それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和

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 古本屋を閉めると自分が住むアパートへと向かった。
 細い路地を歩いて三分ほど経つと昭和初期に建てられた古い木造建築がお目見えする。
 二階建てで部屋は四つ。壁を構成する木材は真っ黒になり、瓦には苔が生えている。築七十年を越え、震度三でも倒壊しそうな古さだが、中は意外と新しい。
 と言うのもここを買ったルドリックさんがリフォームしたからだ。新しいと言ってもキッチンやトイレ、風呂なんかだけで、床は畳だし、扉は襖で窓は障子だ。
 俺はここの二階に住んでおり、ルドリックさんは一階に、あとはルドリックさんの生徒さんが二人借りていた。
 アパートに近づくとぱちぱちと小気味いい音が聞こえてくる。庭を覗くとルドリックさんが七輪に入った炭をうちわで扇いでいた。
「おー。シメーさん。おかえりなさい。今から焼こうと思っていたところです」
「えらく本格的ですね」
「いえいえ。これが普通なんです。最近の日本人は手を抜きすぎなんですよ。まあみんな忙しいので無理もありませんが」
 なるほど。そうかもしれない。きっと昔はみんなこうしていたんだろう。
 俺は自分の部屋にリュックを置くとすぐ下におりた。
「代わりましょうか?」
「ありがとうございます。でもその前にパパを探してきてくれますか? さっきまで近くにいたんですが」
「分かりました。パパー」
 名前を呼びながら周囲を探す。庭にはいない。近くの道路にもだ。よく昼寝しているアパートの廊下にもいなかった。いつもならこの時間になると帰っているのに。
「いないですね」
 そう報告するがルドリックさんは心配してないようだ。
「ならあそこですね」
 ルドリックさんは笑顔で立ちあがり、庭をぐるりと回った。ついて行くとルドリックさんは一階の部屋と部屋の間にあるドアを指差した。
「ドアの下に穴があるでしょう? パパはここから中に入るんです」
「そう言えばここってなんなんですか? 物置とか?」
「みたいなものです」
 ルドリックさんが鍵を取りだしてドアを開けると下へと続く階段が現れた。
「ここは地下室です。前のオーナーが倉庫代わりに作ったそうです。同時にここは彼のお気に入りの場所でもあります」
 へえ。結構長く住んでたけど知らなかった。
 階段を降りていくと部屋が現れた。明かりを付けると中は案外綺麗で埃臭さもない。おそらくルドリックさんが集めたであろう物がいくつか見えた。
「パパ。いますか?」
 ルドリックさんが名前を呼ぶと部屋のどこからか返事がして、パパが出てくる。
 ルドリックさんはパパを抱きかかえて振り返り、俺に笑いかけた。
「ね。いたでしょう」
「本当だ。ねずみ取りでもしてたのか?」
 さすが飼い主だと思いながら俺はパパの頭を撫でた。パパは気持ちよさそうに目を瞑った。
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