姉の変な薬のせいで女になった親友はかわいい

皐月 ゆり

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第1話

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 自分はノーマルな人間だと思っていた。
 適当に恋をして、他人と大差のない初体験をして、大人になっていく。
 そう思っていた俺が変わった初体験をした時の話。

 大学の授業を休んだ友人である真琴の調子を聞きに行くついでに、ノートでも見せてやろうと帰りに家に寄った。
 小学校時代から親同士の中がよくてつるんでいて、喧嘩もよくしたが色んな楽しいこともともにしてきて、一緒に過ごした時間は誰よりも長い。
 こういうのを親友っていうんだろうな。
 玄関チャイムを押して出てきたのは、かわいらしい女の子だった。
 真琴に妹なんかいたっけ。そう思っていると「どうぞ」といって、道を開けられたのでとりあえず中に入る。
 リビングテーブルの前に座り、今キッチンでお茶をいれている人は誰なんだと記憶の糸をたどる。
 さっきはとっさのことに妹が浮かんだが、そんなことを聞いた覚えはない。第一会ったことがないなんておかしい。
 真琴の兄弟はお姉さんだけ。両親は仕事柄出張が多くほとんど家に帰ってはこない。だから、昔から真琴とお姉さんは俺の家によく預けられていた。
「コーラ、どうぞ」
 素っ気ない声で置かれたグラスの中には、泡立つ液体に氷が浮かんでいる。
 向かいの席に座ったまま、何もいわないこの女は誰なんだろうか? お姉さんに似ているし、従妹か何かだろうか。
「えっと、真琴の調子はどうかな? 元気になった?」
 沈黙に耐えきれず真琴の調子を聞いたが、見知らぬ女は長いため息を吐く。
「やっぱわかんねぇよな。俺が真琴なんだけど」
 かわいい声に似合わない荒い言葉遣いとその内容に、俺はただ驚くことしかできなかった。
「えっ? 真琴の従妹か何かだよね? そんな言葉遣いはどうかと思うけど」
 意味がわからな過ぎて、そんなつまらないことをいってしまう。
「だーかーら、従妹とかじゃなくて真琴本人。あのクソ姉貴に変な薬飲まされて女になった」
 女になった? すでにクエスチョンマークで埋め尽くされた頭をさらに攻撃され、もはやなんといったらいいのかわからない。
「えっ、何? これドッキリか何か?」
 部屋を見渡すが、ドッキリ大成功の看板は見当たらない。
「いいか竜樹、よく聞け? 俺にどんなことがあったか教えてやるから」
 真琴を名乗る女は、昨夜の出来事を話しだした。

「真琴ちゃーん! お願いがあるんだけどー」
 ノックもせずにいきなり扉を開けた姉。
 慌てて呼んでいた漫画を他の本の下に隠し、椅子を引いて前かがみになった。
「だから、いつもノックしろっていってんだろ!」
 そう怒るも姉はにやにやとして、聞く耳なんか持っちゃいない。
「あっ、もしかして、机の下でお取込み中だったかな? それならグッドタイミング! さぁ、これを飲むのです」
 目の前に差し出されたのは、栄養ドリンクなんかが入ってそうな茶色い瓶。
「何これ?」
 とりあえずは受け取ったものの、この姉が差し出して飲めというのだから、絶対にろくなものではないはず。
「お姉ちゃんが絶賛開発中の治療薬『あなたが望む生を』の試験薬! 大丈夫! 体に変化が起きても、死にやしないし、治療するかそのうち元に戻るから!」
 そういって胸を張る姉。
「治療薬飲んで治療って……」
 変なところに心の中で突っ込みを入れながら、瓶の中の液体の匂いを嗅いでみる。
 姉がこういうのだから、長期的に何か問題が起こるということはないのだろう。
 正直、実の姉であるということを差し引いたとしても、こいつはかなりの変人である。
 色んな薬品を開発し、その道では天才と呼ばれているらしいが、どのようにすごいのか俺は知らないし、社会に貢献しているといわれても信じられない。
 俺の前に並ぶ薬はいつも変なものだし、この前なんか飲んだらしばらく声が女みたいになって、大学でしゃべらずに過ごさなければならなかった。竜樹がフォローしてくれたからなんとかなったものの、そう何度も竜樹に迷惑はかけられない。
「これ飲んでくれて、協力してくれたらさ、次は惚れ薬を作るよ」
 耳元で囁かれたその言葉に心が揺らぐ。
「どうしても、その子に意識して欲しいのでしょ?」
 にやにや笑う姉の顔を見て、揺らぐ心を抑えようとするが、想い人の顔がちらついてどうしようもない。
 惚れ薬をだしに使うなんて卑怯だと思う。
 そもそもそんなもの作れるはずがない。しかし、この姉ならばそれに近しいものくらい作れるのではないのだろうかとも思ってしまうのだ。
 例えひと時でも気持ちが通じ合うのなら、そう思うとこの怪しげな薬を口にしてもいいと思えた。
「わかった、飲めばいいんだろう?」
 姉は満面の笑顔で頷き、部屋から出ていこうと扉に向かった。
「あっ、そうだ。飲んだら今夜必ずオナニーしてね」
 そういい残すと部屋から出ていった。
 飲むと決めた心が揺らがないうちに俺はそれを一気に飲み干した。味はなんともいえなかった。
 薄く甘いような、苦いような変な味だった。
 すぐに何かあるかと思ったが、特に何もなく夜までいつものように過ごせた。
 姉にいわれたからというわけではないが、眠る前に先程の続きと肉棒をしごき、想い人を浮かべながら白濁した汁を発射し、満足して眠りについた。
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