翔する。
鳥へ変じていく童の姿に気を取られているうちに、水塊が鳥居をくぐりふわりと霧散してしまった。
追いかける鳥の姿も、鳥居を境にふつりと消える。
これはどうした事かと、立ち上がった拍子に前のめりに身体が傾いだ。
薄桃色の花がくるくると回転しながら、今まさに落ちんとしている蓮の花の間に浮かぶ。
気づけば、ゆっくりと沈んでいた。
息苦しさは欠片もない。
ただただ、透明な世界がそこにはあった。
頭上を覆う葉の陰から、ゆらゆらと光が差し込む。
水泡や光とともに舞う薄桃色の花を、ぼんやりと仰ぎ見た。

〝極楽〟

そういうものがあるならば、あれがそうだったのではないだろうか。
この世のものとは思えぬ美しさ。
するとここは…何処であるのか。
ああ、そうか。
なんとも不思議な夢であるな…
そんな風に思いながら、名残惜しげに悠馬は目を開けた。
見慣れた天井が、視界に飛び込む。
やはり夢か。

「…なんと、美しい夢か」

余韻に浸るように呟く。
額に当てかけた手を止め、己の手の甲に淡い薄桃色の花が咲いているのを見た。
それはまるで、水と戯れ舞う花のよう…

ー のろいの花 ー

思いがけず、そんな言葉が思い起こされた。

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